『コウノトリの歌』(DVD 05年2月15日鑑賞)
ベトナム戦争に関わった人間が、今現在から自らの生き残った意味を問い返す。アメリカ映画ではよくあるパターンなんだけど、これはベトナム側から作った異色作。ハリウッドではジャングルからワラワラと湧いてくるだけの北ベトナムの兵士たちにもそれぞれの人生があって、ある者は戦争の意味に疑問を持ち、ある者は歳を誤魔化してまで入隊して、ホーチミンルートをトボトボと歩く。でもそんな動機の差異にはお構いなしに全ての兵士の頭の上にはアメリカ軍の爆弾が雨あられと降り注ぐ。
戦争はまた、ジャングルの中だけでやるのではない。というか、これは対アメリカ戦争であると共に、共産主義革命なのである。だから「南」の軍人の娘に取り入り、婿になって様々な「工作」をやることもまた任務。子供も作って……それで革命……これは切ない。
ありふれた題材と構成だけど、革命の正当化に堕してはなくてけっこう感動する。
(ジョナサン・フー/グエン・ファン・クアン・ビン監督 2001年 ベトナム・シンガポール SONG OF THE STORK)
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『レディ・キラーズ』(DVD 05年2月17日鑑賞)
「レディ」が一人住まいしている家の地下室からカジノの金庫までトンネルを掘って金を盗もうとしている5人組。リーダーは「教授」、高い教養で「レディ」を煙に巻きつつ、あまり役に立たないあとの4人の尻ぬぐいばかりしている。カジノに潜入させていた「スパイ」はセクハラでクビになるし、爆弾の専門家はダイナマイトの暴発で指をなくしてしまうし。でもなんとか盗みは成功して、ところが「レディ」に全てがばれてしまう。敬虔なキリスト教徒の「レディ」は金を返せば保安官にはいいつけないという。「教授」が嘘八百で色々と懐柔しても効かない。これはもう「レディ」を殺すしかない。でも、誰が?
ここからは因果モノというか、悪の栄えた試しはないというか、そういう世界で、面白いけどちょっと出来すぎの感じ。テンポは良くて楽しいけどね。
(イーサン・コーエン ジョエル・コーエン監督 2004年 アメリカ THE LADYKILLERS)
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『ヴァン・ヘルシング』(DVD 05年2月11日鑑賞)
19世紀、ヴァチカンの命を受けてヨーロッパ各地のバケモンを退治して歩くバケモンハンター「ヴァン・ヘルシング」。今度のミッションはトランシルバニアの不死の吸血鬼、いわずと知れた「ドラキュラ」を倒すこと。ここにフランケンシュタインや狼男が絡んできて、おまけにドラキュラをつけねらう一族の王女やドラキュラの三人娘も登場して、なんとも絢爛豪華な化け物大戦。東映マンガまつりとかそういうのを思い出した。
字幕を消して原稿書きながら観たけど何の問題もなく理解できた。CGはすごくて面白いけど、その程度。
(スティーヴン・ソマーズ監督 2004年 アメリカVAN HELSING)
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『キング・アーサー』(DVD 05年2月11日鑑賞)
「アーサー王と円卓の騎士」は中世の物語だが、実はローマ時代のブリテンの史実に根を持っている。という設定で、ローマからの独立とサクソン人との闘い等々を織り込んだ基本的にはチャンバラスペクタクル、でもイデオロギー的には全くの現代劇。サクソン人に囚われたローマの要人家族を救いに行って、結局は住民まで連れてくることになるのは同じ監督の『ティアーズ・オブ・ザ・サン』そのものだし、おまけにアーサーはやたら「自由、自由」って叫びまくる。このあたり興ざめ。
ただ、戦闘シーンは見所が多い。凍った湖での戦闘にはマジで手に汗を握ってしまった。
(アントワーン・フークア監督 2004年 アメリカKING ARTHUR)
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『狐怪談』(05年2月9日鑑賞)
女子校の寮へと向かう28段の石段が一段増えて29段になることがある。これは「狐」様の仕業で、このときにお願いをすれば何でもかなう、のだという。一人は「痩せますように」と、もう一人は「バレーのコンクールに出られますように」。で、「痩せますように」の女の子はどんどん痩せて気味悪がられ、「バレー」の女の子は文字通りライバルを蹴落としてロシア留学を勝ち取るものの、親友だったそのライバルは自殺、このことでクラスメートからは陰湿な虐めを受けてしまう。こういう言い方は良くないことを知りつつ、やっぱりこのあたりの描写は女性監督ならでは、だと思う。でもここからはもう、怖ければいいんでしょ、怖ければ、的な、ストーリーも何も無視した細部の積み重ね、で、破綻。はっきり言って何のカタルシスもない。薄気味悪いだけで。
