DVD評『エル・コロナド 秘境の神殿』
『エル・コロナド 秘境の神殿』(DVD 04年12月1日鑑賞)
スイスに仕事に行った婚約者が書類をここに忘れてる。届けてあげるわね、と海を越えてスイスまでやって来た。ところが、その事務所はただの私書箱。婚約者の姿はどこにもない。仕方なく書類を開けてみるとスペイン語。どうも中米の「コロナド」という国にいるらしい。
で、「コロナド」にやって来る。ここは政府軍と反乱軍の拮抗する「革命」の真っ最中。知り合ったテレビのレポーターと一緒に革命の根拠地へと潜入してそこで婚約者と再会するんだけど、これがどう見てもアヤシクて、実際、アヤシイ方向へと話は向かい……珍妙な冒険活劇は事実か単なるオハナシか。結末は宙づり。
古典的な革命劇は薄っぺらだけどアクションは結構爽快。谷にかかる巨大な木橋のシーンはマジで手に汗を握ってしまった。
(クラウディオ・ファエ監督 2003年 アメリカ・ドイツ CORONADO)
2004.12.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ディボース・ショウ』
『ディボース・ショウ』(DVD 04年12月1日鑑賞)
離婚する。財産は夫婦半分ずつわける。ところがこれだと、大金持ちと結婚しての離婚を繰り返せば濡れ手で粟の大もうけが出来てしまう。これを防ぐために婚前協約を結んでおく。離婚しても何一つ奪いません、と。
この「協約」のひな形を作って離婚訴訟の権威となった弁護士が一人の女に手の込んだ復讐を受けて振り回される。とにかく「財産」と「愛」が絡むとややこしいし、この制度のもとでは確信犯的に「財産」を狙って「愛」を求めてくる女を排除するのは無理でしょう。基本的に美女の前では男ってバカだし。「子供」が絡んでないのがまだ救いではありますが。
(コーエン兄弟監督 2003年 アメリカ INTOLERABLE CRUELTY )
2004.12.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『トロイ』
『トロイ』(DVD 04年11月26日鑑賞)
トロイVSギリシャ。トロイの木馬でおなじみですね。スパルタ王の妻を奪ったトロイ王子を追ってギリシャ船団が要塞都市トロイに押し寄せる。これは欧米人にとっては忠臣蔵みたいなもので、どこで誰がどうなるかはもうみんな知っている。アキレスとヘクトルは対決すべくして対決するし、トロイの木馬はトロイの木馬としてそこにあるし、アキレスはアキレス腱を射抜かれなければならないし、どれだけ工夫しようが努力しようが、トロイは滅びてしまうんだし。可哀想に。と、そんな無常観ただよう雰囲気はまるで『平家物語』を思わせて、ハリウッド超大作にしては後味が重い。
アキレスを古典的スーパーマンじゃなく人殺しの罪に悩む現代的英雄にしたのも重いし、ヘクトルを殺されたプリアモスは悲痛すぎるし、何より、ヘクトルを演じたエリック・バナの存在感がすごすぎる。古代って、こんなに人一人の命が重かったのか?
(ウォルフガング・ペーターゼン監督 2003年 アメリカ TROY)
2004.11.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ハリウッド的殺人事件』
『ハリウッド的殺人事件』(DVD 04年11月25日鑑賞)
復業で不動産屋をしてる刑事と俳優志望の刑事が組んでラッパー殺人事件を追う。ここに親の仇や妻仇打ちやもからまって、最後はよくわからない追跡劇。この追跡劇をまさにマスコミが「劇」にしてしまうところも「ハリウッド的」ってことなのか。
何かあるのかと思って最後まで観たのに結局なんにもなくて、何? これ? という感じ。
(ロン・シェルトン監督 2003年 アメリカ HOLLYWOOD HOMICIDE)
2004.11.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『アナトミー』
『アナトミー』(DVD 04年11月24日鑑賞)
偉大な解剖学者である祖父を慕い、ショボイ町医者の父を軽蔑してる医学生の娘。選ばれてハイデルベルクに特別講義を受けにやってきた。ところが、いきなり、行きがけの列車の中で知り合った重い心臓病の男の子が献体になって横たわってる。これは、ただ事じゃない。
で、調べていくうち「アンチ・ヒポクラテス」なる団体の存在に行き当たる。患者のため、という医の倫理を否定し、研究のためには生体解剖さえも厭わない、かなり怪しげな集団らしい。実際、この医学生の回りでは怪しげな事件が次々と起こる。
話としては別にどうと言うことはないけど、やっぱり、「身体」が「人体」として扱われるのって気色が悪い。それがまた自分の「身体」だったらなおさら。解剖されつつある自分に気付いてしまうなんて、想像出来る限りで最高の気色悪さじゃないでしょうかね。「女体」を「人体」標本にしてしまう、サイコというかカルトな男も気色悪いし。
「誰か縫ってくれよぉ」
って、おいおい、まあドイツらしいと言えば言える。
女子学生の成長していく様は爽やかだけど。
(ステファン・ルツォヴィツキー監督 2001年 ドイツ ANATOMIE)
2004.11.25 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『スティーヴン・キング/痩せゆく男』
『スティーヴン・キング/痩せゆく男』(DVD 04年11月22日鑑賞)
辣腕弁護士がジプシーの親玉の娘(と言っても老婆)を不注意からひき殺し、でも判事や警察署長とグルになって無罪。怒ったジプシーはこの3人に「ジプシーの呪い」なるものをかけ、判事はトカゲのような姿になり、警察署長はまるでゾンビ、そして弁護士は食っても食っても痩せる。ドンドン痩せる。
で、「ジプシーの呪い」を解いてもらいにジプシーキャラバンを捜して旅に出る。見つかる。もちろん事態は悪化する。前に弁護して恩を売ったギャングの親玉もやってくる。もっと事態は悪化する。報復が報復を生んで、なんかもう、最悪。ラストも最悪。なんですか、これは? って感じ。
(トム・ホランド監督 1996年 アメリカ STEPHEN KING'S THINNER)
2004.11.23 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『夜の大捜査線』
『夜の大捜査線』(DVD 04年11月20日鑑賞)
アメリカ南部の小さな街で起きた殺人事件。容疑者は駅の待合室にいた黒人。財布には被害者から奪われた額に近い大金が入ってる。怪しすぎる。でもすぐに釈放、だってこの黒人も刑事なんだもん。北部で活躍してる敏腕刑事、専門は殺人。
というわけで、地元の警察の手伝いをすることになったんだけど、何せ、人種偏見の強い土地柄。警察署長にしてからが、この黒人刑事に「言うこと聞かないと鞭で打つぞ」と叫く始末。それでも捜査は一歩ずつ前進して、物語は爽やかなラストに流れ込む。
低予算丸出しで、アクションもほとんどなく、古い(1967年制作)。それでも最近の月並みな刑事モノよりはるかに心理的な掘り下げが深い。シドニー・ポワチエの名演が光る。
(ノーマン・ジュイソン監督 1967年 アメリカ IN THE HEAT OF THE NIGHT)
2004.11.21 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ハンニバル』
『ハンニバル』(DVD 04年11月19日鑑賞)
人間離れした知性と洞察力をもったハンニバル・レクター博士とFBI捜査官クラリスの、実にアブナイ交感は仄かに時空を超えて続いていたのだった。
で、国際手配されたレクター博士には多額の賞金がかかっており、それを目当てにタレ込んだイタリアの警察官は腹を裂かれて窓から首つり、内蔵は広場にベチャッと落ちて、この繋がりでレクターとクラリスの仄かな交感の糸が実体化してしまう。ここに、レクターを自分の「顔」の仇とつけねらう大富豪が絡んできて陰惨度は加速、レクターは自分に絡んでくる「悪い奴ら」を裁判も無しに次々惨殺して最後は脳みそを生贄自身に食わせたり、でも、気色悪いだけで、全く怖くない。これは観る前からわかってたんだけど。
だって、奇妙に倫理的な極悪人の、その「極悪」の部分を常人の倫理(クラリスへの愛とかそういうの)で解釈してしまっちゃだめでしょう。これじゃレクターの常軌を逸した部分が削れてしまう。
(リドリー・スコット監督 2001年 アメリカ HANNIBAL)
2004.11.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『キル・ビルVol.2』
『キル・ビルVol.2』(DVD 04年11月18日鑑賞)
結婚式でリンチされ殺されかけたザ・ブライドの復讐の旅、完結編。今度はメキシコ。最後の標的・ビルとも再会して和やかだったり殺し合ったり。
それにしても、埋められた墓から出てくるのに過去のカンフー修行が役に立つとは……若い頃の苦労はしておくもんだとつくづく実感。するわけねーだろっ!
Vol.1はまだ日本編が面白かったけど、これはちょっとどうしようもない感じ。2本に分けて正解でした。1だけでじゅうぶんです。
(クエンティン・タランティーノ監督 2004年 アメリカ KILL BILL: VOL. 2)
2004.11.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『涙女』
『涙女』(DVD 04年11月17日鑑賞)
不法滞在していた北京で夫は傷害事件で逮捕、妻も故郷に強制送還されてしまう。故郷で妻は葬儀屋の元カレに薦められ「泣き女」で稼ぐことにする。結構儲かる。これだったら被害者の治療費や夫の保釈金もすぐに貯まるだろう。でも、元カレとは焼けぼっくいに火がついていて、これはこれで美味しい関係だったりして。
と、なんだか主人公の泣き踊りのようなフワフワした印象が強烈な怪作。ラストがちょっぴり悲しい。
(リュウ・ビンジェン監督 2002年 フランス 哭泣的女人)
2004.11.18 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『25時』
『25時』(DVD 04年11月17日鑑賞)
ニューヨーク。
ここで白人のヤサ男が服役したらどうなるか。
最初の自由時間によってたかって押さえつけられ、いくら暴れようとバケモンみたいな男の群れ、まずは前歯をへし折られて抜かれ、以後、刑期を終えるまで看守も公認の「女」として生きる地獄の日々……逃れるには病死か、自殺か、腸管を破られての悶絶死か。救いは、ない。
そんな運命の服役を明日に控え、最後の自由時間を友達二人と過ごす白人のヤサ男。ドラッグのディーラーをしていて密告され、元締めを売れ、という警察との取引にも応じず7年服役することになった。
「今日が俺の最後の夜だ。ムショの7年は長すぎる……もし戻って来れたとしても、もう今の俺じゃない」
堅気の友人二人には慰めの言葉もない。こいつが娑婆でやったほとんど唯一の善いこと、瀕死の犬を助けた、その犬の世話を約束するだけ。
さりげない背景にあのグラウンド・ゼロが入り、失った人生の取り返しのつかなさが胸にしみる。
そこの、ニューヨークでドラッグのディーラーになって一発当てようと思ってるアナタ、これを観て考えなおしなさい。大丈夫、アナタはまだ引き返せる! と、そんな映画。
(スパイク・リー監督 2002年 アメリカ 25th hour)
『涙女』(DVD 04年11月17日鑑賞)
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DVD評『21グラム』
『21グラム』(DVD 04年11月16日鑑賞)
最初はワケがわからない。でもそのうち話が繋がってくるんだろうなと思って見続けても時間軸も一本じゃないものだからなかなか筋を掴みきれない。でも、だんだんと、心臓移植でしか助からない教授、キリスト教に過剰にはまってる元チンピラ、そしてこの二人を繋ぐことになる哀れな主婦、の、この三つの人生が平行しつつ、悲惨な事故をきっかけに無理矢理紡ぎ合わされていくのが見えてくる。すると、さっきまで無意味な断片でしかなかったシーンがまるで想い出のように蘇り、現前のシーンと重なり合って、観る者を重厚な視聴体験へと誘っていく。
人は死ぬと「21グラム」軽くなるんだという。臓器移植はこの21グラムのやりとりなのか。だが、たとえば理不尽に殺された人の心臓が自分の胸に宿った時、その無念の「心」までもがこの身体に蘇ってくることはないのだろうか。そして、もし、その無念の「心」を宿した身体が殺人者の前に銃を持って立った時、そうやってその身体が銃を構えていられるのはこの男が心臓の提供者を殺したからなのだ。引き金を、引けるのか。
救いようもなく重いが、かすかな爽やかさを残す不思議な一作。
(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 2003年 アメリカ 21grams)
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映画評『血と骨』
『血と骨』(劇場 04年11月12日鑑賞)
済州島からやってきた朝鮮人の一代記。在日男性の金と性と暴力に取り憑かれた凄まじい生き様をビートたけしが見事に演じ……などという評があちこちに踊るんだろうが、冗談じゃない。正直言って「たけし」は余計だった。だってどう見たってこの人「たけし」じゃないですか。この映画、「たけし」を選んだ時点でもう駄目。國村隼とか寺島進とか、それに新井浩文の名演が「たけし」の登場で台無しになってる。
いや、そもそも原作が悪い。ただの作り話が「自伝」的なものと誤読され、おまけに薄っぺらで全然「内面」を描けていないのが「野獣」的だのと評価されているんだから、今に始まったことじゃないがジャーナリズムや論壇文壇はどうなってんだ。
大日本帝国の崩壊と性的に放縦な親による意味もない暴力、という設定は『愛を乞う人』とそっくりで、でも出来は比べるのもはばかれる愚作中の愚作。と呼びたいが、戦後の雰囲気はいやらしいほどしっかり作りこんでいて、それなりに懐かしく、本筋以外では感動できる部分もある。
それにしても……「在日」の戦後はここまで「暗く」ないと思うぞ。こういう、イメージ通りの「在日」像を描いてみせるところが在日進歩的文化人の嫌らしさではあるんだが、それにしても……ひどい。それに、せっかく戦後の「在日」に広がった「阿弥陀仏」「観世音菩薩」信仰をチラリとでも描くなら、あんな「暗く」ではなく当時大阪の朝鮮人の間で歌われた「念仏ブギ」くらい流してカラカラと明るく処理して欲しかった。舞台は大阪なんだから。この歌は趙博の『ソリマダン第三集』(Pandra Record)に入っていて、深夜、焼酎を飲みながらこれと「橋」(どちらも朝鮮語)とを交互に聞くとなぜだか泣けてくるので困る。
(崔洋一監督 2004年 日本)
2004.11.13 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『オールド・ボーイ』
『オールド・ボーイ』(劇場 04年11月12日鑑賞)
ある日突然監禁されて15年。絶望して自殺未遂するのも6年目まで。あとはいかにして脱出するか、脱出して報復するかを考える日々。
で、解放の日も突然やってくる。閉じこめた張本人も現れる。
「なぜ俺を監禁した?」
この問いは実は間違っている。
「なぜ俺を解放した?」
と問わなければならなかったのだ。「監禁」したことが復讐なのではない。「解放」して、「自由」に泳がせ、ある「罪」を「自発的」に負わせることが本当の復讐だったのだ。
罪と、罰と、復讐と。
ゾッとする。
マジでゾッとする。
ラストのどんでん返しの繰り返しは呆れるほどに見事で、なぜこれが日本で作られなかったのかと悔やまれる。だってこれ、原作は日本のマンガなんだよ。
『シュリ』の「ヘンボゴ男」チェ・ミンスクの熱演が凄まじい必見中の必見の大傑作。
(パク・チャヌク監督 2003年 韓国)
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DVD評『グッバイ、レーニン!』
『グッバイ、レーニン!』(DVD 04年11月7日鑑賞)
ベルリンの壁崩壊直前に倒れて昏睡状態になり、東ドイツが消え去る直前に目が醒めた母。医者は息子に、母親に刺激を与えると危険だという。でも教条的な社会主義者だった母親にとって東ドイツが溶解している様ほど刺激的なことがあろうか(いや、ない!)。と言うわけで、息子は母親を外界から隔離して、まだまだ東ドイツが続いているような芝居を打つ。でも窓からはコカコーラの垂れ幕がのぞいたりするし、母親はテレビが見たいって言うし、もう消え去った東ドイツのピクルスが食べたいとか言うし、息子曰く。
「まるでUボートの船長になった気分だ。一つ穴を塞いだと思ったら、またどこかに穴があく」
結局、ベルリンの壁崩壊の事実は隠しきれなくて、これを東の政府が積極的に西の難民を受け入れることにした結果だと誤魔化してしまう。この辺からもう、ウソはただのウソを超え、この息子が求めていたあり得べき「統一」の姿へと横滑り。その世界では、資本主義とは違う価値観を求める人々が西から大挙押し寄せてきて、ついに東ドイツは国境を開放、実に平和的に「統一」が実現されるのだった。まさに歴史の捏造。
ペーソスとおかしみと、イデオロギーに翻弄される悲しさ悔しさと、様々な要素が(一部は消化しきれずに)入っていて、元左翼ならずとも、現代史に関心のある人は必見の佳作。
(ヴォルフガング・ベッカー監督 2003年 ドイツ GOOD BYE LENIN!)
