« August 2004 | Main | October 2004 »

DVD評『コールドマウンテン』

『コールドマウンテン』(DVD 04年9月26日鑑賞)
 アメリカ南北戦争の直前、数分会って、それでビビッと来た男女が戦争で離ればなれになってしまい、でも、双方とも戦場での苦労、銃後の苦労を重ねた末に再会する。という、かなり安っぽい筋。おまけに『風と共に去りぬ』と違って類型的な悪役(脱走兵狩り)もいて、これが人間認識を薄っぺらにしてしまってる。しかも主演がニコール・キッドマン。どう見ても一瞬の恋に人生を捧げるタイプじゃないし、食べ物がないにしては豊満すぎる。それに長い。冒頭の戦闘シーンは迫力があっただけに、後半の人間ドラマがどうしてもちぐはぐな印象を与えてしまう、出来損ないの歴史超大作。面白くないことはないだけに困る。
(アンソニー・ミンゲラ監督 2003年 アメリカ Cold Mountain)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

DVD評『アドルフの画集』

『アドルフの画集』(DVD 04年9月25日鑑賞)
 ユダヤ人画商マックス(原題は『MAX』)とヒットラー伍長の芸術と商売を巡るドラマ。
 もし、ヒットラーの画業が世間的にも認められて画家アドルフ・ヒットラーが誕生していたら? こういう「もし」は誰もが考えることで、着想としては面白くもなんともないんだけど、ただ、この映画の場合、どこでアドルフの挫折が決定的になるのかが巧妙に隠されていて、つまり逆に言えば、芸術家としての挫折が徐々に政治家としての覚醒に繋がっていくところが実によく(俳優の問題はあるにしても)描かれていて、(人物造形の平板さはあるにしても)一気にラストまで観せてしまう。
 本当に、芸術家崩れに政治をやらせてはいけない、と思う。西洋ではヒットラー、東洋では毛沢東で実証済み。こいつらは消しゴムで消すように虐殺する。
(メノ・メイエス監督 2002年 ハンガリー・カナダ・イギリス)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

DVD評『座頭市 REMASTER』

『座頭市 REMASTER』(DVD 04年9月25日鑑賞)
 宿場町のヤクザ組織と腐敗した役人、虐げられる民衆。悪に立ち向かう座頭市。
 勝新のシリーズ最終作のリマスター版。映像といい、音楽といい、そして斬新なキャスト(樋口可南子の女侠客、いいです。極悪の役人の陣内孝則、滑舌が少し気になります。片岡鶴太郎、もっと出て欲しい。内田祐也のトチ狂ったヤクザ、いいです)といい、大がかりな殺陣といい、ちょっとこれを越える『座頭市』はありえない。なんでたけしごときがリメイクに挑むのか、理解不能。
(勝新太郎監督 1989年 日本)

| | Comments (989) | TrackBack (0)

DVD評『シモーヌ』

『シモーヌ』(DVD 04年9月24日鑑賞)
 女優のワガママに振り回されていいかげんキレかけた監督が、CGというか、俳優イメージを作ってしまえるお手軽ソフトを死にかけのエンジニアから託される。このソフト、膨大な俳優のデータを持ってきて組み合わせてイメージ通りに演技させてフィルムの中に組み込んで一丁上がりというスグレもの(この言い回し、古い?)。ソフトを作ったエンジニアはもう死んでるし、黙ってれば誰にもわからない、と、監督、これを使ってワガママ主演女優が降りてゴミ箱寸前の映画をどうにかこうにか仕上げてしまう。
 ところが、この映画がCG女優「シモーヌ」の魅力で大当たりしてしまうから問題はややこしくなる。監督だって、最初はこの一本で終わるつもりだったのに悪乗り、自分が以前から作りたかった難解な「芸術的映画」までシモーヌ主演で撮ってしまう。これもまたシモーヌのおかげで大ヒット。「シモーヌ」ブームはもう誰にも止められなくて、監督自身にも止められなくて、旋風は世界中を席巻してしまう。
 こうなると監督は面白くない。シモーヌを作ったのは自分、演じてるのも実際には自分、なのに、誰も自分に注目してくれない。おまけにアカデミー賞の授賞式ではプログラミングとは違う文句を喋ったりして、シモーヌ自身もなんかヘンだし。それに元妻は監督がシモーヌに操られてると勘違いして奇妙な嫉妬を感じたりして人間関係は次第に複雑になっていくし。
 ハリウッドという虚飾の世界を皮肉たっぷりに描きながら、タッチは明るく、軽く、後味も悪くない。大作疲れした脳にはちょうどいい痛快作。
(アンドリュー・ニコル監督 2002年 アメリカ SIMONE)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

