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『誰も知らない』

『誰も知らない』(DVD 05年4月21日鑑賞)
 はじめに言っておくが、私はこの監督の作品を好まない。カルト宗教を扱ったつもりだろう『ディスタンス』など、論ずるにも値しないゴミである。そもそも演技をつけないという自然体の手法は「事件」を描く方法論としては根本的に間違っている。このような方法では「事件」そのものが役者たちの資質や解釈によって矮小化され、「物語」が成立する前に破綻してしまう。だから、実話をモトにしたと言われるこの映画も全く期待せずに観た。
 やっぱり。
 という感じで物足りなさは残るものの、柳楽優弥とYOUが素晴らしい。この映画はこの監督の方法論と役者の資質と「事件」が融合した、一種の奇跡であると感じた。親に捨てられた子どもたちが助け合いながらけなげに生きていく様が切なく、演出とは思えない演出、演技とは思えない演技に感嘆する。
 ただし、限界もある。実話をモトにしたとうたっているが、現実の事件はこんなきれい事では断じてない。この事件が起こった当時、私は戸籍のない子供についての本を書いていたから憶えているのだが、事実では次女は死んだのではなく、居着いていた長男の友人になぶり殺しにされたのだった。埋葬したのも押し入れから臭ってきたからで、しかもそこには母親のいた頃に病死した次男がそのままうち捨てられていた。現実には極めて陰惨な事件であった。
 ところが、このような悲惨を描こうとすれば、必然的に役者は自分以上の残虐を演じること、つまり演技を要求され、監督も演技をつけなければならなくなる。これはこの監督の方法ではない。で、方法のために「事件」の残虐さは切り捨てられることになった。つまり役者の等身大に「事件」が矮小化されることで、その結果として映画は素晴らしい仕上がりになったというわけだ。、柳楽優弥が柳楽優弥であるために、YOUがYOUであるために、「事件」から悲惨の影は削られたのである。
『誰も知らない』は、この監督の手法の限界を鮮やかに、美しく、示している。
 この映画を観て「案外、やっていけるもんじゃん」などと、子供を捨てる親が増えないことを切に願う。
(是枝裕和監督 2004年 日本)

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『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』

『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』(DVD 05年4月21日鑑賞)
「この世の終わり」に取り憑かれたカルト集団と思しき「12使徒」の面々が次々と死んでいく。というか、惨殺されていく。ここにヨーロッパの再生を目論む「ドイツ人」(フランス映画なんです)が絡んで「謎」は「陰謀」に化け、最後は「アクション」で解決。「企画倒れ」とか「アイデア倒れ」とか「倒れ」にも色々あるけど、これは「雰囲気倒れ」の最たるモノ。何がどう解決したのか、多分、製作者にも分かっていない。それでも「雰囲気」だけで最後まで引っ張っていくのだから大したものと言えば大したもの、かもしれない。
(オリヴィエ・ダアン監督 2004年 フランス LES RIVIERES POURPRES 2 - LES
ANGES DE L'APOCALYPSE )

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『ツイステッド』

『ツイステッド』(DVD 05年4月20日鑑賞)
 サンフランシスコ市警で殺人課に栄転した女性刑事が奇妙な連続殺人に巻き込まれる。被害者は皆、自分が一夜限りの関係を結んだ男ばかり。しかもその事件の夜の記憶はない。すべて泥酔して正気を無くしていた夜ばかり。
 実はこの女性刑事には両親の死を巡るトラウマがあった。
――自分には人殺しの素質があるのではないか。人を殺してみたいと思っているのではないか。
 で、酒に逃げる。正気を無くす。目覚めてみれば隣で男が死んでいる……。
「デカになるヤツは狂ってる。銃口を向けられても逃げない、そうだろ?」
 嫌だなぁ~、こういうの。
 まあ、このセリフがどこで使われるかはネタバレになるから言わないけど、ちょっとやめて欲しい気色の悪さとどんでん返し。実際、この事件がまたトラウマになるんじゃないかと心配になる。
(フィリップ・カウフマン監督 2004年 アメリカ・ドイツ TWISTED)