2004.11.08 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『花とアリス』
『花とアリス』(DVD 04年11月6日鑑賞)
「憧れの先輩」が転んで頭を打ったのをいいことに「私に好きって言ったじゃないですか、忘れたんですか?」などと、相手を部分的な記憶喪失者に仕立て上げ、奇妙な交際を始める高校生「花」。このお芝居が破綻しそうになって、その破綻を繕うために親友の「アリス」に元カノとしてさらなる芝居を打って貰うことになる。
「なんで僕たち別れたのかなぁ」
などと、女の子二人に振り回される「先輩」の心は次第に「アリス」に傾きはじめ、「花」と「アリス」の友情に微妙な影が落ちてくる。
まず現実には成立しそうにない少女マンガのようなお話しが、どうしてこう、沁みるんだろう。美しい映像、自然でよどみない演技、そして監督自身によるシンプルな音楽。岩井監督も実験的失敗作だった『リリイ・シュシュのすべて』を経て、やっと自分の世界に帰ってきたという感じかな。
(岩井俊二監督 2004年 日本)
2004.11.07 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『着信アリ』
『着信アリ』(DVD 04年11月4日鑑賞)
自分の名前で自分宛に着信がある。するとその人は死ぬ。次にその人のメモリーに入っていた誰かにまた当人の名前で着信がある。また死ぬ。主人公の同級生はテレビの生番組で除霊して貰ったのにその除霊中にスプラッタな死に方をする。で、ついに主人公にも着信があり、どうも幼児虐待とかそういうのにも関係がありそうで、この辺からストーリーは破綻の一途、呪いはあるわ、ゾンビは出るわで、柴咲コウの名演も事態の進展にとてもじゃないが追いつかない。変な意味で手に汗握る。
しかしまあ、たった一本によくこれだけジャパニーズ・ホラーの要素を詰め込んだモンだと感心する。「要素」さえあればいいってもんじゃないが。
(三池崇史監督 2004年 日本)
2004.11.05 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『コラテラル』
『コラテラル』(劇場 04年11月1日鑑賞)
「巻き添え」って意味でしょうかね。殺し屋に雇われることになったタクシー運転手のめくるめく一夜。5人を一晩で殺さなきゃならないんだけど、殺し屋が一人、また一人、とかたづけていくうち、運転手は次第に、傍観者→説経師→ヒーローへと(仕方なく)変貌を遂げ、で、この心理描写をウザイと思うかどうかで評価が分かれる一作だろう。殺し屋曰く、アフリカで虐殺があったときお前は抗議したか? してないだろ、一緒だよ、傍観してればいいんだよ……銃を突きつけられてこうやって「説得」されたら、妙に「納得」してしまわないだろうか。観ながら、変に論理的な殺し屋と気弱な運転手の奇怪な友情の行方が気になったりする。
トム・クルーズは二代目『ターミネーター』を狙ってるんだろうかと思わせるくらい、道徳の欠如した人殺しを演じて凄みがある。ただ、クルーズのファンにはこれが悪役に見えるんだろうかとちょっと心配。
(マイケル・マン監督 2004年 アメリカ COLLATERAL)
2004.11.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『隠し剣 鬼の爪』
『隠し剣 鬼の爪』(劇場 04年11月1日鑑賞)
貧しいけれど楽しい我が家に住む謙虚な剣豪、という設定は『たそがれ清兵衛』とそっくり。許されない恋も、上意討ちを命ぜられるところもそっくり。舞台も東北だし、時代も幕末だし。落ちもまたそっくりで、この監督、藤沢周平原作で『寅さん』に次ぐシリーズを築こうとしてるんじゃなかろうか、と邪推させるような佳作。
ストーリーの緊密さと殺陣の緊張感では『たそがれ清兵衛』に負けるけれども、とぼけた雰囲気の永瀬正敏と影のない松たか子の掛け合いが楽しい。
(山田洋次監督 2004年 日本)
2004.11.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『イノセンス』
『イノセンス』(DVD 04年10月31日鑑賞)
複数の男がロボットに惨殺される。共通点は……そのロボットを「性」の対象にしていたこと。で、この手の怪しげな事件を扱う攻殻機動隊が出陣して敵のアジトを突き止めて云々。驚嘆すべき映像はこれを劇場で観なかったことを激しく後悔させるものだけど、やっぱり、押井監督のシナリオが理屈っぽい。原作が理屈っぽいから仕方ないと言えば仕方ないが、それでも無意味に思わせぶりで理屈っぽい。これさえなければ、とつくづく思う。
これまで押井監督のものでは『パトレイバーⅡ』が最高で、以後はもう奈落への下降線をたどるのみ、かと思っていたら、辛うじて崖っぷちで踏みとどまったのが本作かな。
(押井守監督 2004年 日本)
2004.11.01 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック
DVD評『ポーリーヌ』
『ポーリーヌ』(04年10月24日鑑賞)
もう70過ぎの四人姉妹。知的障害の妹・ポーリーヌを世話していた長姉が死に、妹たちがポーリーヌの世話をしてくれるなら財産をあげる、との遺言が残される。金は欲しい、でも手のかかるポーリーヌは抱え込みたくない。二人の姉妹はポーリーヌを押しつけ合って結局はどちらも破綻、施設に預けることになる。
筋としてはこれだけ。
でも共に77歳という女優の名演に最後まで飽きずに観てしまった。ブリュッセルの花絨毯の祭の鮮やかな色彩と、祭が終わって同じ場所を一人歩く孤独なポーリーヌの姿が心に残る。
(リーフェン・デブローワー監督 2001年 ベルギー・フランス Pauline&Paulette)
2004.10.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『スクール・オブ・ロック』
『スクール・オブ・ロック』(DVD 04年10月17日鑑賞)
目指す対象に一途すぎて世の正道を踏み外してしまう。ま、良くあることです。ロックバンドのギタリストでヴォーカルのこの男もそう。観客やバンドの仲間がついてきてるかどうかは二の次、まずは自分の音楽を押しつけてしまう。で、クビ。
おまけに同居している元仲間からは怠納している部屋代を払えと催促され、窮したこいつは同居人のところに来た仕事を横取りして教師になりすます。教えることは「あきらめ」。何をやっても結局は無駄なんだ、と。ところが生徒の中に楽器の名人が何人もいることに気づいたこいつ、生徒達をバンドに仕立て上げて賞金を稼ぐことを思いつく。ここからは授業も宿題もロック、ロック、ロック。
世に反抗せよといいながら、その反抗の流儀とかが妙~に押しつけで教育的なのが笑わせる。
『スウィングガールズ』と比べると、日米の教育観の差異が浮き彫りになる。と思う。
思ったよりも爽快な佳作。
(リチャード・リンクレイター監督 2003年 アメリカ SCHOOL OF ROCK)
2004.10.18 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ホーンテッドマンション』
『ホーンテッドマンション』(DVD 04年10月16日鑑賞)
豪邸を売りに出すから見に来てくれ、あなた一人で。とご指名されたんだけど、夫も子供二人も連れて来てしまった。案の定、怪しい執事が出てきて、案内された奥にはもっと怪しい主人がいて、お決まりのように激しくなった嵐に家族は閉じこめられ、お約束のように幽霊が出て、ドタバタ騒ぎの中でこの屋敷の悲しい秘密が明らかになる。
子供だましの連続に飽きかけたころ、ちょっとホロッとくるラストが待っている。88分という短さも嬉しい。
(ロブ・ミンコフ監督 2003年 アメリカ THE HAUNTED MANSION)
2004.10.17 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『ヘルボーイ』
『ヘルボーイ』(劇場 04年10月15日鑑賞)
敗戦直前、ナチスは冥界の戸を開いて世界を破滅に導こうとしていた(オイオイ)。もちろん、その計画は達成直前に阻止されたのだが、一瞬開いてしまった冥界の穴からは異形の赤ん坊が生まれてしまう。これが「ヘルボーイ」。それから60年経った今、ヘルボーイはFBIの特殊な部局で魔界からの侵入者たちと極秘に戦い続けてる。折れた角の痕が切り株のように頭に残る赤鬼のような正義のヒーロー。
で、怪僧ラスプーチンの操る奇怪なコスチュームのナチの残党とかそういうのもまた蘇ってきてヘルボーイとの死闘が始まるんだけど、長い・・・。ヘルボーイの悩みとか勘違いとか、人間くさい面を描くのはいいんだけど、長い。長く感じさせてしまう。やっぱり「悪」のキャラが平板すぎるんだな。それにしても、もっと入っていいんじゃないか、客。数えたところ、広い劇場に4人。寒かったぞ。
(ギレルモ・デル・トロ監督 2004年 アメリカ HELLBOY)
2004.10.17 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『スキャンダル』
『スキャンダル』(DVD 04年10月10日鑑賞)
今をときめくヨン様主演の時代劇。あの女を落とせたらこの身体を許してもいいわよ、と如何にも多情そうな従姉妹(イトコと交わること自体、朝鮮社会ではものすごいタブー)に言われ、言われるままに、その硬い身持ちで知られる女をあの手この手で口説く領主様。これがペ・ヨンジュン。
『冬のソナタ』ではそのハクチ美と演技のない演技で失笑を買いつつも一部女性を魅了したヨン様だったんだけど、この『スキャンダル』の好色な領主様は素晴らしいのひと言。他の女に・・・させながら目的の女からの四角四面な返事をニマ~ッと読むところなんざ、もう、「微笑みの貴公子」ならぬ「微笑みの鬼畜」そのものです。
字幕やシナリオにかなり問題、というか朝鮮(李朝)時代の考証そのものがムチャクチャなんだけど、それはまあ日本の時代劇でもアリガチだから仕方ない。
けっこう面白かった。
(イ・ジェヨン監督 2003年 韓国 朝鮮男女相悦之詞)
2004.10.12 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『スウィングガールズ』
『スウィングガールズ』(劇場 04年10月8日鑑賞)
『ウオーターボーイズ』の女の子版。吹奏楽部の助っ人のはずが、ミイラ取りがミイラになってジャズにハマってしまった女子高校生達。に、くっついてるちょっと気の弱い男の子。『ウオーターボーイズ』と同じくまともな人間は一人もいなくて、起きる事件も同様にバカバカしくてほとんど全く説得力はない。なのに、もう強引に、役者と音楽のパワーだけで引きずって行かれる怒濤のラスト。劇中の曲をすべて役者が演奏しているというのも凄い。
これはぜひ劇場で。
(矢口史靖監督 2004年 日本)
2004.10.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『美しい夏キリシマ』
『美しい夏キリシマ』(DVD 04年10月4日鑑賞)
昭和20年の8月、宮崎、霧島のふもと。空襲で友を見殺しにしたと思い込んだ少年は、祖父の家でウジウジ悶々と過ごしている。肺浸潤だとかで、勤労動員にも行っていない。治療といえばお灸。なんか仮病臭いぞ。
本土決戦間近の重苦しい雰囲気、というのは全然無くて、軍の食糧を盗んだり、不倫したり、悩んだり、村のみんなはそれぞれ自分勝手な理屈で生きている。ただし、そこには一本、生命の限界の糸、というか、ごく身近にある「死」の空気がピンと一本張りつめていて、もう、ひたすら、たとえようもなく美しい。
特典映像での監督インタビューによれば、今が戦前に似てきたから、という左翼的問題意識で作られた作品なんだそうだ。ところが監督自身の問題意識をはるかに裏切り、作品は戦争というものの妖しい美しさを見事に描ききってしまった。実際、昭和20年8月は、史上もっとも美しい夏だったに違いない。懐かしくて悲しくて、傑作中の傑作。
(黒木和雄監督 2003年 日本)
2004.10.06 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ふくろう』
『ふくろう』(DVD 04年10月2日鑑賞)
内地じゃ食えんか、なら満州へ行け、引き上げてきたか、そんじゃここを開拓しろ、と、まるで棄民のように弾かれ弾かれ、飢え死に寸前にまで追いつめられた母娘がボロ屋で始めた水商売。というか、売春。でもないんだな、やった後に毒草焼酎を飲ませて殺すんだから。
出だし、ボロ服を着て埃だらけの女二人が意味もなくボロ小屋の中をはいずり回るシーンのバカバカしさに、もう観るのをやめようかと思った。実際、バカバカしさにも程があって、80年代の設定なのに「リストラ」なんて言うやつや、「公共事業の無駄」が云々と驚異的に先見の明のあるやつもいる。物語はもう、話にならない。けれど、何か、力、というか画面に何かがあって最後まで観てしまった。だって大竹しのぶは鬼気迫るし、なにより伊藤歩(『スワロウテイル』のアゲハ)がすばらしい。いや別に、伊藤のヘアヌードが観られたからってわけじゃないよ。
(新藤兼人監督 2003年 日本)
2004.10.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『アイ、ロボット』
『アイ、ロボット』(劇場 04年10月1日鑑賞)
未来のシカゴ。街中にロボットが溢れてる。で、ロボットを開発した大企業の博士が自殺。でもその「自殺」に疑いを持ったハグレ者の刑事は一体のロボットに目をつける。実際、このロボット、命令に反して逃げるし、なんか感情らしきものさえ芽生えかけてる。なんか怪しい、と捜査を進めるうちに変な(というか、ものすごい)事件が刑事の回りで起き始め、まあお決まりの如く捜査の一線から外されつつも執念で事件の中枢にたどり着き、でも時はすでに遅くて、事件はついに人類の命運なんて大変なことにまで拡大してしまう。つまりハリウッド的物語方程式の理想的な解法。
ロボット軍団とのバトルは目が回りそうなほど迫力がある。CGでここまでやれるんだと妙なところに感心。
(アレックス・プロヤス監督 2004年 アメリカ I, ROBOT)
2004.10.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『バイオハザードⅡ アポカリプス』
『バイオハザードⅡ アポカリプス』(劇場 04年10月1日鑑賞)
感染して死んだらゾンビになってうろつき回って他人に噛みついてそいつもゾンビにしてしまうという(笑ってしまうほど都合のいい)ウイルスが大企業の研究室から漏れて街じゅうがゾンビ化してしまってさあ大変。ここに前作で活躍した女もまたパワーアップして帰ってきて、ウイルスを作った(ちょっとマッドな)科学者の娘を救い出すべく、前作どころじゃない驚異的な活躍をする。でもそれもまたウイルスを操る大企業のオペレーションの一つに過ぎなくて、という果てのない入れ子構造の物語。音楽は下品だし、細部にはおかしな所が山ほどで物語の辻褄も合わなかったりするんだけど、最近観た中じゃいちばん怖かった。心臓の弱い人は観ない方がいいでしょうね。
思うに、こういうのって、きっと、その昔ローマ人やゲルマン人がキリスト教の「最後の裁き」の教義を聞いて震え上がった、その原記憶のたどり直しなんだろうな。だって「裁きの日」には死者がいっせいに蘇るわけでしょ。ゾロゾロと。そりゃ初めて聞いたときには怖かったとおもうよ。それを今でもこうやって語り継いでるわけだ。この映画も原作は日本のゲームだけど、イメージの肉付けは明らかにキリスト教。日本人にはちょっとここまでは作れない。
(アレクサンダー・ウィット監督 2004年 カナダ・イギリス RESIDENT EVIL: APO.)