DVD評『シービスケット』

『シービスケット』(DVD 04年9月23日鑑賞)
 大恐慌下のアメリカ西部。子供を亡くし妻にも去られたにわか成金とはぐれカウボーイと一家離散のトラウマを引きずる騎手と、それぞれの理由で傷つきうらぶれた3人の男が一頭の見捨てられたサラブレッドに引き寄せられ、それこそ馬が合ったのか、トントン拍子に成功を収めていく。もちろん嫌みなライバルもいて、勝利があって、挫折があって、ラストのカタルシスももちろんね。これがもし実話でなかったらあまりに出来すぎと評さねばならないところ。いや、実話にしても構成は出来すぎの面がやはりある。
 前半の睡魔を誘うトロさは後半の爽快な疾走で帳消しにしよう。
(ゲイリー・ロス監督 2003年 アメリカSEABISCUIT)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

DVD評『オーシャン・オブ・ファイヤー』

『オーシャン・オブ・ファイヤー』(DVD 04年9月22日鑑賞)
 西部劇の時代。ネイティブ・アメリカン虐殺の現場に居合わせた男はそのトラウマからアル中になってドサ回りの芸人に落ちぶれている。そこに異国から使者が来て……。
 と、設定はまるで『ラスト・サムライ』(実際、こんなわけのわからないタイトルにするくらいなら邦題は『ラスト・カウボーイ』にしてもよかったんじゃないか)。で、話はというと、1000年の歴史を持つとかいうアラビア砂漠のサバイバルレースにスペインムスタングに乗るカウボーイが出場して広大な砂漠の空のもとアラブの素晴らしい血筋の馬と追いかけっこしてお姫様と淡いロマンスがあって卑怯な敵がいて撃ち合いがあって死にかけて友情があって馬との心の触れ合いがあって云々、まさに娯楽の要素てんこ盛り。前半ややもたつくし、辻褄の合わないところ、おかしな所は満載なんだけど、主人公の出自が明らかになってからグッと広がる人間的な奥行きと爽やかなラストで帳消しにしよう。
(ジョー・ジョンストン監督 2004年 アメリカ HIDALGO)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

DVD評『ペイチェック 消された記憶』

『ペイチェック 消された記憶』(DVD 04年9月21日鑑賞)
 なんかパクリを専門にしてる凄腕の技術者がいて、でもその仕事は違法スレスレ(というか、モロ違法?)だから、内容については一切口外出来ない。というか口外出来ないように仕事の記憶そのものを消してしまわなきゃなんない。でもその記憶を消す作業って脳細胞をレーザーか超音波で潰すみたいで体に悪そう。こんなこと、そう長くは続けられねーよな。
 と、そこに、もうこれ一回で一生アブナイことしなくていいような実入りのいい仕事が舞い込んでくる。
 で、仕事して、記憶を無くして、その前に預けていた私物を受け取るんだけど、これが、自分の物じゃない。なんかおかしい。FBIだって追ってくるし、得体の知れない連中もいきなり襲いかかってくるし。一体自分は何を作ってたんだ?
 ネタバレすれば、タイムマシンじゃなく、未来を予言する機械を作ってた。だからヤバイし、ヤバイ場面も、未来を知った自分が自分宛に送った細かなアイテムで乗り切ることが出来たってわけ。
 少々辻褄の合わないところもあって気になるけど、設定もシナリオも楽しめる程度には仕上がっている。ただ、音楽が下品。
(ジョン・ウー監督 2003年 アメリカ PAYCHECK)

| | Comments (1) | TrackBack (0)