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『80デイズ』

『80デイズ』(DVD 05年4月19日鑑賞)
 19世紀のイギリス。物笑いの種にしかならない奇怪な発明ばかりしているマッドに近い科学者がいて、これが科学アカデミーの権威と賭をする。80日間で世界一周できるかどうか。
 この科学者に、ロンドンまで村の守り神の仏像を取り戻しに来た中国人が同行することになり、さらにはこの中国人の取り戻した仏像をさらに盗もうとつけ狙う悪人も絡んできて、世界を一周しながらの(ジャッキー・チェンのおなじみの)カンフー・アクションが展開することになる。
 物語自体はひどく幼稚で単純。あちこち矛盾しまくってるし。でも、子供と観るにはちょうどいいかもしれない。
(フランク・コラチ監督 2004年 アメリカ AROUND THE WORLD IN 80 DAYS)

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『茶の味』

『茶の味』(DVD 05年4月17日鑑賞)
 山間の家族の淡々とした日常を淡々とした映像で……とは絶対に言えないところがこの監督のくせ者な所で、実際、本筋となるドラマは何もなくて、強いて言えば高校生の長男の恋がちょっとだけ進展しつつ、小学生の長女が少し成長していくという、実にゆったりとした物語のくせに、そこに突然、猛スピードで打ち返される小石とか、夕暮れの列車の中の奇怪なコスプレとか、ちょっと普通じゃあり得ないようなエピソードが重ねられ、で、一回でも「クスッ」と来てしまうともうダメ、しみじみとした感動のラストまでズルズルと引っ張っていかれてしまう。
 ただこれ、この世界にハマれない人には何のことかサッパリ分からないでしょうね。見る人によって超駄作から大傑作まで、評価の分かれる一本でしょう。光景の美しさ、切なさに、ワタクシ的にはお薦めです。『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督も「監督」役でカメオ以上の出演をしています。
(石井克人監督 2003年 日本)

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『茶の味』

『茶の味』(DVD 05年4月17日鑑賞)
 山間の家族の淡々とした日常を淡々とした映像で……とは絶対に言えないところがこの監督のくせ者な所で、実際、本筋となるドラマは何もなくて、強いて言えば高校生の長男の恋がちょっとだけ進展しつつ、小学生の長女が少し成長していくという、実にゆったりとした物語のくせに、そこに突然、猛スピードで打ち返される小石とか、夕暮れの列車の中の奇怪なコスプレとか、ちょっと普通じゃあり得ないようなエピソードが重ねられ、で、一回でも「クスッ」と来てしまうともうダメ、しみじみとした感動のラストまでズルズルと引っ張っていかれてしまう。
 ただこれ、この世界にハマれない人には何のことかサッパリ分からないでしょうね。見る人によって超駄作から大傑作まで、評価の分かれる一本でしょう。光景の美しさ、切なさに、ワタクシ的にはお薦めです。『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督も「監督」役でカメオ以上の出演をしています。
(石井克人監督 2003年 日本)

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『リディック・アニメーテッド』

『リディック・アニメーテッド』(DVD 05年4月16日鑑賞)
 どこかから逃げてきたリディックたち3人がワケありの宇宙ステーションに入りこんで監禁され、そこの女王みたいなちょっとサイコ入った女にオモチャにされて復讐して脱出して、という型通りの30分、なのに辻褄の合わないところもあって、けっこうアバウトだったりする。キャラクターの顔の濃さが感情移入をなんだか妨げてるような。
(ピーター・チョン監督 2004年 アメリカ THE CHRONICLES OF RIDDICK: DARK FURY)

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『モナリザ・スマイル』

『モナリザ・スマイル』(DVD 05年4月8日鑑賞)
 1950年代、開放的なカリフォルニアから保守的なニューイングランドの女子大に赴任してきた女性教師、何か良くわからないけど、何かを変えてやろうと意気込んでいて、でも最初の授業で完璧な予習をしてきた学生たちに出鼻をくじかれる。もちろん次の授業ではその学生たちの鼻を折り返す。このやり方が大学にとって許容範囲なのかどうかも考えず。
 この大学でのいちばんの価値はエリートと結婚して家庭を支えること。学生結婚も当たり前、ハネムーンには特別に休みも与えられる。もちろん、こういう慣例もカリフォルニアから来た女性教師には気にくわない。女の人生は結婚だけじゃないのよ、と。
 半ばまではフェミニズムの教条が出過ぎて辟易するが、この教条が学生たちの具体的な人生に裏切られるあたりから「イズム」には収まらない「人間」の幅が描かれ始め、ラストには納得できないながらも爽やかな後味を残す。
(マイク・ニューウェル監督 2003年 アメリカ MONA LISA SMILE)

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