2004.10.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『コールドマウンテン』
『コールドマウンテン』(DVD 04年9月26日鑑賞)
アメリカ南北戦争の直前、数分会って、それでビビッと来た男女が戦争で離ればなれになってしまい、でも、双方とも戦場での苦労、銃後の苦労を重ねた末に再会する。という、かなり安っぽい筋。おまけに『風と共に去りぬ』と違って類型的な悪役(脱走兵狩り)もいて、これが人間認識を薄っぺらにしてしまってる。しかも主演がニコール・キッドマン。どう見ても一瞬の恋に人生を捧げるタイプじゃないし、食べ物がないにしては豊満すぎる。それに長い。冒頭の戦闘シーンは迫力があっただけに、後半の人間ドラマがどうしてもちぐはぐな印象を与えてしまう、出来損ないの歴史超大作。面白くないことはないだけに困る。
(アンソニー・ミンゲラ監督 2003年 アメリカ Cold Mountain)
2004.09.28 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『アドルフの画集』
『アドルフの画集』(DVD 04年9月25日鑑賞)
ユダヤ人画商マックス(原題は『MAX』)とヒットラー伍長の芸術と商売を巡るドラマ。
もし、ヒットラーの画業が世間的にも認められて画家アドルフ・ヒットラーが誕生していたら? こういう「もし」は誰もが考えることで、着想としては面白くもなんともないんだけど、ただ、この映画の場合、どこでアドルフの挫折が決定的になるのかが巧妙に隠されていて、つまり逆に言えば、芸術家としての挫折が徐々に政治家としての覚醒に繋がっていくところが実によく(俳優の問題はあるにしても)描かれていて、(人物造形の平板さはあるにしても)一気にラストまで観せてしまう。
本当に、芸術家崩れに政治をやらせてはいけない、と思う。西洋ではヒットラー、東洋では毛沢東で実証済み。こいつらは消しゴムで消すように虐殺する。
(メノ・メイエス監督 2002年 ハンガリー・カナダ・イギリス)
2004.09.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『座頭市 REMASTER』
『座頭市 REMASTER』(DVD 04年9月25日鑑賞)
宿場町のヤクザ組織と腐敗した役人、虐げられる民衆。悪に立ち向かう座頭市。
勝新のシリーズ最終作のリマスター版。映像といい、音楽といい、そして斬新なキャスト(樋口可南子の女侠客、いいです。極悪の役人の陣内孝則、滑舌が少し気になります。片岡鶴太郎、もっと出て欲しい。内田祐也のトチ狂ったヤクザ、いいです)といい、大がかりな殺陣といい、ちょっとこれを越える『座頭市』はありえない。なんでたけしごときがリメイクに挑むのか、理解不能。
(勝新太郎監督 1989年 日本)
2004.09.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『シモーヌ』
『シモーヌ』(DVD 04年9月24日鑑賞)
女優のワガママに振り回されていいかげんキレかけた監督が、CGというか、俳優イメージを作ってしまえるお手軽ソフトを死にかけのエンジニアから託される。このソフト、膨大な俳優のデータを持ってきて組み合わせてイメージ通りに演技させてフィルムの中に組み込んで一丁上がりというスグレもの(この言い回し、古い?)。ソフトを作ったエンジニアはもう死んでるし、黙ってれば誰にもわからない、と、監督、これを使ってワガママ主演女優が降りてゴミ箱寸前の映画をどうにかこうにか仕上げてしまう。
ところが、この映画がCG女優「シモーヌ」の魅力で大当たりしてしまうから問題はややこしくなる。監督だって、最初はこの一本で終わるつもりだったのに悪乗り、自分が以前から作りたかった難解な「芸術的映画」までシモーヌ主演で撮ってしまう。これもまたシモーヌのおかげで大ヒット。「シモーヌ」ブームはもう誰にも止められなくて、監督自身にも止められなくて、旋風は世界中を席巻してしまう。
こうなると監督は面白くない。シモーヌを作ったのは自分、演じてるのも実際には自分、なのに、誰も自分に注目してくれない。おまけにアカデミー賞の授賞式ではプログラミングとは違う文句を喋ったりして、シモーヌ自身もなんかヘンだし。それに元妻は監督がシモーヌに操られてると勘違いして奇妙な嫉妬を感じたりして人間関係は次第に複雑になっていくし。
ハリウッドという虚飾の世界を皮肉たっぷりに描きながら、タッチは明るく、軽く、後味も悪くない。大作疲れした脳にはちょうどいい痛快作。
(アンドリュー・ニコル監督 2002年 アメリカ SIMONE)
2004.09.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『シービスケット』
『シービスケット』(DVD 04年9月23日鑑賞)
大恐慌下のアメリカ西部。子供を亡くし妻にも去られたにわか成金とはぐれカウボーイと一家離散のトラウマを引きずる騎手と、それぞれの理由で傷つきうらぶれた3人の男が一頭の見捨てられたサラブレッドに引き寄せられ、それこそ馬が合ったのか、トントン拍子に成功を収めていく。もちろん嫌みなライバルもいて、勝利があって、挫折があって、ラストのカタルシスももちろんね。これがもし実話でなかったらあまりに出来すぎと評さねばならないところ。いや、実話にしても構成は出来すぎの面がやはりある。
前半の睡魔を誘うトロさは後半の爽快な疾走で帳消しにしよう。
(ゲイリー・ロス監督 2003年 アメリカSEABISCUIT)
2004.09.24 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『オーシャン・オブ・ファイヤー』
『オーシャン・オブ・ファイヤー』(DVD 04年9月22日鑑賞)
西部劇の時代。ネイティブ・アメリカン虐殺の現場に居合わせた男はそのトラウマからアル中になってドサ回りの芸人に落ちぶれている。そこに異国から使者が来て……。
と、設定はまるで『ラスト・サムライ』(実際、こんなわけのわからないタイトルにするくらいなら邦題は『ラスト・カウボーイ』にしてもよかったんじゃないか)。で、話はというと、1000年の歴史を持つとかいうアラビア砂漠のサバイバルレースにスペインムスタングに乗るカウボーイが出場して広大な砂漠の空のもとアラブの素晴らしい血筋の馬と追いかけっこしてお姫様と淡いロマンスがあって卑怯な敵がいて撃ち合いがあって死にかけて友情があって馬との心の触れ合いがあって云々、まさに娯楽の要素てんこ盛り。前半ややもたつくし、辻褄の合わないところ、おかしな所は満載なんだけど、主人公の出自が明らかになってからグッと広がる人間的な奥行きと爽やかなラストで帳消しにしよう。
(ジョー・ジョンストン監督 2004年 アメリカ HIDALGO)
2004.09.23 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ペイチェック 消された記憶』
『ペイチェック 消された記憶』(DVD 04年9月21日鑑賞)
なんかパクリを専門にしてる凄腕の技術者がいて、でもその仕事は違法スレスレ(というか、モロ違法?)だから、内容については一切口外出来ない。というか口外出来ないように仕事の記憶そのものを消してしまわなきゃなんない。でもその記憶を消す作業って脳細胞をレーザーか超音波で潰すみたいで体に悪そう。こんなこと、そう長くは続けられねーよな。
と、そこに、もうこれ一回で一生アブナイことしなくていいような実入りのいい仕事が舞い込んでくる。
で、仕事して、記憶を無くして、その前に預けていた私物を受け取るんだけど、これが、自分の物じゃない。なんかおかしい。FBIだって追ってくるし、得体の知れない連中もいきなり襲いかかってくるし。一体自分は何を作ってたんだ?
ネタバレすれば、タイムマシンじゃなく、未来を予言する機械を作ってた。だからヤバイし、ヤバイ場面も、未来を知った自分が自分宛に送った細かなアイテムで乗り切ることが出来たってわけ。
少々辻褄の合わないところもあって気になるけど、設定もシナリオも楽しめる程度には仕上がっている。ただ、音楽が下品。
(ジョン・ウー監督 2003年 アメリカ PAYCHECK)
2004.09.22 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『LOVELY RITA』
『LOVELY RITA』(DVD 04年04年9月20日鑑賞)
不機嫌な少女。なぜ不機嫌なのか。不機嫌だから不機嫌。だって父親はトイレの蓋を閉めろとうるさいし、学校の英語劇はバカげてるし、近所の男の子とはちょっとセックスのまねごとをしただけで引き離されるし、バスの運転手とのアバンチュールは思ったほどよくなかったし。
少女の目で見たこの世界。なにしろリタを演じるバーバラ・オシカが作り出す「死」と「性」の緊張感がものすごく、ラストの衝撃はしばらく胸を去らない。さすがマーラーやクリムトやフロイトを育てたオーストリア。
(ジェシカ・ハウスナー監督 2001年 ドイツ・オーストリア LOVELY RITA)
2004.09.21 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『真実のマレーネ・ディートリッヒ』
『真実のマレーネ・ディートリッヒ』(DVD 04年9月19日鑑賞)
マレーネ・ディートリッヒ。この名前は知らなくとも『リリ・マルレーン』のメロディは耳にしたことがあるだろう。プロイセン(今のドイツ)に生まれ、早くに父を亡くし、舞台で身を立て、ついにはハリウッドで成功を収めた女優であり歌手。
と、それだけなら、こんな映画は出来やしない。マレーネがアメリカで活躍している間、ドイツはナチスの台頭を許し、こうして大女優マレーネを巡るアメリカとドイツの綱引きが始まってしまう。マレーネのもとにはナチス宣伝省ゲッペルスからの、帰国を要請する慇懃な手紙まで届く。
ところがマレーネはアメリカの市民権を取得する。母親をベルリンに残したまま祖国を裏切り、連合国と共にナチスと闘う決心を固めたのだった。以後、ヨーロッパ戦線では常に最前線で連合国の兵士を慰問し続け、そこで歌われたのが『リリ・マルレーン』、英語版はアメリカ兵を鼓舞し、ドイツ語版はドイツ兵の意気を削いだという。
マレーネの実孫の監督による淡々とした伝記映画。戦中の栄光から戦後の孤独までを、残されたフィルムと関係者へのインタビューで繋いでいく。実によくできたドキュメンタリー。
(ジョン・デイヴィッド・ライヴァ監督 2001年 フランス・ドイツ・アメリカ MARLENE DIETRICH HER OWN SONG)
2004.09.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック
DVD評『きょうのできごと』
『きょうのできごと』(DVD 04年9月15日鑑賞)
打ち上げられたクジラを囲む人々、ビルの間に挟まれて動けなくなった男、そして引越祝いに集まってきた学生達。三つの「きょうのできごと」が淡々と描かれ、結末ともなんともよく解らない海辺へと繋がっていく。
全編関西弁。妻夫木聡と田中麗奈のはちょっと耳に触るがそれはまあいいとして、全体的に漂うダレた雰囲気が映画の生命力を奪ってる。基本的にみんな物わかりのよすぎるよゐこたちすぎるんじゃないのかな。中年趣味の青春映画という感じ。もう10年若ければ絶賛したかも知れないけど。
(行定勲監督 2003年 日本)
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DVD評『イン・ディス・ワールド』
『イン・ディス・ワールド』(DVD 04年9月11日鑑賞)
パキスタンの難民キャンプに住むアフガン難民二人が仕事を求めて陸路(!)イギリスを目指す。いくつもの国境を違法すれすれ(というか違法そのものだったりもする)の手段で越え、あるときは見つかって国外退去、あるときは雪山を越えていったり、とにかく人間を駒にした双六みたい。あがりはロンドンなんだけど、話はそううまくはいくはずもなく、とにかく、ズシッとした感慨が胸に残る。
役者は全て現地調達の、行き当たりばったりのセミ・ドキュメンタリーみたいな怪作。なので特典映像の監督インタビューは必見です。もちろん本編だけでも感動は変わらない。平和で豊かな国に生まれたことに感謝。教材にも最適。
(マイケル・ウィンターボトム監督 2002年 イギリス IN THIS WORLD)
2004.09.13 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『すべては愛のために』
『すべては愛のために』(DVD 04年9月10日鑑賞)
慈善パーティに難民の少年と共に乱入してきてこれを「偽善パーティ」だとこき下ろした医師の言葉に感銘を受け、感銘を受けすぎて(というか、この男への一目惚れでしかないと思う)、私財をなげうって難民支援に乗り出した人妻の、エチオピア、カンボジア、チェチェンへの自分探し、というか、不倫の男探し。こんな女と結婚した男は一生不幸だとしか思えないハチャメチャなストーリー。邦題がまた、ストーリー以上に狂ってる。
でも駄作だとは言えない。どこも変わらぬゲリラ「政治」の愚かさを、おバカな「愛」の背景としてではあるけど、コレデモカ、と描いてみせる誠実さは感じるから。
それにしてもなんで主演がアンジェリーナ・ジョリーなんですか。だったら、ゲリラなんざ15秒くらいで蹴散らして愛する男を救って下さいよ、『トゥームレイダー』みたいに、と思ってしまったのは私だけでしょうか。
(マーティン・キャンベル監督 2003年 アメリカ BEYOND BORDERS)
2004.09.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ロスト・メモリーズ』
『ロスト・メモリーズ』(DVD 04年9月7日鑑賞)
映画の時間機序を無視してネタバレで書きます。見ようと思ってる人は観てから読んでね。といっても、ネタは大したことないんで、べつにいいか、読んでから観ても。日韓の歴史認識について考える人には必見のSF大作。それなりに、というか、かなり面白い。
2009年、統一を果たした韓国は(こんどは満州を領土とすべく)高句麗の遺跡を調査する。波風立たないように、日中韓で。ところがそこにあったのは古代のタイムマシン。これをみた日本は原爆や敗戦の屈辱を消し去るべく、刺客を過去に送りこんで安重根の伊藤博文暗殺を阻止してしまう。これで敗戦も植民地の放棄もなくなって2009年のソウルはまさにリトル東京、鍾路に秀吉像が立つわ総督府はあるわ、抗日のゲリラはいるわ公用語は日本語だわ、と、無茶苦茶な世界になっている。そこで抗日ゲリラ(不令鮮人とかいう得体の知れない名前で呼ばれてる)を追う日系日本人刑事と朝鮮系日本人刑事が登場、ゲリラ達はタイムマシンを使って歴史を元に戻そうとしてて、日本側はそれを必死に阻止しようとしてるってわけ。そんななか、朝鮮系刑事は次第にゲリラに感情移入してしまうし、歴史を戻すのを止める密命を帯びたのが他ならぬ友人の日系刑事。こうして奇妙な、けれども真面目な、「歴史」を巡る闘争が始まってしまう。
ここでも仏教VS儒教の図式が見て取れて非常に興味深い。というのも、タイムマシンを使って歴史の因果から「解脱」しようとするのはやはり日本人であり、「解脱」なんかないんだと、現世主義の儒教の立場から「解脱」を否定するのが韓国人。日韓合作なので極端な反日ではないところがまた興味深く、むしろ日系刑事を台湾系にしていたらもっと面白かったのに、と思う。
ちなみに安重根が伊藤博文暗殺に失敗していたら、その後の歴史はどうなっていたか。間違いなく言えるのは、韓国併合は10年以上遅れたしヘタすればなかったかもしれないということ(そうしたら韓国はロシアか中国の植民地になったわけで、むしろ日本にとってはその方がよかったかも知れない)。朝鮮の国情を知り抜いていた伊藤は、植民地化や合邦が日本に何の利益ももたらさないと常々主張しつつ、台頭しつつあった大陸進出論を抑えるために自ら韓国統監についたのだった。だからこそ単なる領土拡張バカの右翼からは目の敵にされ、軍部の跳ね上がり分子に暗殺されてしまったのである。それは銃弾の入射角や銃弾そのものの鑑定などから明らかで、つまり、すべては、当時から狂信的な儒教原理主義者として有名だった安重根を泳がせて利用したでっち上げだったということだ。かく、亡国への道もまた、愛国心で舗装されているのである。
(イ・シミョン監督 2001年 日本・韓国 2009 Lost Memories)
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DVD評『殺人の追憶』
『殺人の追憶』(DVD 04年9月5日鑑賞)
80年代から90年代初頭にかけて、韓国の小さな村で現実に起こった連続強姦殺人事件。村の刑事は勘を頼りに容疑者を引っ張ってきて拷問してストーリーを作って一件落着にしたいのだけど、ソウルからやってきたちょっとニヒルな刑事はそんなやり方に疑問を持つ。
だって、無理に自白させたって、本当の犯人は野放しになってるわけでしょう。容疑者を拷問してる間にも次の事件が起きてしまうし。もっと慎重に、論理的に、科学的に捜査を進めようよ、ってなわけで、犯人を追いつめてはいくのだけれど、その科学とやらも結局は当てにならなくて、犯人と共に、真相もまたトンネルの闇に消えていく。
時代物のサイコ・スリラーとしては凝った作りでよくできている。気色の悪いエログロコリアに堕すのをソン・ガンホ演じる田舎の刑事が一人、支えているという感じ。
ロッテや大塚製薬! コマーシャルに使うならヨン様よりガンさんだと思うぞ。
(ポン・ジュノ監督 2003年 韓国 memories of murder)
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DVD評『ペパーミント・キャンディ』
『ペパーミント・キャンディ』(DVD 04年9月2日鑑賞)
純情(そう)な青年が軍隊、警察、社長を経て次第に世に染まり堕落していく様子が自殺しつつある今のこの瞬間から時間をさかのぼりつつ、容赦のない冷たい突き放したタッチで描かれる。死に臨んだ初恋の女性がカメラを渡すわけ、主人公が脚を引きずるわけ、等々の細かい謎も段階的に明らかになり、時代に翻弄されながら失っていく若さと、取り戻しようのない時間の流れに胸が痛くなる。
ただし、時間の流れを操作してはいても、いや、操作している分だけ、単線的時間の中で展開する儒教的な物語であることは隠しきれない。ここでの過去は痛切な想いで思い出すものではあっても、現在を反省する材料ではない。つまり過去のどの段階にも選択肢というものがない。逆に言えば、ああしとけばよかった、という反省がない。そうするしかない状況の中でそうしてしまった主人公は当然なことに段階的に破綻して、しかも現在もまた破綻という道しか残されてはいない。
そしてこの期に及んでも主人公は、この状況をもたらしたのはいったい誰なんだと徹底的に人のせいにする。だが、全てを人や時代のせいにした瞬間、その呪いは自分に返ってくる。つまり、過去において自分に状況を変える力がなかったとしたら今も当然ないわけで、状況を変え得ない自分はこの状況を受け入れるしかない。このことに気づくや、主人公は一気に絶望に堕ち、半狂乱となって想い出の場所に立つ。
韓国の知識人がよく言う「全てを日本のせいにしているから駄目なんだ。それは結局日本への甘えの裏返しなんだ」という言葉と共に味わうべき、暗い佳作。
(イ・チャンドン監督 1999年 日本・韓国 Peppermint Candy)
2004.09.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『コール』
『コール』(DVD 04年8月27日鑑賞)