DVD評『LOVELY RITA』

『LOVELY RITA』(DVD 04年04年9月20日鑑賞)
 不機嫌な少女。なぜ不機嫌なのか。不機嫌だから不機嫌。だって父親はトイレの蓋を閉めろとうるさいし、学校の英語劇はバカげてるし、近所の男の子とはちょっとセックスのまねごとをしただけで引き離されるし、バスの運転手とのアバンチュールは思ったほどよくなかったし。
 少女の目で見たこの世界。なにしろリタを演じるバーバラ・オシカが作り出す「死」と「性」の緊張感がものすごく、ラストの衝撃はしばらく胸を去らない。さすがマーラーやクリムトやフロイトを育てたオーストリア。
(ジェシカ・ハウスナー監督 2001年 ドイツ・オーストリア LOVELY RITA)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

DVD評『真実のマレーネ・ディートリッヒ』

『真実のマレーネ・ディートリッヒ』(DVD 04年9月19日鑑賞)
 マレーネ・ディートリッヒ。この名前は知らなくとも『リリ・マルレーン』のメロディは耳にしたことがあるだろう。プロイセン(今のドイツ)に生まれ、早くに父を亡くし、舞台で身を立て、ついにはハリウッドで成功を収めた女優であり歌手。
 と、それだけなら、こんな映画は出来やしない。マレーネがアメリカで活躍している間、ドイツはナチスの台頭を許し、こうして大女優マレーネを巡るアメリカとドイツの綱引きが始まってしまう。マレーネのもとにはナチス宣伝省ゲッペルスからの、帰国を要請する慇懃な手紙まで届く。
 ところがマレーネはアメリカの市民権を取得する。母親をベルリンに残したまま祖国を裏切り、連合国と共にナチスと闘う決心を固めたのだった。以後、ヨーロッパ戦線では常に最前線で連合国の兵士を慰問し続け、そこで歌われたのが『リリ・マルレーン』、英語版はアメリカ兵を鼓舞し、ドイツ語版はドイツ兵の意気を削いだという。
 マレーネの実孫の監督による淡々とした伝記映画。戦中の栄光から戦後の孤独までを、残されたフィルムと関係者へのインタビューで繋いでいく。実によくできたドキュメンタリー。
(ジョン・デイヴィッド・ライヴァ監督 2001年 フランス・ドイツ・アメリカ MARLENE DIETRICH HER OWN SONG)

| | Comments (4) | TrackBack (0)

DVD評『きょうのできごと』

『きょうのできごと』(DVD 04年9月15日鑑賞)
 打ち上げられたクジラを囲む人々、ビルの間に挟まれて動けなくなった男、そして引越祝いに集まってきた学生達。三つの「きょうのできごと」が淡々と描かれ、結末ともなんともよく解らない海辺へと繋がっていく。
 全編関西弁。妻夫木聡と田中麗奈のはちょっと耳に触るがそれはまあいいとして、全体的に漂うダレた雰囲気が映画の生命力を奪ってる。基本的にみんな物わかりのよすぎるよゐこたちすぎるんじゃないのかな。中年趣味の青春映画という感じ。もう10年若ければ絶賛したかも知れないけど。
(行定勲監督 2003年 日本)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