監督、あなた、亡霊なんか本気で信じてないでしょ。日本じゃね、ホラー映画の撮影の時には必ず霊現象が起きるのだよ。絶対に起きるのだよ。こないだも『着信アリ2』の撮影現場で起こった霊現象をテレビでやってたくらいでね。そもそも韓国には亡霊なんていないでしょ。だって朱子学原理主義の朝鮮朝(李氏朝鮮)に政権交代するとき、そういうものを全否定した国なんだから。だからもっと現世的な人間関係の怖さを描いた方がいいと思うんだけど。女の子たちは演技も上手で可愛いし(だから最後まで観てしまった)、心理的な細部へのこだわりはけっこう良いものを持ってると思う。
ちなみにこの「女子校」シリーズの第一作『女校怪談(邦題は忘れた)』では女の子たちが「コックリさん」をするんだけど、その時の呪文は日本語で、
「仏様仏様お出でてください」
だったと思う。韓国では、気色の悪いもの、偶像崇拝的なものは基本的に日本由来の仏教だとして拒絶される傾向にありますね。だから韓国人へのおみやげに日本人形などは避けた方が良い。「仏教的」だとして薄気味悪がられ、タンスの奥の奥に仕舞われるのがオチ。『韓ドラ』のセットにも、あまり人形って出てこないでしょ。
(ユン・ジェヨン監督 2003年 韓国)
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『スパイダーマン2』(05年2月9日鑑賞)
フリーのカメラマンと学生と二足のワラジどころか、その上、29分で配達できなかったらタダとかいうピザ屋の配達に、そして何と言っても街を救うという「スパイダーマン」の仕事もある。これじゃ役者になった恋人の舞台を見に行く暇もない。超能力も落ちてきたみたいだし、そろそろ辞めるか。
ということで普通の青年に戻った(つもりの)ピーター・パーカーだったんだけど、それでもスパイダーマンを親の仇と思い込んでいる(まあ、実際そうなんだけど)親友は放っておいてくれなくて、怪しげなマッド・サイエンティストの成れの果てをたきつけてくる。このあたりの話の流れはジャパニメーションの影響が顕著で、特にエレベーターのシーンなんかもろに『新世紀エヴァンゲリオン』。
前作の締めつけるようなペーソスの消えたのが個人的には残念。
関係ないけどUSJのアトラクション「スパイダーマン」はなかなかです。これはお薦め。
(サム・ライミ監督 2004年 アメリカ SPIDER-MAN 2)
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『シルミド』(DVD 05年2月4日鑑賞)
北朝鮮による青瓦台(大統領府)襲撃未遂事件に報復するため養成された684部隊。死刑囚を中心に組織された決死の部隊で、目的は平壌に侵入して金日成の首を取ってくること。この部隊への特殊訓練が行われたのが実尾島(シルミド)という無人島だった。
シルミドに連れてこられた当初は根性無しだった死刑囚たちも、厳しい訓練の中で特殊部隊へと生まれ変わり、志気も上がり、ついに決行の日がやってくる。意気揚々と出航する死刑囚たち。ところが政治判断で作戦は変更され、国家は684部隊そのものを抹殺しようと動き出す。この動きを察知した死刑囚たちはもはや昔の根性無しじゃない。無敵の特殊部隊と化した死刑囚たちは正規軍と凄惨な戦闘を重ねつつ、自らの存在を認めさせるため、平壌ではなく青瓦台へと向かうのだった。
……確かにシルミドで叛乱が起こったことは事実なんだけど、で、文学的演出を加えてますって書いてるけど、これは完全なフィクションだと思うよ。そしてフィクションだとわかってても、韓国風のムサ苦しい男同士の友情が、悲しい。袋からこぼれる「あめ玉」が、悲しい。『ブラザー・フッド』より遥かにいいと思う。
(カン・ウソク監督 2003年 韓国 SILMIDO・実尾島)
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『APPLESEED』(DVD 05年1月31日鑑賞)
非核大戦で滅んだ世界に唯一残ったユートピア・オリュンポス。その住人は半分が「バイオロイド」。見かけは人間と変わらないが、生殖能力を欠き、その故か常に感情の抑制が効いている。オリュンポスではこれを社会に混ぜ込むことで二度と争いが起こらないようにしているのだった。
で、ここに連れてこられた女戦士が元恋人と再会して色々あってオリュンポスの秘密を知ってそれがまた自身の家族の秘密にも繋がって、という、物語は近未来反ユートピアものの王道なんだけど、今ひとつ月並み。CGは息を呑むほど美しい。