事件に巻き込まれた娘がぜんそくで……つったら最近ではまず『パニック・ルーム』が思い浮かぶけど、あれよりははるかに良くできた誘拐もの。夫の留守中にまず娘を誘拐し、そこに仲間が上がり込んで妻を軟禁、出張先の夫ももちろん別の仲間がホテルに缶詰。こうして外部との連絡を一切遮断したうえで身代金を要求する。この完璧な計画に娘の重いぜんそくというホコロビが入り、このホコロビはだんだん修復不可能な傷になってメチャクチャなラストになだれ込む。
前半の心理劇が後半になると一転、追いつ追われつのカーアクションになってしまうのがハリウッドなんでしょうが、次第に明らかになるテーマの重さに比べてこのハリウッド的アクションと結末はあまりにも軽くはないでしょうか。
(ルイス・マンドーキ監督 2002年 アメリカ TRAPPED)
2004.08.28 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『シネマチックな恋人』
『シネマチックな恋人』(DVD 04年8月25日鑑賞)
ハリウッド。シナリオライターだと偽って女優に近づいたツアーバス運転手が広げた大風呂敷のままに女も名誉も手に入れました。話と言えばどうってこともない。派手な演出もアクションも謎もない。そのかわり、くどさやえぐさも一切ない。ひたすら爽やかなおとぎ話。でもこういうの好きです。
とくに、主人公のバスツアー運転手が一念発起して古いタイプライターを持ち出しパチパチ打ち始めるシーンには、思わずググッと手を握り、頑張るんだ、頑張るんだ、と応援。現実はこんなに甘くはないと知り尽くしていながら、それでも夢を見る権利は誰にもあるからね。いや、良い夢を見せていただきました。
(アンドリュー・ガッレラーニ監督 1997年 アメリカ JUST WRITE)
2004.08.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『爆裂野球団!』
『爆裂野球団!』(DVD 04年8月24日)
1905年の韓国(大韓帝国)で野球団が結成される。「YMCAベースボールチーム」。で、時代が時代、科挙に通っても無意味だし、新しい動きは「親日」として反感を買う。閉塞感の漂う中、どうすりゃいいのさ、って感じの若者二人もこのチームに参加する。もちろん、時代が時代なんで、バットもないしミットもない。ところが唯一の経験者と思しき男は日本の軍人と知り合いで、それで、このデタラメなチームと日本の本格的なチームとが一戦を交えることになる。もちろんボロ負け。しかも、内部での親日派と抗日派の対立も絡んでチームは瓦解、するんだけど、まあここからは型どおり。と思いきや、あのラスト、
「ア~メンオサァ~~~~(暗行御使)」
にはぶっ飛んでしまった。マッカーサーに向かって葵の印籠を振りかざすような……。
日本人の描き方も客観的で好感が持て、また自らの歴史への眼差しも公平でありながらコミカルで暖かく、こういう映画も出てきたんだ、と韓国映画界の奥深さに驚嘆する。
邦題は極めてバカげてるが必見の傑作。伊武雅刀とソン・ガンホの競演という夢のようなキャストも魅力。
(キム・ヒョンソク監督 2002年 韓国 YMCA baseball team)
2004.08.25 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『バリスティック』
『バリスティック』(DVD 04年8月22日)
もとFBIの男がいて、これが妻を捜すために新しい任務を引き受け、それで任務で追ってる女は凄腕の殺し屋か破壊屋か何かわからないけど、悪の組織のボスの息子を誘拐してる。
話のつじつまは乱れまくり、エピソードの必然性も感じられず、アントニオ・バンデラスはふやけた演技で何のためにそこにいるのかわからない。けど、影のある殺し屋(なのかどうなのか、最後までわからない。確かに「母親」ってことだけは確かなんだけど)を演じてルーシー・リューが見事なんです。これはもう、この人のための映画なんで、多少のことには目をつぶってくれってことなんでしょうね。
膨大な量の火薬を使ったと思しき爆発シーンはものすごい。
(カオス監督 2002年 アメリカ BALLISTIC: ECKS VS. SEVER)
2004.08.24 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『アララトの聖母』
『アララトの聖母』(DVD 04年8月21日鑑賞)
第一次大戦中にトルコによって行われたアルメニア人虐殺をテーマにした映画がカナダで作られることになる。これがストーリーのベース。映画の内容は劇中劇として歴史の再現にも使われる。
その映画の監修者として選ばれた女性の息子が、なぜか、映画の完成後、トルコから帰国してくる。未現像のフィルムを持って。ところが、そのフィルム缶の中にドラッグが入っているのではないかと疑われ、息子は、入国審査官に、自分の旅の動機や行く先を語ることになる。ここで、アルメニア人としての「民族意識」のようなものに目覚めてしまった息子の思想的遍歴と家族の葛藤が明らかになっていく、というのが、主ストーリー。結構スリリング。
重厚な佳作(傑作と呼ぶには、もう一つ凝縮力に欠ける)だし、結論以外は納得出来る内容だとは思う。でも、なんでだろう。ざらっとした違和感がある。
多分、「被害者意識」から成長した「民族意識」のグロテスクさを描こうとしながら、その「民族意識」を肯定してしまうグロテスクさがあり、またそのグロテスクを引き受けながら、それでも距離をとらなければならない、という、ある種の複雑な自己意識が映画の構造を複雑にしてしまったのではないか。
感じた違和感は、実は誠実さへの好感でもある。
さて、虐殺の行われた第一次大戦中、トルコ軍は事実上ドイツ軍の指揮下にあった。後年、ユダヤ人抹殺を決めたとき、止める側近にヒトラーは言ったという。
「だれがアルメニア人虐殺を憶えてるんってんだ?」
国際的な宣伝工作に失敗すると、本当にあった虐殺さえ忘れ去られてしまう。逆に宣伝さえ上手ければ無かった虐殺事件を作り出すことも出来る。
色々と考えさせるフィルムではある。
(アトム・エゴヤン監督 2002年 カナダ・フランス Ararat)
2004.08.24 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ジョゼと虎と魚たち』
『ジョゼと虎と魚たち』(04年8月18日鑑賞)
雀荘でバイトしている学生がひょんなことで知り合った脳性マヒの女の子とデキてしまって一緒に暮らしてるんだけど親には紹介出来なくて……。
最初、新屋英子の腐りきったツラと演技に観る気を亡くしてしまったけど、その娘役の池脇千鶴が不思議な魅力に溢れたちょっと生意気な身障者を演じてて、可愛いんだ、これが、ほんっとに。話も、新屋のクソババアが死んでから一気に面白くなっていく。妻夫木聡ももちろんいい。身障者の女の子に感じていたものが実際には「恋」ではなく、「博愛」に近いものだってことに気づいていく、その男の(身勝手に限りなく近い)誠実を、ググッとくる名演で表出してる。あの号泣! 泣け、泣くんだ、若者! いいねぇ、こういうの。
久しぶりに邦画の傑作を観たって感じ。関西弁が実に良い。変な九州弁にはかなり抵抗あったけど。
(犬童一心監督 2003年 日本)
2004.08.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック
DVD評『マスター・アンド・コマンダー』
『マスター・アンド・コマンダー』(04年8月17日鑑賞)
ナポレオンの時代、イギリス軍船サプライズ号とフランス軍船アケロン号との追いつ追われつの海戦。砲撃し合って、壊し合って、木片が飛び散って、それが喉にグサッって刺さったり、しょうがないから逃げて、でも追ってきて、霧の中に逃げたり、囮の灯りをつくったり、それでガラパゴス諸島によって(オイオイ)、ダーウィンもどき(オイオイ)の船医からのアイディアで捕鯨船に偽装したり(オイオイ)なんだか支離滅裂なお話しが暗~く、地味~に展開される。細部は妙に作り込んだ糞リアリズムで、日常のシーンはどことなくユーモラス、一転した戦闘シーンには迫力がある。
ただ、前宣伝はとんでもない歪曲。少年達はエリート候補として乗りこんでいるんであって、いやいや乗せられているのでは断じてない。題名も古き良き時代の「身分」(マスター・アンド・コマンダー)って感じ。
(ピーター・ウィアー監督 2003年 アメリカ Master And Commander The Far Side of the World.)
2004.08.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ラ・タービュランス』
『ラ・タービュランス』(04年8月12日鑑賞)
地震予知の先進地・日本で研究をしてたフランス語ネイティブの女性がカナダのフランス語地域の田舎町に派遣される。不審なデータが観測されたとかで。
街は蒸し暑く、臭く、どこか死んだようになっていて、その原因は突然退いたままになった潮にあるらしい。
とかなんとか、この地味でくらーいお話がいったい、どこをどうやったらプロデューサーのリュック・ベッソンの世界になだれ込むんだろうって、まじめに最後まで観てしまったじゃないか。残念ながら想いだけが空回りの駄作でした。
(マノン・ブリアン監督 2002年 フランス・カナダ LA TURBULENCE DES FLUIDES)
2004.08.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『かげろう』
『かげろう』(DVD 04年8月11日鑑賞)
ナチスの侵攻を逃れて南仏へと避難中の親子が爆撃に遭い、不思議な少年に導かれるままお城のような家に入り込む。そして、その、うち捨てられたお城のような家では、戦争を忘れたような静かな暮らしが、母、息子、娘、そして少年の間に微妙な緊張をはらみつつ始まるのだった。
少年はどうも死んだ兵隊からモノを盗んでいるらしく、ドイツ兵の銃さえ隠し持っている。おまけに文字さえ読めない。はじめ母親はこのうさんくさい少年と子供たちが仲良くするのが気に食わず、なんだかんだとケチをつけている。でも次第に心を許しあい……許し合って……う~ん、まあ、そういうのもアリなんだろうけど、結末は悲しい。静かな佳作。
(アンドレ・テシネ監督 2001年 フランス LES EGARES)
2004.08.12 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『用心棒』
『用心棒』(DVD 04年7月14日鑑賞)
二つの「ヤクザ」勢力が拮抗する宿場にやって来た浪人、こいつが面白半分の正義感(なんだろうな、きっと)から二つの組織を争わせて壊滅させるまでの痛快トンデモ時代劇。冷戦という時代を背景にして観ると、これが結構政治的で面白い。政治そのものを題材にした『椿三十郎』へとつながっていくのもよくわかる。
北野武の『座頭市』はこれを意識して意識しすぎた失敗作。
(黒澤明監督 1961年 日本)
2004.08.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『悪い男』
『悪い男』(04年8月10日鑑賞)
ヤクザに目をつけられた女子大生が罠にはめられ売春宿に売り飛ばされる。ヤクザはマジックミラーのこちらから女子大生が墜ちていく様を眺めてる。
暗い。
救いようがない。
でも、これこそが韓国映画・ドラマの本流なんだよな。
たとえば恋人とモーテルに行くのさえためらっていた女子大生が次第に売春宿の暮らしになじんでいって結局は売春以外では生きていけない立派な売春婦に成長していく心理描写なんかまさに韓国映画の保守本流だし、さらには身長ほどの板ガラスを△に切ってこれに新聞紙を巻いて脇腹に横抱きに抱えすれ違いざま頂角の部分を相手の腹に突き立ててグイグイグリグリゴリゴリベキベキガシャガシャドシャッベシャッなんてヤクザ抗争の反吐が出そうな暴力描写も今となっては懐かしい、怪作の一種。
(キム・ギドク監督 2001年 韓国)
2004.08.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『MUSA 武士』
『MUSA 武士』(DVD 2004年 8月8日鑑賞)
シナの王朝が元から明に代わる。といっても、先進国の政権交代のような生やさしい代り方じゃない。明(漢族)は元(蒙古族)を万里の長城の向こう側に追い返し、ところが元は元で、一旦引いただけだと思ってる。国境も、政権の正統性も、安定にはほど遠い。と、そんな時代。
それまで元に臣下の礼をとっていた高麗としては、どんな態度をとれっちゅうの。とりあえず元についてみたけど、形勢はどうもよくない。それで明に和睦の使者を送る。でもいまここで元と戦ってる明がこんな都合の良い話を聞いてくれるはずもない。高麗の使者御一行様はスパイとしてつかまって砂漠に流刑。でもそこに元の軍隊が襲ってきて、あとダラダラといろいろあって、元軍につかまってる明のお姫様を取り戻して連れて帰れば明も許してくれるだろう、とか、色々、甘い算段の末に民間人も巻き込んで仲間はドンドンどんどん死んでいって、最後はよく判らない結末。矛使いの名人の奴隷のことを元軍が「ムサ」と呼んだのが題名の由来か? さっぱりわからん。
だいたい、「武士」は日本語であって、シナ語でも朝鮮語でもない。もともと「山伏」なんかのような「伏す」が原義。ここに武官の「武」と、士大夫の「士」を当てた、純粋な日本語である。ところが「武士道」が国際的に有名になったもんだから、ちょっとパクったろう、と。こっちの方が古いんだよ~ん、とでも言いたいんだろう。バカバカしい。
でも、高麗に日本の武士団に似た「花郎(ファラン)」という集団があったことは事実なんで、そんなら題も「武士」じゃなく「花郎」とでもすればいいのに。というか、民族主義的にはそうしないといけないでしょう。「花郎」を「武士」なんて、まるで親日派の売国奴のすることじゃないのか。ったく、これこそ『冬ソナ』につながる韓流パクリ文化の系譜というかなんというか。こんな事ばっかりやってていいのか、韓国!
(キム・ソンス監督 2001年 中国・韓国)
2004.08.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『密愛』
『密愛』(DVD 04年8月3日鑑賞)
平和な家庭に夫の浮気相手が殴り込んできて「私にも妻の資格があるのよ」とかって大暴れ、あげくにナイフで斬りつけられ、身体どころか心がズタズタになって田舎で静養。ところがそこにいた「渡部徹」ゲキ似の医者と不倫というかセフレというか、「愛してる」と言ったら負け、という奇妙なゲームを始めてしまう。これで心の病は治っていくかに見えるんだけど、田舎ですからね、すぐに噂になってしまう。
韓国の正統的不倫ドラマ。暗いクライくらい情念の炎。セックスシーンはしつこいくらい濃厚で、飽きる。
(チョン・ギョンニン監督 2002年 韓国)
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映画評『世界の中心で、愛をさけぶ』
『世界の中心で、愛をさけぶ』(劇場 04年8月1日鑑賞)
初めてのガールフレンドが白血病だったら?
無菌室のガラスを挟んでファーストキス、なんて想い出もあったりして。
その想い出を結婚寸前の男がひろって歩く。
という、素直すぎるお話にちょっとだけ仕掛けを効かせて瀬戸内の美しい光景の中に投げ込めば、涙、涙、涙な映画ができあがる。
監督がいいから駄作にはなってない。長澤まさみはむちゃくちゃ可愛いし、この薄倖の少女を思い続ける少年を森山未來が熱演してて好感度高い。ただ、この少年が、どんなことがあったらたった十数年で大沢たかおみたいな大人になってしまうのか。これは無惨すぎて、現代の部分は蛇足なんじゃないかと思えてしまう。
シャツの着方とか、テレカの自動販売機だとか、考証の甘い部分も気になるし。
それと、ロケ地が私のよく知る松山なんで、あんな所に病院あったかなぁ、とか、そういうしょうもないところも少し気になって、まあ、1000円の日で良かったかな、と。
(行定勲監督 2004年 日本)
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ビデオ評『名もなきアフリカの地で』
『名もなきアフリカの地で』(VHS 04年7月30日鑑賞)
ナチスの迫害を逃れてアフリカに渡ったユダヤ人一家の流転劇。
夫は有能な弁護士で先を読む力があり、間一髪、ナチスを逃れてアフリカに逃げてきた。ところが妻はその「間一髪」だったこと自体が理解出来ない。「ナチス」なんて一過性のもんだと思ってる。アフリカに居着く積もりなんかない。娘はその間で揺れながら、だんだんとアフリカになじんでいく。
この映画で何より良いのは、現地人が流暢なドイツ語を喋ったりしないこと。現地人は現地語しかしゃべらないから一家も次第に現地語を学んでいくし、イギリス系の寄宿学校に学ぶ娘は学内ではもちろん英語を話す。かく、多言語が自然に描き分けられていて、意味はわからないながら、雰囲気は充分に伝わってくる。
物語は娘の視点で描かれており、だから時折挿入されるオトナの事情の部分が唐突に感じられはするものの、落ち着いた雰囲気の良作に仕上がっている。
ちなみに原題には「どこでもない、まさにこのアフリカの地において(見つけたユートピア)」みたいなニュアンスも含まれていて、これを日本語に訳すのは難しい。日本語タイトルはそれなりに良くできている、と思う。英語のタイトルそのままに『ノーフェアー・イン・アフリカ』なんかにしなくて本当によかった。
(カロリーヌ・リンク監督 2001年 ドイツ NIRGENDWO IN AFRIKA)
2004.08.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『シュレック2』
『シュレック2』(劇場 04年7月29日鑑賞)
結婚の報告のためにフィオナ姫の故郷「遠い遠い国」を訪れたシュレック御一行、でも、国王は姫が自分の選んだ男とくっついてなかったんでご機嫌ななめ。というか、そこにロイヤルファミリーを巡る怪しげな陰謀まで絡んでて、シュレックは刺客に狙われることに。まあもちろん、ハッピーエンドなんですけど。
細かなディテールや個性的なキャラクターは前作を凌ぐ出来映えで、特にアニメの完成度はものすごいし、爽快なアクションでなだれ込むラストにはそれなりの感動もあるんだけど、なんというか、ストーリーの柱があまりにも細い。もうすこし、前作にあったような「謎」をちりばめて欲しかった。「2」恒例の期待通りの期待はずれとまでは言わないが。
(アンドリュー・アダムソン監督 2004年 アメリカ Shrek2)
2004.07.30 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ラブストーリー』
『ラブストーリー』(04年7月27日鑑賞)
母の恋愛を娘が追体験する。
女性の目で見た激動の韓国現代史ってとこでしょうね。
でも最初の10分でもうやめようと思った。演出が臭くて臭くて耐えられなくて。
でも中盤からよくなるって評も多かったんで我慢して観てたら、ちょっといいな、と思うところもあったんだけど、でも、やっぱり、最後まで観ても駄目映画でした。
ツッコミどころは『冬ソナ』以上にあって、その意味ではタノシイ映画でしたけど。
(クァク・ジェヨン監督 2003年 韓国)
2004.07.29 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『フレディVSジェイソン』
『フレディVSジェイソン』(DVD 04年7月23日鑑賞)
二大殺人鬼、フレディ(『エルム街の悪夢』)とジェイソン(『13日の金曜日』)が闘ったらどうなるか?