DVD評『イン・ディス・ワールド』

『イン・ディス・ワールド』(DVD 04年9月11日鑑賞)
 パキスタンの難民キャンプに住むアフガン難民二人が仕事を求めて陸路(!)イギリスを目指す。いくつもの国境を違法すれすれ(というか違法そのものだったりもする)の手段で越え、あるときは見つかって国外退去、あるときは雪山を越えていったり、とにかく人間を駒にした双六みたい。あがりはロンドンなんだけど、話はそううまくはいくはずもなく、とにかく、ズシッとした感慨が胸に残る。
 役者は全て現地調達の、行き当たりばったりのセミ・ドキュメンタリーみたいな怪作。なので特典映像の監督インタビューは必見です。もちろん本編だけでも感動は変わらない。平和で豊かな国に生まれたことに感謝。教材にも最適。
(マイケル・ウィンターボトム監督 2002年 イギリス IN THIS WORLD)

| | Comments (7) | TrackBack (0)

DVD評『すべては愛のために』

『すべては愛のために』(DVD 04年9月10日鑑賞)
 慈善パーティに難民の少年と共に乱入してきてこれを「偽善パーティ」だとこき下ろした医師の言葉に感銘を受け、感銘を受けすぎて(というか、この男への一目惚れでしかないと思う)、私財をなげうって難民支援に乗り出した人妻の、エチオピア、カンボジア、チェチェンへの自分探し、というか、不倫の男探し。こんな女と結婚した男は一生不幸だとしか思えないハチャメチャなストーリー。邦題がまた、ストーリー以上に狂ってる。
 でも駄作だとは言えない。どこも変わらぬゲリラ「政治」の愚かさを、おバカな「愛」の背景としてではあるけど、コレデモカ、と描いてみせる誠実さは感じるから。
 それにしてもなんで主演がアンジェリーナ・ジョリーなんですか。だったら、ゲリラなんざ15秒くらいで蹴散らして愛する男を救って下さいよ、『トゥームレイダー』みたいに、と思ってしまったのは私だけでしょうか。
(マーティン・キャンベル監督 2003年 アメリカ BEYOND BORDERS)

| | Comments (0) | TrackBack (2)

DVD評『ロスト・メモリーズ』

『ロスト・メモリーズ』(DVD 04年9月7日鑑賞)
 映画の時間機序を無視してネタバレで書きます。見ようと思ってる人は観てから読んでね。といっても、ネタは大したことないんで、べつにいいか、読んでから観ても。日韓の歴史認識について考える人には必見のSF大作。それなりに、というか、かなり面白い。
 2009年、統一を果たした韓国は(こんどは満州を領土とすべく)高句麗の遺跡を調査する。波風立たないように、日中韓で。ところがそこにあったのは古代のタイムマシン。これをみた日本は原爆や敗戦の屈辱を消し去るべく、刺客を過去に送りこんで安重根の伊藤博文暗殺を阻止してしまう。これで敗戦も植民地の放棄もなくなって2009年のソウルはまさにリトル東京、鍾路に秀吉像が立つわ総督府はあるわ、抗日のゲリラはいるわ公用語は日本語だわ、と、無茶苦茶な世界になっている。そこで抗日ゲリラ(不令鮮人とかいう得体の知れない名前で呼ばれてる)を追う日系日本人刑事と朝鮮系日本人刑事が登場、ゲリラ達はタイムマシンを使って歴史を元に戻そうとしてて、日本側はそれを必死に阻止しようとしてるってわけ。そんななか、朝鮮系刑事は次第にゲリラに感情移入してしまうし、歴史を戻すのを止める密命を帯びたのが他ならぬ友人の日系刑事。こうして奇妙な、けれども真面目な、「歴史」を巡る闘争が始まってしまう。
 ここでも仏教VS儒教の図式が見て取れて非常に興味深い。というのも、タイムマシンを使って歴史の因果から「解脱」しようとするのはやはり日本人であり、「解脱」なんかないんだと、現世主義の儒教の立場から「解脱」を否定するのが韓国人。日韓合作なので極端な反日ではないところがまた興味深く、むしろ日系刑事を台湾系にしていたらもっと面白かったのに、と思う。
 ちなみに安重根が伊藤博文暗殺に失敗していたら、その後の歴史はどうなっていたか。間違いなく言えるのは、韓国併合は10年以上遅れたしヘタすればなかったかもしれないということ(そうしたら韓国はロシアか中国の植民地になったわけで、むしろ日本にとってはその方がよかったかも知れない)。朝鮮の国情を知り抜いていた伊藤は、植民地化や合邦が日本に何の利益ももたらさないと常々主張しつつ、台頭しつつあった大陸進出論を抑えるために自ら韓国統監についたのだった。だからこそ単なる領土拡張バカの右翼からは目の敵にされ、軍部の跳ね上がり分子に暗殺されてしまったのである。それは銃弾の入射角や銃弾そのものの鑑定などから明らかで、つまり、すべては、当時から狂信的な儒教原理主義者として有名だった安重根を泳がせて利用したでっち上げだったということだ。かく、亡国への道もまた、愛国心で舗装されているのである。
(イ・シミョン監督 2001年 日本・韓国 2009 Lost Memories)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