(荒牧伸志監督 2004年 日本)
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『パッション』(DVD 05年1月30日鑑賞)
イエスの最期を聖書に忠実に作ったらこうなりました、って映画ですか。
Passionは外から来れば「受苦」だし、内から来れば「情熱」となる。イエスがまさにPassionの人だったって事を言いたかったんだろうけど、技法的にはかなり幼稚だし、とにかく鞭打ちシーンとか、そういうのがしつこすぎる。だって、枝分かれした鞭の鈎が4、5本、脇腹にグサッと刺さって(痛そう)、で、ここで一気に鞭を引き戻せば何本もの深い裂傷が出来て血が飛び散ってさすがのイエスもたまらずに声を上げ(もう十分でしょう)、で、これを延々繰り返して背中が「完膚無きまで」打ちのめされるや(もういいって)、こんどは裏返して(おいおい)、また同様に腹側の皮膚もまた「完膚無きまで」打ちのめす(だからもういいって。飽きたから)。こんなイエスの「受苦」を眺めるマリアの描写にはグッと来るものがあったけど、これも最初の方だけで、やっぱりだんだんと飽きてくる。
江戸時代の誰だったか、キリスト教のことを「教祖の死体を拝む邪宗」と罵倒してたけど、これを観たら言い得て妙と納得。
(メル・ギブソン監督 2004年 アメリカ・イタリア THE PASSION OF THE CHRIST )
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『RE:キューティーハニー 天の巻 地の巻 人の巻』(DVD 05年1月28日)
テロ集団パンサー・クローのテロで大騒ぎになる東京。パンサー・クローの圧倒的な力の前に警察も傍観するしかない。ところがそこに謎の美少女が現れてテロ集団を蹴散らし、で、この美少女がキューティーハニーであること、言うまでもなくて、敵のキャラも何チャラ四天王とかって巻を開くごとにだんだんと濃くなっていく。かく、「天の巻」「地の巻」までは70年代テイストたっぷりのドタバタなんだけど、ここがやっぱり庵野秀明総監督の作品、最終話の「人の巻」はもうまるっきり『新世紀エヴァンゲリオン』。でも、この路線はもう古いんじゃないか。「人の巻」の摩砂雪監督の絵はハニーにしては暗いし。
実写版の方が遥かに面白かった。
(庵野秀明総監督 2005年 日本)
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『下妻物語』(DVD 05年1月29日鑑賞)
ロリータファッションに突っ走る女の子とバリバリの原チャリヤンキー女の奇妙な友情物語。舞台は茨城県下妻。田圃の広がる田舎町で、ヤンキーの恋とか伝説とかがバカバカしいにもホドがあるような演出で語られ、それを、聞き役のロリータ少女は全くの無関心でズラしてしまう。ところが二人の平行線は「刺繍」の一点で交わってしまい、これもまたバカバカしい怒濤のラストになだれ込む。けっこう感動した。
それにしても・・・プロローグ部分で語られる、このロリな女の子の出身地って、衛星写真で迫るシーンをコマ送りで眺めたらどう見ても芦屋じゃん。「尼ヶ崎」の近くって、そりゃ確かに近いけど、ちょっと違うだろ。映ってる市場は確かにどうみても尼ヶ崎の出屋敷だとは思うけど。関東から見た関西ってこんな楽しい所なのか?
(中島哲也監督 2004年 日本)
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『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(DVD 05年1月28日鑑賞)
アズカバンから脱獄した囚人は実はハリーの両親の死にも関わる凶悪犯で、ハリー自身をも狙ってる。魔法学校にもその凶悪犯対策のための得体の知れない吸血鬼がやってきて、でもこの吸血鬼とハリーとの相性はどうも良くないらしい等々、ストーリーはこれまでになく錯綜して、いや、錯綜するのはいいんだけど、今ひとつまとまりというか、素直さに欠けてて楽しめない。もう一つ問題なのは、役者が文字通り成長しすぎ。ハーマイオニーなんか、もう大人の女性じゃん。スラックスの半ケツには思わずドキッとしてしまって、役者の肉体的にもうファンタジーの限界に来てしまってる。
(アルフォンソ・キュアロン監督 2004年 アメリカ HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN)
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