バカバカしい、あまりにもバカバカしい思いつきというか、企画。だって、殺人鬼は人を殺すから恐ろしいんで、殺人鬼同士で殺し合ったってしょうがないでしょう。と思いつつ観てると、これが結構面白くて最後まで笑いながら観てしまった。全体的に精神性、宗教性のない世界だから、サクサク人を殺してるわりに二人(というか二鬼?)はまったく怖くない。二人の戦いもワイヤーアクションとCGが得も言えぬギャグを醸し出してるし。むしろ、フレディとジェイソンを殺し合わせて共倒れに追いこもうとする女の子の意地悪さの方が恐ろしい、というか、痛快。
(ロニー・ユー監督 2003年 アメリカ FREDDY VS.JASON)
2004.07.28 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ミスティック・リバー』
『ミスティック・リバー』(DVD 04年7月22日鑑賞)
幼なじみ3人が、娘を殺された被害者、容疑者、警察官として再会する。
登場人物の名前を憶えてないと誰が誰やら最初は混乱するんだけど、筋が見えてからは結構手に汗握るスリリングな展開。一体誰が娘を殺したのか、そんなんアイツに決まってるじゃん、小さい頃に性暴力を受けてるし、イカニモって風貌だし……と観客の偏見をくすぐっておいてのどんでん返し。でも、このどんでん返しがちっとも爽快じゃない。というよりも、あと口がムチャクチャ悪い。警察! わかっとるんやったらもっとしっかり調査せんかい! とエンドロールにツッコミを入れたくなる。
全編「名作」の雰囲気を漂わせているだけに、やっぱりラストが納得出来ない。
(クリント・イーストウッド監督 2003年 アメリカ MISTIC RIVER)
2004.07.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『穴/HOLES』
『穴/HOLES』(04年7月23日鑑賞)
少年達がひたすら穴を掘らされてる少年院みたいな施設、そこにひいひい祖父さんの呪いで何をやってもうまくいかないと運命づけられた少年・スタンリーが送りこまれてくる。もちろん無実の罪。お祖父さんは呪いの話しかしないし、お父さんは足の臭い消し剤の発明に取り憑かれてるイカレポンチだし。スタンリー少年もなかば悟って自分の不幸を運命として受け入れている。ちょっと悟ったような無気力少年かな。
ところで、なんで「穴」なのか。これがひいひい祖父さんの呪いストーリーと関わってくるところから話は一気に滑り出して、冒険と怒濤のラストに滑り込む。
呪いとかいっても、それを解く魔法もないし、悪魔もいない。空も飛ばないし、痛快なアクションもない。
それでも『ハリポタ』の一万倍は良くできた少年映画だと思います。友情や学ぶことの大切さをしっかりと教えてくれて、なんでこんな素晴らしい映画を日本では劇場公開しなかったのか、不思議。
(アンドリュー・デイヴィス監督 2003年 アメリカ HOLES)
2004.07.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『蜘蛛巣城』
『蜘蛛巣城』(DVD 04年7月14日鑑賞)
物の怪の予言を信じて主君を裏切り蜘蛛巣城の主となった男が最後には裏切られて壮絶に死ぬ。シェークスピアの悲劇『マクベス』を戦国時代に翻案して壮大なセットで撮られた一大絵巻。のはずなのに、映像そのものに奥行きというか、深みを欠くのはなぜだろう。
やっぱり芝居小屋で上演されるに相応しい物語だからでしょうね。
しかも、心理劇なんで言葉のぶつかり合いも大事だろうに、主人公その他の武者は絶叫ばっかりで内容が良く聞き取れないのも問題だし。
ただ、ラストの壮絶さは必見中の必見。ネチネチネチネチとした心理劇もこのシーンを用意するための長い長い伏線としてみればそれなりに付き合う価値はある。CGのない時代にどうやって撮ったのか、不思議ではないが、蛮勇ではあると思う。
(黒澤明監督 1957年 日本)
2004.07.23 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『阿修羅のごとく』
『阿修羅のごとく』(04年7月21日鑑賞)
父親にどうも「愛人」がいるらしい、と気づいた三女は興信所に依頼、事実、その女性は愛人、んで、四人姉妹が集まってああでもないこうでもない。
こういう映画がいちばん困る。
5分でわかる駄作じゃないから、ズルずるズルと観てしまう。
しかも1時間半くらいの作品かと思えば二時間超!
しまりのない話にだんだん怒りさえ湧いてくる。
ただ、昭和50年代の雰囲気はよく描けてて、懐かしい。
(森田芳光監督 2003年 日本)
2004.07.22 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『リクルート』
『リクルート』(DVD 04年7月20日鑑賞)
CIAに「リクルート」されたエリート学生が「ファーム」なるスパイ養成施設に叩き込まれ、他人を騙す技術、殺す技術を伝授される。で、そこの教官が言うには、
「この世に善悪があると信じること。そして『善』につく。この世に正邪があると信じること。そして『正』につく」
う~ん、さすがアメリカ、日本人にはそこまでは言えん。
とかって見てると、事態はこの教官の言葉をドンドン裏切りだして、元エリート学生を徹底的に翻弄しはじめる。ちょっと心を通わせた女性の同僚が「2重スパイ」だとか、でもそれが本当なのかどうなのか、話の全体像は最後の最後まで、見えん。だからグイグイ引き込まれて観てしまう。最近のスパイものでは出色の出来。
父親の死因に疑問を持つエリート学生をコリン・ファレルが熱演、アル・パチーノの爛れた魅力と相まって、何とも言えぬアブナイ世界を作り出している。
(ロジャー・ドナルドソン監督 2003年 アメリカ THE RECRUIT)
2004.07.21 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『酔いどれ天使』
『酔いどれ天使』(DVD 04年7月10日鑑賞)
酒飲みの貧乏医者にかかったヤクザの幹部が結核だとわかって生活を立て直そうとして失敗して、そういうドタバタ劇の中に戦後の雰囲気が鮮やかに切り取られている。
ただ、特に男の登場人物はどれも個性が強すぎ、セリフも絶叫のような一本調子に流れがちで「会話」というものが成立していない。これもまた時代というものかも知れないが。
(黒澤明監督 1948年 日本)
2004.07.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『虎の尾を踏む男達』
『虎の尾を踏む男達』(DVD 04年7月9日鑑賞)
鎌倉幕府を打ち立てた源頼朝は対平家合戦の実質的な功労者・義経を疎み、疎まれた義経は藤原秀衡を頼って奥州へと旅立つ。関所関所には義経を捕らえよとの頼朝の触書が回っており、と、歌舞伎の『勧進帳』そのままの映画。ただ、エノケンのトボケた強力(ごうりき)が素晴らしく、小粒ながら清涼感のある怪作に仕上がっている。
(黒澤明監督 1945年 日本)
2004.07.19 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『どん底』
『どん底』(DVD 04年6月30日鑑賞)
石垣の狭間の「どん底」の宿、ふきだまったクズどもの中に、お遍路らしき爺さんが一人、入ってくる。好々爺を絵にしたような人物で、よく人の話を聞き、適切な助言を与え、こわばったクズどもの心をほぐしていく。それでもやっぱり死ぬ人は死に、悪辣な女は悪辣でその企みは当たり、爺さんが消えてしまえばクズだまりはクズだまりに戻ってしまう。爺さんの想い出の残るクズだまりに。
もう少し何とか出来たんじゃないかと思える怪作。
(黒澤明監督 1957年 日本)
2004.07.16 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『白痴』
『白痴』(DVD 04年6月28日鑑賞)
長い……とにかく長い。
いや、長いのはそれだけでは否定的評価につながるものではないけれど、物語がまたつまらない。つまらないのに、長い。
ギリギリの所で人違いがわかり死刑(戦犯)を免れた青年がいて、こいつはショックで「白痴(バカ、とフリガナしてる)」になってしまったのだという(でもどう見たってちょっと人のいいだけの好青年)。これが北海道の故郷に帰って、カネの絡んだドロドロの愛憎劇の中に放りこまれ、ところが、みんなはこいつの純粋さに打たれて少しづつ心を浄化され……。
という話なんだろうけど、今観るとあまりに古くさくて、説得力はまるでない。
(黒澤明監督 1951年 日本)
2004.07.15 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『クジラの島の少女』
『クジラの島の少女』(DVD 04年7月12日鑑賞)
ニュージーランドのマオリ族の小さな村。族長の息子の嫁は難産で死に、しかも出産した双子のうち、生き残ったのは女の子。男の跡取りを望む族長は「次がある」などと、息子の感情を逆撫でするようなことを言い、結局、息子は村を出て行ってしまう。生まれた女の子はマオリの勇者の名である「パイケア」と名付けられ、族長もそれなりに納得して育てていたのに、ある日、いきなり(まあ色々とあったんですが)やはり跡取りは男でないとだめだ、と思い立ち、村の男の子たち(アル中候補のような連中)を集めて伝統教育をやり始める。
族長に突然捨てられた格好のパイケアは、もともと、母と男の跡取り(双子の弟)を殺して生まれたという、暗い想いを抱いて育っていて、族長の理不尽な差別的仕打ちにもジッと耐える。本当に、ジッと耐える。ここがハリウッド的男女同権映画とは違うところ。実に切ない。でも、いくら耐えていてもその才能は隠しきれるものではなくて、結局はハッピーエンドになだれ込むんですけどね。
とにかく役者がみんな凄い。癒し効果はかなりあります。
(ニキ・カーロ監督 2002年 ニュージーランド・ドイツ Whale Rider)
2004.07.14 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『映画 あたしンち』
『映画 あたしンち』(DVD 04年7月11日鑑賞)
雷の夕方、娘と母親の魂が入れ替わってしまった。
娘の体に母親の魂が、母親の体に娘の魂が入ってしまったってわけ。
家事はどうする? 学校は、修学旅行は、クラス会はどうする?
とまあ、設定やストーリーはありがちでベタな内容なんだけど、後半にはグッとはまって観てしまった。
入れ替わることで、ピアスはいかんとかって頭ごなしに叱りつけてた母親は娘の友人関係を理解するし、娘は娘で母親の家事の大変さや過去を知って今ここに生きてあることの感謝を学ぶ。と言っても、話そのものは軽いコメディ。子供を喜ばすクスグリにも満ちていて、何より上品なのがいい。
親子には『ファインディング・ニモ』の2億倍お薦め。
(やすみ哲夫監督 2003年 日本)
2004.07.13 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『コルト マルテーズ 皇帝(ツァー)の財宝を狙え!』
『コルト マルテーズ 皇帝(ツァー)の財宝を狙え!』(04年7月8日鑑賞)
1919年、ロシア反革命勢力の金塊を狙う怪しげな秘密結社とかなんとか。そこにコルト・マルテーズなる謎の男が絡んで、舞台は中国からシベリアへ。
フランスの人気マンガを原作にしたアニメ。よくできた日本の長編アニメと見まがうばかりのクオリティの高い画面や設定のオリエンタルな雰囲気に息を呑みながら、でも話のつまらなさにたった92分が3、4時間にも感じられてしまう。印象としては、まるで大河ドラマの総集編を本編を観ずに観たような。
ただ、絵は極めて美しく、また構図や動きは日本のアニメとそっくりでいて微妙に違い、そういうところを喜んで観る人にとっては十分鑑賞に堪えるだろう。
(パスカル・モレリ監督 2002年 フランス・イタリア・ルクセンブルグ Corto Maltese: La cour secrete des Arcanes)
2004.07.12 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ファインディング・ニモ』
『ファインディング・ニモ』(04年7月6日鑑賞)
ニモって小魚を親魚が探しました(ファインディング)とさ。
ピクサーの作品の中でもこれは最低の出来なんじゃないか?
エピソードの一つ一つがブツ切れだし、キャラクターの性格に必然性がない。
画面も、同じ監督の『バグズ・ライフ』の幻想性には遠く及ばない。
(アンドリュー・スタントン監督 2003年 アメリカ FINDING NEMO)
2004.07.09 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ライブ・フロム・バグダッド 湾岸戦争最前線』
『ライブ・フロム・バグダッド 湾岸戦争最前線』(DVD 04年7月6日鑑賞)
1991年の湾岸戦争開戦時、報道各社が撤退する中、最後までバグダッドに残って例の弾幕イルミネーション映像を撮ったCNNクルーの物語。
何しろ向こうは独裁国家だから情報省のエライさんと仲良くならなきゃ取材も出来ない機材もない。でも仲良くなったら利用される。利用しつつ、利用されつつ、いかに正確な情報を伝えるか。情報の何を切り、何を生かすのか。つくりはB級ながら、権力との微妙な駆け引きの難しさは十分伝わってくる。
そして運命の夜のあの爆撃映像。
ここに予算を取られてB級になってしまったのかと思わせるくらい本格的なシーンになっている。ただ、ただ、CNNさん、ご苦労様。
報道というものを考えさせて佳作。
(ミック・ジャクソン監督 2002年 アメリカ LIVE FROM BAGDAD)
2004.07.07 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『一番美しく』
『一番美しく』(DVD 04年6月27日鑑賞)
黒澤明の国策映画。
戦争中の工場に動員されてきた女学生たちが、増産の割り当てが男子10割に対し女子5割なのは納得がいかないと、7割5分の増産を「要求」(というのもヘンなんだけど)。で、これを達成するまでの、青春の山あり谷あり。
それにしても、これって、「お国のため」を「みんなのため」に替えればそのまま戦後の黒澤映画が出来上がるんじゃないか。エゴイズムの拒絶という意味では、戦中戦後にそれほど思想的な断絶はない。
(黒澤明監督 1944年 日本)
2004.07.06 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『藍色夏恋』
『藍色夏恋』(DVD 04年7月2日鑑賞)
恋のメッセンジャーだったはずなのに、いつのまにかミイラ取りがミイラになったのか違うのか、デキたのかデキてないのか、とにかく危うく不器用な17歳、女の子二人と男の子一人のくっついたりはなれたり。明るい陽光の下、自転車で走り抜ける台北の風が魂を浄化してくれそうな、もどかしくて純情で、静かで純粋な青春映画の傑作。
(易智言(イー・ツーイェン)監督 2002年 台湾・フランス)
2004.07.05 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『ブラザーフッド』
『ブラザーフッド』(劇場 04年7月1日)
朝鮮戦争モノ。「北」の軍隊に追われて避難していた兄弟がいきなり拉致的に徴兵されて前線に送られ、兄は勲章を取って弟を除隊させようと獅子奮迅、でも弟はそんな兄のやり方がだんだん重荷になってきて反抗、兄弟仲は最悪になって撤退中にとっくみあいの兄弟げんか、オイオイ……。
最近の韓国映画は確かに勢いがあって、この映画も「世界」を目指して作られたと思しきスケールの大きさはある。ただし、スケールが大きいのは戦闘シーンだけ。ドラマはバリバリの韓国風男子(ナムヂャ)映画で極めてセコく、しかも、設定その他がものすごく内向き。
だいたい、勘違いしちゃいけないのは、朝鮮戦争はどうひいき目に見てもソ連の後押しを受けた「北」と国連を旗印にしたアメリカとの間の戦争であって、韓国軍はといえば最初の二ヶ月でほぼ壊滅していた(何年もかけて戦争準備をしていた「北」とは違い、韓国の軍など有名無実の存在だった)。だから再建した韓国軍はマッカーサーの指揮下、アメリカ軍の軍事顧問を頂いて作戦行動をしていたはずで、この映画のようにアメリカ人の一人もいないところで単独で「北」と交戦していたとは考えにくい。
結局、これもまた、自らの出生の秘密を消し去りたいという、半島お得意の歴史の捏造の一種なんだな。韓国だけで「北」と闘ったんです、とね。敵である中国共産党の義勇軍の人波は描かれてるし(人海戦術に負けたんだ、とでも言いたげ)、アメリカの影が見えないのは意図的としか思えない。しかも原題は『太極旗を翻して』。
とまあ、こんな内向きの映画でもって「世界」に出て行こうとしているわけだ。地名や戦線の行き来を示す地図一枚をも示すことなく。これできちんと理解して貰おうなどと、チャンチャラおかしいにも程がある。設定の無茶苦茶さを含め、これは韓国映画界が下り坂に入ったことをしめす記念碑的作品ではないだろうか。
ただし、アジア的な人情の勘どころはきちんと押さえてある。また倭色(日本風の美男子)俳優としてヨン様と並ぶウォン・ビンも使ってるし、さすがに役者の存在感はすごいものがある。ストーリーよりも役者のオーラに触れたい観客には麻薬のような映画だろう。そういえば、こういう役者のオーラが画面からほとばしってる映画、最近の邦画にはなくなったし。このあたりの事情、「韓流」(韓国ブーム)の深層としてそのうち探ってみたい気がする。「文化力の日本、個人力の韓国」くらいの感じで。
まあ、駄作ではなく、それなりのパワーはあるから、アジアでは売れるかも知れない。日本で大ヒット、という触れ込みで。
(カン・ジェギュ監督 2003年 韓国)
2004.07.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『素晴らしき日曜日』
『素晴らしき日曜日』(DVD 04年6月18日鑑賞)
若い男女の日曜日。男は戦争から帰ってきて世をすねて、でも、女は戦前と変わらず前向きに将来のことを考えている。そのズレは街を歩くうちに段々と大きくなって、男の下宿でついに破局、するかと思えばすぐに修復。また二人で街に出て、色々あって、聞こえるはずもないシューベルトの『未完成』が聞こえてきて、そんなことあり得ないのに、音楽の力でつい感動させられてしまった。
戦後の焼け跡の光景がとてつもなく懐かしい。
(黒澤明監督 1947年 日本)
2004.07.01 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ヴァイブレータ』
『ヴァイブレータ VAIBRATOR』(DVD 04年6月27日鑑賞)
コンビニで見つけた男のトラックに乗りこんで肌を合わせ、以後「道連れ」になってついて回る。この女「食っては吐き」の摂食障害があってどこか危うげだし、男も中学中退とかってわけのわからないことを言いつつ、ホントなんだか嘘なんだか、過去の悪行を面白おかしく語ってみせる。ストーリーっちゃ、それだけ。
でも良い映画です。寺島しのぶが例えようもなく名演だし、大森南朋もいつもながら素晴らしい。
同じ監督の『東京ゴミ女』でもそうだったような、人とうまくつながっていけない大都会の女性の心理が実に細密に描かれていて、切なく、爽やか。
こういう種類の傑作は時代的な制約が大きいので、観るならすぐに観た方が良い。
(廣木隆一監督 2003年 日本)
2004.06.30 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『女はみんな生きている』
『女はみんな生きている』(DVD 04年6月27日鑑賞)
「助けて」と駆け寄ってきた娼婦を無視した夫婦のうち、妻は罪悪感から娼婦を捜し出して献身的に世話をする。ところが危篤状態を脱してリハビリに入った娼婦のまわりには怪しげな男たちが忍びより、これを避けるために妻が娼婦と逃げ込んだ先は夫の実家。以後、懸命に「生きている」女たちの世界と、女を食い物にする男の世界とがコミカルに対比されつつ描かれる。傑作。