DVD評『殺人の追憶』

『殺人の追憶』(DVD 04年9月5日鑑賞)
 80年代から90年代初頭にかけて、韓国の小さな村で現実に起こった連続強姦殺人事件。村の刑事は勘を頼りに容疑者を引っ張ってきて拷問してストーリーを作って一件落着にしたいのだけど、ソウルからやってきたちょっとニヒルな刑事はそんなやり方に疑問を持つ。
 だって、無理に自白させたって、本当の犯人は野放しになってるわけでしょう。容疑者を拷問してる間にも次の事件が起きてしまうし。もっと慎重に、論理的に、科学的に捜査を進めようよ、ってなわけで、犯人を追いつめてはいくのだけれど、その科学とやらも結局は当てにならなくて、犯人と共に、真相もまたトンネルの闇に消えていく。
 時代物のサイコ・スリラーとしては凝った作りでよくできている。気色の悪いエログロコリアに堕すのをソン・ガンホ演じる田舎の刑事が一人、支えているという感じ。
 ロッテや大塚製薬! コマーシャルに使うならヨン様よりガンさんだと思うぞ。
(ポン・ジュノ監督 2003年 韓国 memories of murder)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

DVD評『ペパーミント・キャンディ』

『ペパーミント・キャンディ』(DVD 04年9月2日鑑賞)
 純情(そう)な青年が軍隊、警察、社長を経て次第に世に染まり堕落していく様子が自殺しつつある今のこの瞬間から時間をさかのぼりつつ、容赦のない冷たい突き放したタッチで描かれる。死に臨んだ初恋の女性がカメラを渡すわけ、主人公が脚を引きずるわけ、等々の細かい謎も段階的に明らかになり、時代に翻弄されながら失っていく若さと、取り戻しようのない時間の流れに胸が痛くなる。
 ただし、時間の流れを操作してはいても、いや、操作している分だけ、単線的時間の中で展開する儒教的な物語であることは隠しきれない。ここでの過去は痛切な想いで思い出すものではあっても、現在を反省する材料ではない。つまり過去のどの段階にも選択肢というものがない。逆に言えば、ああしとけばよかった、という反省がない。そうするしかない状況の中でそうしてしまった主人公は当然なことに段階的に破綻して、しかも現在もまた破綻という道しか残されてはいない。
 そしてこの期に及んでも主人公は、この状況をもたらしたのはいったい誰なんだと徹底的に人のせいにする。だが、全てを人や時代のせいにした瞬間、その呪いは自分に返ってくる。つまり、過去において自分に状況を変える力がなかったとしたら今も当然ないわけで、状況を変え得ない自分はこの状況を受け入れるしかない。このことに気づくや、主人公は一気に絶望に堕ち、半狂乱となって想い出の場所に立つ。
 韓国の知識人がよく言う「全てを日本のせいにしているから駄目なんだ。それは結局日本への甘えの裏返しなんだ」という言葉と共に味わうべき、暗い佳作。
(イ・チャンドン監督 1999年 日本・韓国 Peppermint Candy)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

« August 2004 | Main | October 2004 »