イスラム社会での女性の地位の問題なども絡めて実にテンポ良くまとめられ、確かに男からみたら原題の通り「CHAOS(混沌)」なんだけど、女性からは邦題「女はみんな生きている」の方がピッタリくる。
この監督には『赤ちゃんに乾杯!』という名作がありますが、個人的にはこれ以上の傑作でした。
(コリーヌ・セロー監督 2001年 フランス CHAOS)
2004.06.29 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
ビデオ評『226』
『226』(VHS 04年6月12日鑑賞)
言わずと知れた皇道派将校のクーデター未遂事件。こうしてみれば若いよ。「財閥解体、土地改革」を掲げ、「君側の奸」を討とうと決起した青年将校たち、みんな。占拠した建物の中はまるで新左翼のバリケードみたいだし。要求も似通ってるし。革命、革命って絶叫するのも騒がしいし。
でも新左翼と違ってる点がいくつもある。まず、味方に銃を向けない。それと兵への思いやり。何も知らずについてきた兵たちに自分たちと同じ罪を着せることは出来ないと、結局、将校たちは皆を原隊に帰す。
なんだかひどく悲しい気分になる映画。ただ、事件だけを淡々と描いてるんで、多分、予備知識のない人は、これだけを観たんじゃ何もわからないと思う。
(五社英雄監督 1989年 日本)
2004.06.28 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『中国の鳥人』
『中国の鳥人』(DVD 04年6月11日鑑賞)
サラリーマンとその借金を取り立てに来たヤクザが中国・雲南省の山奥に宝石の鉱脈を求めて幾千里。山あり谷あり、最後はイカダでやって来た静かな村で鉱脈の在処を示す「石」は見つかったんだけど、こんどは二人ともが「自分」をなくしてしまう。外部と接触することのない平和な村で「鳥人」になるため日々訓練している子供たちの姿、そして子供たちに飛行術を教える不思議な少女、霧の中に浮かぶ村の風景も幻想的で、この二人ならずとも自分をなくしてこの世界に浸っていたくなる。多分、この監督の最高傑作。
(三池祟史監督 1998年 日本)
2004.06.25 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『金環蝕』
『金環蝕』(DVD 04年6月11日鑑賞)
ダム建設にまつわる公団とゼネコン、国会議員の癒着・汚職と、これを興味本位に追いかける腐った老金融屋に総会屋崩れのような業界紙の社長もからんで金金金のドロドロドロ。不正入札の方法も丁寧に描かれていて、結構良くできた政治劇。政治の魔力を「金」だけで説明しようとする「左翼」的な枠組が今となっては鼻につくものの、スケールは大きいし、なにより役者がすごい。宇野重吉の金融屋はハマリまくりで、中村玉緒の芸者の凛とした色っぽさ、今からはちょっと想像もつかない。。
この監督はあまり好きじゃないんだけど、邦画の傑作の一つだとは認めよう。
(山本薩夫監督 1975年 日本)
2004.06.24 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『パンチドランク・ラブ』
『パンチドランク・ラブ』(DVD 04年6月16日鑑賞)
トイレの詰まりを取る吸盤付き棒を売ってるさえない男がある日、早朝に出勤してハルモニア(ピアノの小さいようなヤツ)を拾い、女に出会い、その女は実は姉が紹介しようとしていた女性で、この女性を追いかけてハワイに行って結ばれて、それで戻ってきたら前に電話してひどい目に遭っていたテレホン・セックス業者が待ちかまえてて、でも一生に一度の恋に全身にみなぎる力はそんな連中を寄せ付けるはずもなくて、とまあ、ストーリーはどうと言うこともない。けれど、姉7人に囲まれてちょっと変人に育ってしまった主人公のはじめての恋が暖かく描かれていて、見終わって少し幸せな気分になる。
冒頭の事故シーンには、ありえんでしょ~~~って叫びそうになるけど、基本的には静かで極彩色の不思議なおかしみに満ちている。一種の不思議な傑作。
(ポール・トーマス・アンダーソン監督 2002年 アメリカ Punch-drunk Love)
2004.06.23 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『厳戒武装指令』
『厳戒武装指令』(DVD 04年6月15日鑑賞)
チェチェンもの。
孤児院で育った男が志願してチェチェンに行き、捕虜になり、脱出に成功したものの、一緒に捕まった友人はトラップにかかって死んでしまう。帰還して、こんどはそのアジト攻撃に参加、またもや勇敢に戦ってゲリラのボスを生け捕ったのだが、ところがこのボスはもとアフガンで闘った旧ソ連兵で、主人公の上司とは戦友なのだった。一方、手柄を立てた主人公は休暇を得て友人の家に行き、手紙でしか知らなかった友人の妹と淡く心を通わせる。
筋立ては古く、戦闘シーンも月並みなんだけど、何か心に残るモノがある。もちろん、ロシアから見たチェチェンという視点は一貫してるんで、ゲリラは悪者、ロシアの若者は正義漢なんだけど、それでも底流には内戦の無意味さへの問いが流れてる、ような気がする。反戦でも、好戦でもなく、なんだか不思議な一作。
(ニコライ・スタンブラ監督 2002年 ロシア)
2004.06.22 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『デイ・アフター・トゥモロー』
『デイ・アフター・トゥモロー』(劇場 04年6月18日鑑賞)
地球温暖化の影響で溶け出した南極の氷が地球規模の気象異変を引き起こし、高緯度地方はあっと言う間に氷に閉じこめられてしまう。ニューヨークも例外じゃない。巨大な高潮が押し寄せて水浸し、そして氷漬け。南部諸州のアメリカ人はメキシコへと越境、新しい大統領はこれまでのアメリカの姿勢を詫びつつ、宇宙ステーションから見た地球はこれまでになく美しい――。
お話しはもうどうでもよくて(はぐれモンの科学者=父親の警告を権力者が無視して危機が訪れて世間はパニクって崩れかけた家族は父親の超人的努力で見事再生しましたとさ)、とにかく映像の迫力だけを堪能しまくる2時間超。安易な解決策を示さないところにも好感が持てる。でも、役者はみなショボい。ものすごい設定と映像なのに、このドラマ部分のショボさ。まるで超豪華な碁盤で五並べをしているような、なんともちぐはぐな印象を受けるんだけど、公平に言って、もっと観られていい映画だと思う。
主人公は「自由の女神」だと思って観れば許せるんじゃないかな。
で、思ったのは、やっぱりキリスト教のカタストロフって「天」から下ってくるんだなってこと。日本人にとってのこの世の終わりはまず「地震」や火山の噴火から始まると思うんだけど。それにしても――日本人のオヤヂは家族を顧みずに飲み屋に寄って雹にぶち当たって(罰が当たって?)死に、アメリカの父親は息子を助けに何百里。描き方(描かれ方)としてこれでいいのか。
(ローランド・エメリッヒ監督 2004年 アメリカ The day after tomorrow)
2004.06.21 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『フリーダ』
『フリーダ』(DVD 04年6月14日鑑賞)
シュール・レアリズムに近い作風を、シュール・レアリズムとは独立に築き上げた女性画家、フリーダ・カーロ。眉毛つながりの自画像が忘れることの出来ないインパクトを見る者に残す、例のメキシコの画家。少女時代にバス事故で全身を骨折して、それに引き続く無茶苦茶な手術の数々はこの人から痛みのない体の記憶を失わせた。絵だけが救い。後に同じ画家のディエゴ・リベラと結婚もしたけど結構奔放で、トロツキーがメキシコに亡命してたときフリーダと不倫してたのは有名な話。映画の終盤にはこのエピソードもちょっと出てくるんだけど、トロツキーが全然狂的じゃないんでイメージ狂う。でもまあこんなもんかな。挿入された実験的な映像には少々苦笑しないでもないし、何より英語が変なんだけど、大戦間の左翼的な知的雰囲気は良く描けてる。
(ジュリー・テイモア監督 2002年 アメリカ Frida)
2004.06.18 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ホーリー・スモーク』
『ホーリー・スモーク』(DVD 04年6月15日鑑賞)
インドでカルト宗教に出会ったしまった娘をオーストラリアに連れ戻し、アメリカからは洗脳を解くカウンセラーを呼んでくる。ところが手違いで助手は来ず、カウンセラーは一人で作業に当たることになる。これが間違いのモト。洗脳は解けても二人とも「愛」の泥沼にハマっちゃもっと厄介じゃん。
最初はバカ映画の一種かと思った。だって、シチュエイションといい、登場人物といい、安っぽくてバカだから。でも、娘とカウンセラーが砂漠の小屋で二人向き合うあたりから、人はなぜカルトにハマるのか、実存と神の問題に「愛」が絡んでなかなか一筋縄じゃいかない話に引き込まれ、身につまされながら観てしまった。
これを観て、バカ女と中年男の気色の悪い肉弾映画、駄作中の駄作、だと思った人、あなたはこれからもカルトとは無縁な幸福な人生を送ることでしょう。
もちろん傑作とは言わないが、信仰と「愛」を考えさせる問題作ではある。
(ジェーン・カンピオン監督 1999年 アメリカ・オーストラリア holy smoke!)
2004.06.17 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『キル・ビル vol.1』
『キル・ビル vol.1』(DVD 04年6月15日鑑賞)
復讐の鬼と化した女が謎の暗殺団の首領たちを追いつめて切る、斬る、伐る。舞台は途中から日本に移り、ヤクザの親玉となった女を追いつめて、その手下たちを切って、斬って、伐りまくる。手が落ち、足が離れ、首が飛び、血がビュービュー出て、飲み屋はまるでコロシアム、実にスポーツのような虐殺です。警察はいったい何してるんでしょう。
けっきょく……日本のヤクザ映画を観すぎたイカレポンチがカネにもの言わせてハリウッドでマジでコピーを作ったらこうなりましたって感じ。監督の日本への愛はビリビリ感じるんだけど、こういう愛され方をされてもナァって……続編で話は進むんだろうか。
(クエンティン・タランティーノ監督 2003年 アメリカ Kill Bill vol.1)
2004.06.16 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『北京ヴァイオリン』
『北京ヴァイオリン』(DVD 04年6月13日鑑賞)
ヴァイオリンの天才少年13歳。父子家庭。コンクールに出場するため父と一緒に田舎から出てくる。ところが北京は拝金の巷と化していて、コンクールは出来レース、本当はブッちぎりで一位のはずがお金がないもので五位入賞、「入賞させただけ審査員にも良心があるみたいだな」などと音楽学校の教員がぶつくさ言っているのを聞きつけた父親、その教員に無理矢理息子を弟子入りさせる。ところがこの教員は見かけや言動の通りちょっと変わったヤツで、テクニック的なことは何も教えない。どころか、ある時はレッスンと称して自分の汚れた楽譜を拭かせたりもする。天才少年は反発するが、実際にはこの先生がいちばんいい師匠だった、のかもしれない。結論は出ていない。
とにかく金、かね、カネなんだな。少年を温かく見守る女も「愛人」を稼業にしているみたいだし、二人目の実力者みたいな先生も結局はカネで少年を縛ろうとする。唯一カネから自由な最初の師匠は薄汚れた貧乏人だし。
いったい革命ってなんだったんだ? と、最近の中国映画を観てて本当にそう思う。貧富の差の拡大、裏社会の横行等々、まるで旧中国じゃないか。つーか、革命ってそういうものなんだな。と、改めて思う。
(陳凱歌監督 2002年 中国)
2004.06.15 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『化身』
『化身』(DVD 04年6月10日鑑賞)
オッサンの文芸評論家が若い女にのめり込んで振られました。
――身につまされる。
というのは嘘。若い女は金がかかりそうなんで嫌だ。それに、最初は「鯖の味噌煮」だったかもしれんが、馴れ初めが「おねだり」だったような女の要求はエスカレートしていくってのが通り相場でしょ。しかも男はそれを煽ってる。嫌だねぇ~金のある男は。
これ、公開当時、劇場で2回観たような記憶がある。なのに、今回、DVDを再生してて、冒頭の藤達也と阿木燿子の熟年バディ肉弾戦の気味悪さに観るのをやめそうになった。若い黒木瞳のヌードも昔は清楚に感じられたんだけど、今回はそれがひどく貧祖に見えて、なんだか自分もひどく歳を取ったもんだと悲しくなった。あ~やだやだ。
(東陽一監督 1986年 日本)
2004.06.14 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『櫂』
『櫂』(04年6月9日鑑賞)
大正時代、女衒に嫁いだ女の踏んだり蹴ったりの半生記。垢まみれの女の子を拾ってきて「育てろ」と言われ、今度は妾の子を引き取ってきてこれもまた「育てろ」。夫には女があちこちにいて、家にも帰ってこなくなる。こんな仕打ちにもある程度までは耐える。でも、まわりみんなが「妾は男の甲斐性じゃきに(高知弁で)」、とかって夫の肩ばかり持つものだから意地になって出て行って、袋貼りの内職で生きてたりする。一方の男は男で、自分にはこの妻しかいないとわかっていながら素直になれず、意地を張り、結局、二人とも互いに相手をコントロールしようと藻掻く「実存の地獄」に堕ちていく。
コミュニケーションが成立しない、異常な、けれどありがちな「愛」の形を描いて佳作。
(五社英雄監督 1985年 日本)
2004.06.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『姿三四郎』『続姿三四郎』
『姿三四郎』『続姿三四郎』(DVD 04年6月7日鑑賞)
明治の中頃を舞台に「柔術」と「柔道」のせめぎ合いを描いた2作。
三四郎はとある柔「術」家に弟子入りしようとするのだが、この師匠が闇討ちしようとして返り討ちになった柔「道」家に惚れ込んで即、こちらの弟子になる。以後、三四郎は実直な柔「道」家として成長しつつ、ことあるごとに野の柔「術」家をぶちのめす。『続』は物語の中に太平洋戦争の敗戦を経た西洋への反骨がちょっとだけにじみ、まずは三四郎はボクサーをぶちのめし、ついには空手家を、その心までをも打ち砕く。
懐かしいスポ根の源流。
ただその懐かしさに価値がある。『姿三四郎』の神社の階段での淡い心の触れ合いなど、今はもう誰も撮ることが出来ない。あんな詩のある風景、もう誰の心にも残ってはいまい。
(黒澤明監督 1943年 1045年 日本)
2004.06.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『生きものの記録』
『生きものの記録』(DVD 04年6月5日鑑賞)
原水爆の放射能に怯える男が全てを売り払ってブラジルに移住しようとする。もちろん家族は反対。本妻側の家族はもちろん、愛人たちの家族も反対。で、家裁に調停を依頼する。男を準禁治産者にして自分たちの財産を守るために。
核状況に対し何も出来ない個人の焦りを描いて、この男と同じく、物語そのものがひどく空回りしているような感じがする。何より、現代人はもうこの男の焦りを共有出来ない。言ってみれば、十何年か前、小惑星が衝突するからって何もかも捨てて石垣島に移住しようとしたオウム真理教の物語のような。
実際には核兵器は映画公開当時よりも増えているというのに。
(黒澤明監督 1955年 日本)
2004.06.09 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『アダプテーション』
『アダプテーション』(DVD 04年6月2日鑑賞)
この監督は「進化」が好きなんだね。『ヒューマン・ネイチャー』もテーマは「進化」だったし、この映画の「アダプテーション」も生物学で言えば「適応」。キリンの首が伸びたりとか、そういうの。
で、『マルコヴィッチの穴』で大当たりを取った脚本家が、それでも映画業界に「適応」できず、もがき苦しみながら作品を一本完成させるメタ映画。かと思って観ていれば、だんだんと話はおかしくなっていく。原作の蘭泥棒の本の世界が歪みつつ現実に侵入してきて、知恵を借りに行った大物シナリオライターの言う通り、カーチェイスとガンアクションのハリウッドの映画に「進化」する。つまり、この脚本家も立派に映画業界に「適応」できましたってこと。
構成とか面白い部分は結構あるんだけど、でもいちばん凄かったのは交通事故のシーン。これまでみた映画の中で間違いなく最もリアルで恐ろしい。このシーンだけ交通安全教育に使ったらいいと思う。
(スパイク・ジョーンズ監督 2002年 アメリカ Adaptation)
2004.06.08 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『セブンスアニバーサリー』
『セブンスアニバーサリー』(DVD 04年6月2日鑑賞)
失恋すると石が産まれるんだって。いえ、単に尿道結石が出てくるだけなんだけど。最初に産んだ女の子の石が綺麗だったモンだから、なんだかそれにものすごい値段が付いたりして、世の中は結石ブーム。石を取るためだけに失恋する女の子さえ出てきたりする。そうして、最初に石を産んだ女の子の人生はドンドンどんどん狂っていく。
消費社会とかブルセラブームとかを皮肉りつつ結構お洒落にまとめてる。んだけど、何か一つパンチと爽快感に欠ける。何か無理があるという感じ。だって、なんだかんだ言ったって、所詮は尿道結石だもん。
(行定勲監督 2003年 日本)
2004.06.07 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『悪い奴ほどよく眠る』
『悪い奴ほどよく眠る』(DVD 04年5月30日鑑賞)
公団と政治家の汚職を巡る復讐劇。下敷きは『ハムレット』。
秘密を背負って自殺した男の「私生児」が戸籍を誤魔化して父親の上司の娘と結婚し、秘書となって内部から汚職の秘密を探っていく。
男の正体がばれてからがあっけない。
ラストもとってつけたよう。
主人公役は三船敏郎。じゃなくてもいいんじゃないか。というより、役に全然はまってない。
(黒澤明監督 1960年 日本)
2004.06.04 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『キューティーハニー』
『キューティーハニー』(劇場 04年6月1日鑑賞)
もうとにかく映像と音楽のリズムが新しくて懐かしくて、秘密結社だとかサイボーグだとか、オトナにとってはバカバカしいヨタ話のはずなのにこみ上げてくる嗚咽をこらえるのに必死だった。片桐はいりのゴールド・クロー、凄すぎ。ブラック・クローの及川光博、はまりすぎ。新谷真弓のスカーレット・クローには言葉もない。それより何より、サトエリのハニー、ええなぁ~~~こんなコが近くに居ったら一生落ちこむこともないやろな。こんなに良い役者だとは思わなかったよ、サトエリ。つーか、ここまで演技をつける庵野監督、すごいよ。ちょっと見ない間にここまで偉くなってるとは。『ラブアンドポップ』をデジカメで撮ってた頃がなんだかひどく遠いよ。配給はワーナーだし。
ただ、ハニーのイメージが原作のハニーじゃないんだよな。オタク的に言えば、実写版の『万能文化猫娘(アニメ。テレビ版の方ね)』って感じなんだ。サトエリのハニーはど~~~~見てもヌクヌク。もちろん、それが良かったんだけど。バカっぽくて、でもフッと切ない表情を見せたりして。やっぱ、庵野監督、すごいよ。
何度でも観たい。何時までもひたっていたい。これはもう『千と千尋の神隠し』と同程度かそれ以上の麻薬かもしれない。ただ、元気になるのは絶対に『ハニー』。落ちこんでる人は絶対に観るべし。
ストーリーは……忘れた。
(庵野秀明監督 2004年 日本)
2004.06.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『椿三十郎』
『椿三十郎』(DVD 04年5月28日鑑賞)
藩の上層部の不正を知った青年たちと謎の浪人とが組んで、コソコソ、チョロチョロと権力者たちを煙に巻き、陰謀を頓挫させ、改革を成功させる。
痛快!
の一言。
若気の至りを戒めつつ、でも自身の若気の至りから若侍たちに深入りしていく椿三十郎を演じて、三船敏郎、極めつけの名演。表情と、立ち回りでの体のキレが凄まじい。
(黒澤明監督 1962年 日本)
2004.06.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック
DVD評『赤ひげ』
『赤ひげ』(DVD 04年5月27日鑑賞)
幕末、無料で医療を提供している養生所、そこの所長が通称「赤ひげ」。患者のことを第一に考える独裁者で、どうもお上とはうまく行っていないらしい。そこに長崎で蘭学を学んだ青年医師が、まるで騙すようなやり方で送りこまれてくる。こいつにとって、かっこわるい制服その他、養生所の全てが気に入らない。拗ねる。禁止された酒をかっくらってふて寝する日々。ところが患者や「赤ひげ」の人間性に触れる中で青年医師は医師としてだけではなく、社会的にも大人になっていく。
成長物語のお手本のようなお話し。前半は極めてダルイ。ちょっと説経臭い。
(黒澤明監督 1965年 日本)
2004.06.01 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (5) | トラックバック
DVD評『ブロンド・ライフ』
『ブロンド・ライフ』(DVD 04年5月23日鑑賞)
地方局のキャスターをしてる女がホームレスの予言者にあと一週間で死ぬぞって言われ、動揺しまくって野球選手の恋人とも別れ、それで、それまでいまいちソリが合わずにケンカばかりしていた同僚の男に説経されて見直した末にこいつとくっつく。ストーリーはまるでベタな少女マンガ。「予言」の処理をどうするのか興味深くて最後まで観たんだけど、う~ん、今ひとつ納得出来ない。映画を観たという充実感に決定的に欠ける。
(スティーヴン・ヘレク監督 2002年 アメリカ LIFE OR SOMETHING LIKE IT)
2004.05.31 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『西洋鏡』
『西洋鏡』(04年5月25日鑑賞)
1902年、清朝末期、イギリスからやって来て「活動写真」館を開いたレイモンド。もちろんうまく行かない。誰も「活動写真」など知らないから。ただ、写真館の徒弟・リウだけはその魅力にとりつかれ、結局、全てを捨てて映画に没頭することになる。
リウの手助けもあって次第に「活動写真」なる新娯楽に走っていく民衆、それを苦り切った目で眺める京劇の巨匠。の娘がリウの恋人という絶妙の人物配置で、ありがちな『はじめて物語』が様々な緊張を孕んで展開する。カメラワークが平板かなと思ったが、これはこれでクラシックな印象を与えて吉。
(アン・フー監督 2000年 中国・アメリカ SHADOW MAGIC)
2004.05.28 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ザ・メキシカン』
『ザ・メキシカン』(DVD 04年5月21日鑑賞)
怪しげな組織のパシリをしてる男がその組織から抜けるためにやる最後の仕事は、メキシコに行って聖なる銃を持ってくること。ところがその銃を持つ交渉相手は全く偶然に目の前で死んでしまい、ここから元恋人を巻き込んだ、けたたましくもバカバカしいロードが始まってしまう。
いくつかの組織や個人が勝手に動いて話をややこしくしていって、その度に聖なる銃「メキシカン」を巡る説話がクルクル変わる。ここは少し面白かったかな。
そんなもん。
(ゴア・ヴァーヴィンスキー監督 2001年 アメリカ MEXICAN,THE)
2004.05.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『神に選ばれし無敵の男』
『神に選ばれし無敵の男』(DVD 04年5月24日鑑賞)
1932年ポーランド。ユダヤ人の街。これだけで筋書きが見えてしまう。ような映画じゃない。話はナチスが政権を取る前に終わる。唐突に。
鍛冶屋の息子・ジシェはその怪力を買われてベルリンで見せ物になる。アーリア人の英雄「ジークフリート」と名前を変えて。でもある日、ベルリンにやってきた弟は兄の姿に涙を流し、恥じたシジェはユダヤ人として名乗りを上げる。
「今日からオレはサムスンだ」
まだナチスは政権を取ってない。ユダヤ人とナチスは対等に衝突してる。でもシジェは不吉な夢を見る。なんか、とんでもないことが起こりそうだ、と。
最後がバカバカしいほどあっけない。でもこれは史実だから仕方ない。
(ヴェルナー・フェルツォーク監督 2001年 ドイツ・イギリス INVINCIBLE)
2004.05.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密』
『ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密』(DVD 04年5月21日鑑賞)
ややこしい母親なんです。アル中だし。人をコントロールしようとするし。どうしようもない。でも、こんな母親にも「血」の結束で結ばれた親友たちがいる。それが「ヤァヤァ・シスターズ」。
作家になってこの母親を恨むようなコメントを出した娘を母親は逆恨み、それで娘を「ヤァヤァ・シスターズ」が拉致・監禁、様々な想い出の品を駆使して母娘の関係を取り持とうとする。でも娘もなかなか強情で、そう簡単に心は開かない。どれだけひどい母親だったか、そして自分がどれだけいい子になろうとしてつらい想いをしたか……。まあそりゃその通りなんだけど、でも一つだけ、アンタが誤解していることがあるよ、とこうして「ヤァヤァ・シスターズ」の秘密兵器が炸裂する。
壊れた女の壊れた家庭が幼なじみの力を借りて再生していくっていう、現代のおとぎ話。ちょっと癒される。
(カーリー・クーリー監督 2002年 アメリカ DIVINE SECRETS OF THE YA-YA SISTERHOOD.)
2004.05.25 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評追加『ラン・ローラ・ラン』
『ラン・ローラ・ラン』(DVD 04年5月20日鑑賞)
何か怪しげな取引の代金を地下鉄の中に置き忘れて12時までに同額を用意しないと殺される男。の恋人ローラが金策に走る、走る、走る。つっても、金策の相手はパパで、銀行の頭取らしい。ところがパパは愛人と痴話げんか、金どころじゃない。金を用意出来ないままに駆けつけた待ち合わせの場所に恋人はもうおらず、近くのスーパーに押し入って強盗の真っ最中、で、これを止めもせず、警備員を殴って銃を奪い、強盗の手伝い。でもスーパーは警察にすでに包囲されていて……。これが第一の選択。あと二つ、微妙なタイムラグのある選択があって、それぞれ違った結果が訪れる。
人間の運命が微妙な時間差でものすごく変化してしまうってことを実に巧みに映像化していて、傑作。
(トム・ティクヴァ監督 1998年 ドイツ Lola Rennt)
2004.05.24 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ブルース・オールマイティ』
『ブルース・オールマイティ』(DVD 04年5月18日鑑賞)
涜神の言葉を吐いたブルースが神に復讐される。全知全能の力を与えられて。でも、それが復讐だとも知らず、ブルースはアホな奇跡ばかり起こす。神は言う、何でも出来るけど、個人の意志だけは変えられない、と。だって自由意志だもん。これがキリスト教ってもの。この世は全能の神の意志と個人の自由意志のせめぎ合い。んで、ブルースが恋人の気を引こうとして引き起こしたアホな奇跡のせいで世界はしだいに壊れていく。それにしても、人間はだめなのに犬は操れるというこの不可思議。いや、不可思議じゃないんだよな、キリスト教では自由意志を持った魂は人間にしか宿らないんだもの。当然か。それで色々あって、結局、ブルースは神の力の重さに耐えきれずに自滅、するのかどうか。
ブルースは地方局のキャスターで、けっこうけたたましいコメディなんだよ。でも扱ってるテーマはキリスト教の核心に触れていて、重い。
ちょっと日本人には理解不能。良くできたコメディと受け取られかねない。
(トム・シャドヤック監督 2003年 アメリカ Bruce ALMIGHTY)
2004.05.19 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『真夜中の虹/浮き雲』
『真夜中の虹/浮き雲』(04年5月14日鑑賞)
どん底不況のフィンランド。どちらも失業シーンから始まってて、どうしようもなく暗い。潰れたレストランの再建物語で終わる『浮き雲』にはまだ明るさが残ってるけど、主人公が冤罪のような裁判で刑務所に放りこまれて脱獄して行く先も定かではない船に乗りこんでいく『真夜中の虹』にはなんの救いもない。
最後まで観てしまったのはなんでだろうと考え込むような二作品。
カウリスマキ、畏るべし。
(アキ・カウリスマキ監督 1988年/1996年 フィンランド )
2004.05.18 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『マイ・ビッグ・ファット・ウエディング』
『マイ・ビッグ・ファット・ウエディング』(04年5月13日鑑賞)
けたたましくておせっかいなギリシャ系移民家族の中で30過ぎて独身の女。父親は早くギリシャで男を見つけてこいと口癖のように言う。ところが女は普通の(というか、WASPらしき)男に一目惚れ。男もまた女に一目惚れで、ここから異文化の軋轢というか衝突のドタバタ喜劇が始まって、最後はおきまりのハッピーエンド。山も谷もない。けれどその分安心して見ていられる。
観てて、なんだか結婚当初のことを思い出しました。私は関西人の中に紛れ込んだ九州人。そのうち『マイ・ビッグ・ファット・関西ウエディング』を書こうかな。
系図的には『ラスト・サムライ』なんかと同じ「異文化癒し」系、アングロ・サクソンの男が異文化に触れて癒されます。そう言えばどちらもおなじ「ズウィック」監督ですね。『ラスト・サムライ』はエドワードさんですが。親戚でしょうか。
(ジョエル・ズウィック監督 2002年 アメリカ My Big Fat Greek Wedding)
2004.05.17 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ/レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う』
『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ/レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う』(DVD 04年5月12日鑑賞)
極端なリーゼントとつま先が細長ーくとがったブーツ。ひと目見たら忘れられぬ出で立ちのまま、ツンドラの地から成功を夢見てアメリカに渡ったロックバンド「レニングラード・カウボーイズ」。そのアメリカからメキシコに到るロード・ムービーが『ゴー・アメリカ』。メキシコで成功をおさめテキーラによって落ちぶれ果てて故郷に帰ってくるまでが『モーゼに会う』。
セリフも説明もほとんどなく、まるで無声映画のように、字幕と音楽だけで面白味が醸し出されていて、なんというか、爆笑とはほど遠い、奇妙なおかしみと皮肉に満ちている。
怪作中の傑作。
(アキ・カウリスマキ監督 1989年/1994年 フィンランド・スウェーデン/フィンランド Leningrad Cowboys Go America/Leningrad Cowboys Meet Moses)
2004.05.14 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『私が女になった日』
『私が女になった日』(04年5月11日鑑賞)
イランでは9歳になったとたんいきなり「女」として扱われ、男の子たちと自由に遊ぶことが出来なくなる。で、ある女の子が友達の男の子と遊べる最後の一日の物語。これが第一話。
晴天下、海辺の道、自転車で駆け抜けていく黒い女たち。その中の一人、離婚を決意した女を、思いとどまらせようと親戚の男たちが入れ替わり立ち替わり追いかけてくる。これが第二話。
遺産が入ったからと、無茶苦茶な買い物をする老婆。買ってきた家具や家電を海辺に並べ、ポーターの男の子に繰り返し、繰り返し、愚痴をこぼす。私には何もないの、と。これが第三話。
第三話のラストに第一話と第二話のオチがつながって、深い、深い、深い感動がやってくる。
やっぱりイラン映画の良いものは良い。傑作。
(マルズィエ・メシュキニ監督 2000年 イラン The Day I Became a Woman)
2004.05.13 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評追加『シェフと素顔とおいしい時間』
『シェフと素顔とおいしい時間』(04年5月10日鑑賞)
ドゴール空港はゼネストでマヒ。女はうっかり自分の携帯をトイレに流し、仕方なく近くにいた男の携帯を借りる。ここから二人の微妙な心理劇が始まる。
メイキャップ・アーチストの女は夫を捨ててきたばかり。元シェフの男は元妻とヨリを戻そうとあせっている。この二人がちょっとしたいきさつで同じ部屋に泊まることになり、でも男は神経質、女は大胆かつおおらか過ぎてすれ違い、また話せば話すほど互いの人生観がカンに障る。それでも二人は次第に引かれ合って、とまあ、現実にはあり得ないけど結構楽しめる大人の寓話。父親との葛藤から心を閉ざした元シェフがこの一夜を経て実家のレストランに向かうシーンは感動的で、この感動の質はハリウッドとは若干違う。
シナリオが実に良い。
(ダニエル・トンプソン監督 2002年 フランス DECALAGE HORAIRE)
2004.05.12 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ほえる犬は噛まない』
『ほえる犬は噛まない』(DVD 04年5月9日鑑賞)
しがない大学講師が犬の鳴き声が気になって気になって同じ団地の本当は飼ってはいけない犬を誘拐して殺そうとして出来なくて地下のボイラー室に閉じこめていたら管理人がその犬を食ってしまって――と、どことなくユーモラスで奇怪で、ハートウオーミングな不思議なお話。最後、主人公が教授になるための賄賂十五万ウォンの出所がほろ苦く、韓国社会の厳しさを描いて切ない。
原題は『フランダースの犬』。特に意味はないそうで、単に監督が猛烈な日本びいきだってだけの話。
傑作。
(ポン・ジュノ監督 2000年 韓国)
2004.05.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『デス・フロント』
『デス・フロント』(DVD 04年5月9日鑑賞)
1917年、第一次大戦中、西部戦線。ドイツ軍と対峙するイギリス軍。
激戦の中、毒ガスか霧かにまかれて本隊から離れた一隊10人は、偶然、ドイツ軍の塹壕を見つけて占拠する。その塹壕の中には数人の生き残りドイツ兵がいたものの、死体ゴロゴロのひどい状態。でかいネズミはいるし、汚物とも何とも知れぬ水たまりには血も混じって、そこにまた冷たい雨が降り注ぐ。ここで援軍を待つと大尉は言うのだが、無線でも連絡は取れず、しかも仲間は次第におかしくなっていく。捕虜にしたドイツ兵は言う、この塹壕は変だ、仲間もみんな殺し合ってしまった、と。で、実際、その通りになって――。
中盤まで登場人物の個性が分からなくて何が何やら。でもそれなりに怖くて完成度はマアマア。ラストはよくわからん。
(マイケル・J・バセット監督 2002年 イギリス DEATHWATCH)
2004.05.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ホワット・ライズ・ビニース』
『ホワット・ライズ・ビニース』(DVD 04年4月19日鑑賞)
隣人は夫婦仲がよくないようだ。奥さんは一人泣いてたりする。
この思い込みが一気に加速して、隣の奥さん最近見ないし、きっとご主人に殺されたに違いない、という妄想にまで到る。その妻をなだめつつ、でも夫は何か隠している、ような感じ。なんか嫌な雰囲気を抱えつつ、魔術の本や、コックリさんみたいな不気味なアイテムも登場して、物語は次第にヒッチコック映画の世界になだれ込む。
どんでん返しは凄まじいし、狂気としての「水」の描き方は秀逸なんだけど、なんかイマイチ怖くない。
(ロバート・ゼメキス監督 2000年 アメリカ What Lies Beneath)
2004.05.07 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ホテル・ハイビスカス』
『ホテル・ハイビスカス』(DVD 04年4月25日鑑賞)
オキナワン・コミックにハマってた時期があって、そのとき注目してたのがこの映画の原作『ホテル・ハイビスカス』(仲宗根みいこ作)。父親の違う三人の子供とお母さんお父さんの住む「ホテル・ハイビスカス」を舞台にした、賑やかで、でもちょっとホロッと来る名作です。
これを『ナビィの恋』の監督が映画化したんだから面白くないはずはない。
で、やっぱり面白い。
視点を末娘の美恵子に置いたのがいい。しかも真っ直ぐなクソガキというか、そういう、お上品とは正反対のキャラとして設定しなおしたのがさらにいい。
フェンス越しの父子の出会いと別れにはホロッと来るし、お盆の光景も何か懐かしくて胸が締め付けられて、隙がない。
『ホテル・ビーナス』とかいう糞映画の対極にある必見の名作。
(中江裕司監督 2002年 日本)
2004.05.06 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
『トリコロール/赤の愛』
『トリコロール/赤の愛』(DVD 04年4月25日鑑賞)
モデルをしている女子大生が偶然に元判事に出会う。この元判事は隣家の電話を盗聴していて、それを女子大生は激しく咎める。数日後、元判事は誰かに密告されて有罪になり、けれどここから女子大生との心の交流が始まる。世慣れた元判事と心に傷のあるウブな女子大生の、何ともいえない、まだるっこしくて濃厚な、友情でもなく愛でもない、何というのか、まさにフランス国旗「赤」の象徴する「友愛」としか言いようのない世界。
三部作のオチとなるラストシーンの奇跡、これは心に凍みる。
(クシシュトフ・キェシロフスキ監督 1994年 フランス・ポーランド・スイス Trzy kolory:Czerwony)
2004.04.30 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『トリコロール/白の愛』
『トリコロール/白の愛』(DVD 04年4月26日鑑賞)
「離婚する。だって性的に満たしてくれないから」
フランス人の妻に三行半を叩きつけられ離婚裁判でさらし者にされた夫がポーランドに帰り(この方法も笑える)、うまく立ち回って会社を立ち上げる。立ち上げた後で、別れた妻の愛情を試そうと、ある秘策を練る。
筋と言えばそれだけなんだけど、ちょっと情けない主人公が次第に成長していく様がユーモラスで微笑ましく、サブ・キャラも極めて個性的でホッとする。
フランス国旗の「白」は「平等」。
「フランス」と「ポーランド」は平等なのか? 「外国人」と「本国人」は? 「夫」と「妻」はどうなのか? そして「男」と「女」は?
『トリコロール』三部作の第二作。三作中、最も軽妙。
(クシシュトフ・キェシロフスキ監督 1994年 フランス・ポーランド Trzy kolory:Bialy)
2004.04.28 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『トリコロール/青の愛』
『トリコロール/青の愛』(DVD 04年4月24日鑑賞)
自損事故で夫と娘が逝く。夫は高名な音楽家で、欧州統合を祝した協奏曲を作曲しつつあった。ところが残された妻はその楽譜を処分してしまう。
「本当は、彼じゃなく、あなたが作曲していたんじゃないの?」
との疑惑を消すかのように。
ただ、楽譜のコピーは残っていた。夫の友人がそれを元に協奏曲を仕上げるという。
これが物語の主旋律。
ここに、隣人となった売春婦との心の通い合いや夫の愛人との出会いのエピソードがからみつつ、一人残された妻の悲しみと、悲しみという束縛からの解放が、静かに、静かに、青を基調にした映像で描かれる。フランス国旗の「青」は「自由」。悲しみからの「自由」、なのか。
セリフが極端にけずられていて、その分、役者にはものすごい演技力が要求され、そしてもちろん、全ての役者が驚くべき名演でそれに答えている。
個人的には傑作中の傑作。ただし好みは別れるだろう。
『トリコロール』三部作の第一作。
(クシシュトフ・キェシロフスキ監督 1993年 フランス・ポーランド Trzy kolory:Niebieski)
2004.04.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『サラマンダー』
『サラマンダー』(DVD 04年4月18日鑑賞)
地底からよみがえった火の龍(サラマンダー)が地上の生命を食い尽くして人間も滅びる寸前。ここロンドン郊外の古城に立てこもる連中も食糧を巡る内紛で自滅寸前。
そこへ「アメリカ」からサラマンダー退治の軍隊がやってくる。で、古城のリーダーに、
「人手が足らん、男をよこせ」
で、色々あって、英米はサラマンダー退治のために共闘する。
まるでイラク戦争。火を噴く龍は石油利権か。
傲慢なアメリカ、でもそのアメリカに追従せざるを得ないイギリスの現実も風刺されていたりして、あるセリフ、
「ヒーローのいる国は幸せだ!」
「ヒーローの必要な国は哀れだ」
さて、どっちがアメリカでイギリスでしょう。
(ロブ・ボウマン監督 2002年 アメリカ REIGN OF FIRE)
2004.04.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『炎の戦線 エル・アラメイン』
『炎の戦線 エル・アラメイン』(DVD 04年4月22日鑑賞)
第二次大戦末期、アフリカ戦線でのドイツ・イタリア連合軍とイギリス軍の激戦地となるエル・アラメイン。
ここに、青い、と言うか、なんというか、如何にも世間知らずな志願兵がやってくる。クニにいて卑怯者と言われたくないんだ、と。ところがイタリア軍の現実は、水はないし、みんな赤痢にかかってるし、設備は貧弱だし、空軍の援護がないから空からは爆弾落とされ放題だし、いきなり目の前で一人、爆撃を受けて耳だけ残して砂になってしまうし。食糧かと思って期待したトラックにはムッソリーニの夢物語の世界で占領したアレキサンドリアで行軍するときに必要になるであろう、靴磨きが山ほど積んでるし。もちろん、食糧は缶詰ひとつないし。脚を切られた負傷者は靴を返せって叫いてるし……なんだかもう、負け戦はイヤだねってつくづく思う。
英雄もいない。物語もない。爽快な戦闘もない。戦争の糞リアリズム。
佳作だけに、画面から臭いが出なくて本当によかった。
(エンツォ・モンテオレーネ 2002年 イタリア EL Alamein la linea del fuoco)
2004.04.23 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『閉ざされた森』
『閉ざされた森』(DVD 04年4月21日鑑賞)
パナマに駐留する米軍のレンジャー部隊が訓練中に事故を起こす。事故というか、何というか、とにかく仲間同士で撃ちあって鬼軍曹や仲間たちを殺してしまい、生き残ったのは二人。無傷な方は黙秘。で、こいつの口を割るため、基地の責任者は、尋問を、元レンジャーで現麻薬捜査官の友人に依頼する。この友人が凄腕で、証言から次第に事件の輪郭を描いていく。かに見えて、証言が出れば出るほど、まるで『羅生門』のように事件の輪郭が歪んでいく。そして最後は軍の絡んだ麻薬の密輸組織にまで到り、そこで終わりかと思ったらトンデモなくて、う~ん、意図はわかるが、もう少しわかりやすい編集の仕方はあったんじゃないか。
超大作ミステリーに仕上げようとして、力不足で前のめりに倒れました、って感じかな。
(ジョン・マクティアナン監督 2003年 アメリカ BASIC)
2004.04.22 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ティアーズ・オブ・ザ・サン』
『ティアーズ・オブ・ザ・サン』(DVD 04年4月20日鑑賞)
紛争中のナイジェリアからアメリカ人医師(美人!)を助け出す――。
特殊部隊にとっては簡単なミッションのはずが、この医師が、難民を見捨てては行けない、などとゴネるものだから話はややこしくなる。一人を連れて行くのと怪我人70人じゃ歩く速度も違うし、なにせどうやって国外に運ぶんだ。ヘリコプターにはそんなに乗れんぞ。でもしょうがない。難民を連れて、遅れ、遅れながら、約束の場所にたどり着く。
で、当然のごとく、ヘリコプターに乗る寸前、難民を見捨てる。助けるフリをしたのは医師をヘリコプターに乗せるための方便でした、許してね。って許せるはずはない。結局、良心の呵責に耐えきれず、特殊部隊は難民を助けに戻って、戻ったは良いが、こんどは自分たちがヘリコプターに乗れなくなり、陸路、難民をゾロゾロ連れて国境を目指すはめに。しかも、なぜか一行を残虐な反乱軍が追ってきて、そのワケはまあちょっとトンデモかもしれない。
戦争映画にしては押さえた演出が好感度高い。
同じ監督の『トレーニング・デイ』も面白かったし。
でも「アメリカの正義」は鼻につく。
(アントワン・フークア監督 2003年 アメリカ TEARS OF THE SUN)
2004.04.21 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ISOLA 多重人格少女』
『ISOLA 多重人格少女』(DVD 04年4月17日鑑賞)
阪神大震災を背景に描かれる、危険な人格を抱え込んだ少女と自分さがしボランティアの女性との奇怪な心の交流。
幽体離脱がどうしたこうしたとか、コ理屈が多い。
震災という圧倒的な体験の前では、多重人格ごとき、恐ろしさの範疇に入らない。だから全然怖くない。ただ、背景となる被災の光景が懐かしかった。震災も遠くなったものだ。
(水谷俊之監督 2000年 日本)
2004.04.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『狗神 特別版』
『狗神 特別版』(DVD 04年4月16日鑑賞)
高知のとある村に「狗神筋」という家系があって、そこは何か運命的に近親婚を繰り返すらしい。で、その「狗神筋」のワケありの紙漉女と、村に着任したばかりの中学教師との、これも運命的な出会いと愛。そしてこの愛が村共同体に危機をもたらして、なんだかよくわからないラストになだれ込む。
共同体と他者と呪いとタブーと、まるで横溝正史を思わすような道具立てで、そこにワーグナー的な犠牲とかそんな要素が唐突に入りこみ、ハッキリ言ってちっとも怖くない奇妙な作品。
(原田眞人監督 2001年 日本 INUGAMI)
2004.04.19 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『殺人に関する短いフィルム』
『殺人に関する短いフィルム』(DVD 04年4月13日鑑賞)
なんだかとても好感の持てそうにない嫌な青年が、これもまた好感度低い運転手のタクシーに乗る。それも他の客を押しのけて。そして車が人気のない場所に到るや、青年は用意していた紐で運転手の首を絞める。でも、そう簡単には死なない。
これが前半の「殺人」。当然、犯罪である。
後半の「殺人」もまた克明に描かれる。死刑という名の合法的な「殺人」。
淡々とした流れの中で起こるべくして起こる二つの「殺人」。これは誰にも止めることの出来なかった、あるいは止めることの出来ないことなのか。自問自答し苦悩する若い弁護士の心の揺れがていねいに細やかに、それもセリフに頼らずに描かれていて感動的。
名作。
(クシシュトフ・キェシロフスキ監督 1987年 ポーランド KROTKI FILM O ZABIJANIU/A SHORT FILM ABOUT KILLING)
2004.04.14 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『スパイキッズ3-Dゲームオーバー』
『スパイキッズ3-Dゲームオーバー』(DVD 04年4月12日鑑賞)
ゲームの中に消えた姉を救うため、スパイ業から引退していたはずの弟が復業、再び悪の組織との戦いを始めるのだった……もちろん姉も弟もガキ、戦場はヴァーチャルなゲームの中。ロボットのバトルあり、無茶苦茶なレースがあり、クリアする毎にレベルは段階的に上がって、それでアガリにあたるオチではお祖父さんと悪の黒幕の和解にちょっと心が温かくなる。
それにしても3Dメガネがしんどい。
やっぱり第一作のレトロなスパイグッズが懐かしい。
(ロバート・ロドリゲス監督 2003年 アメリカSPY KIDS 3-D: GAME OVER)
2004.04.13 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『キリクと魔女』
『キリクと魔女』(DVD 04年4月7日鑑賞)
魔女の呪いのかけられた村を小さな赤ん坊「キリク」が救う。
胎内で喋って自分で出てくる異常出生、泉をよみがえらせるために洞窟に入って溺れる通過儀礼、旅と賢者との出会い、成長と嫁取り、故郷への帰還、などなど、物語の要素がほとんど入っていて、それでも作品として破綻していない不思議な一作。
魔女自身が呪いをかけられた存在であるというオチが悲しい。
日本語吹き替え版のほうが遥かに出来がいい。
(ミッシェル・オスロ監督 1998年 フランス KIRIKOU ET LA SORCIERE)
2004.04.09 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『アメリカン・ガン』
『アメリカン・ガン』(DVD 04年4月7日鑑賞)
帰省していた一人娘が銃で撃たれて死ぬ。その銃がどのような遍歴を経て娘の命を奪ったのか、父親は銃の遍歴をたどる旅に出る。妻には家出した孫を捜す、とだけ言って。
なぜ銃の遍歴と孫の行方が重なるのか。それは、それこそ衝撃のラストで明らかになる。あまりの悲しさに、息が詰まる。
アメリカの銃社会を描いた作品では『ボウリング・フォー・コロンバイン』がアカデミー賞を取って有名になったけど、あんな駄作とは名前を並べるのも失礼に思える傑作中の傑作。
少しずつ事件の概要がわかっていくミステリー仕立てなので、残念ながら詳しい筋は書けない。とにかく必見。
(アラン・ジェイコブス監督 2002年 アメリカ AMERICAN GUN)
2004.04.08 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『マッチスティック・メン』
『マッチスティック・メン』(DVD 04年4月6日鑑賞)
異常なほどの潔癖性で明らかに心を病んでいる詐欺師。自分のことを詐欺芸術家とうそぶきながら、深いところで良心の呵責に苛まれているのか、心も家の窓も閉ざしている。そこに、離婚の時に妻のお腹にいたんだという、14歳の娘が転がり込んでくる。
「パパは何してるの?」
古物商、とのウソはすぐにばれ、詐欺を手伝ってみたいという。ところがやらせてみれば初めてとは思えないほどの度胸と腕前で、血は争えないのか、と心が少し痛みつつ、でも、娘との生活で心の病は吹っ飛んでいる。
ある大きなヤマ。これで仕方なく使った娘が危険な目に遭ってしまい、詐欺からはもう足を洗うと決意する。こうして、犯罪者が親子愛に目覚めてほのぼのと更生していくようなお話になだれ込んでいくのかと思いきや、とんでもない。あきれかえるほど見事などんでん返しが待ってます。
『ホワイト・オランダー』で母娘関係に苦しむ娘役だったアリソン・ローマンがここでも陰のある14歳の小娘を演じて素晴らしい。佳作。
(リドリー・スコット監督 2003年 アメリカ MATCHSTICK MEN)
2004.04.07 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『CHICAGO シカゴ』
『CHICAGO シカゴ』(04年4月3日鑑賞)
1920年代、シカゴ。夫の目を盗んで不倫中の売れないシンガーが男のウソに激昂してそいつを射殺、収監、このままでは絞首刑になるかも知れない、と、辣腕弁護士に依頼する。弁護士はこの女を悲劇の主人公に仕立て上げ、世論を味方に無罪を勝ち取る戦略に出る。経歴もウソ、殺人に到る経緯もウソ、ウソで固めた裁判が豪華絢爛ミュージカルに乗って流れ、それで陪審員の裁決は……。おいおい、そんなんありかよ。
ミュージカルの映画版。音楽と芝居のバランスがとても良くて、見ていても不自然さを感じさせない。傑作に近い佳作。
(ロブ・マーシャル監督 2002年 アメリカ CHICAGO)
2004.04.06 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ホワイト・オランダー』
『ホワイト・オランダー』(DVD 04年4月2日鑑賞)
奔放な男関係を持つアーティストの母親がそのもつれから男性を殺害、第一級殺人で36年以上終身禁固の実刑を受け、娘は里親に引き取られる。ところが里親にも問題があって、まず最初の里親は異様に嫉妬深くて自分の男との関係を疑っていきなり銃撃してくるわ、二人目は自殺するわ、三人目はイカレポンチロシア人のゴミあさり。でもいちばん問題なのは本物の母親で、刑務所の中からも娘をコントロールしたがってる。なにせ、刑務所に面会に来た二人目の養母に向かって「いいペットが出来たでしょ。あなた子供がいないから」などと言い放ち、ダンナの浮気を疑うこの女性の不安を煽るようなことを言って結局自殺に追いこんでしまう。娘を盗られたくないんですね。
この母親の呪縛から逃れようともがき苦しみつつ、世界に向かって少しづつ心を開いていく娘・アストリッドを新人アリソン・ローマンが熱演していて、ラストは爽やか。傑作心理劇の一種。
(ピーター・コズミンスキー監督 2002年 アメリカ WHITE OLEANDER)
2004.04.05 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ホテルビーナス』
『ホテルビーナス』(劇場 04年4月1日鑑賞)
しかしひどい映画もあったもんだ。なんで全編韓国語なのかサッパリわからない。だって、ネイティブじゃない役者にカタカナ韓国語を喋らせてるものだから、まずアドリブがありえず、また、セリフに気を取られるから演技がものすごく硬くなる。もちろん韓国語はひどくて聞いてられない。まるで隠し芸大会の素人ドラマ。その上にこれでもかと繰り返される草なぎ君の怒アップ。もともと顔で演技出来る人じゃないでしょうに。まったく、観てられない。
ストーリーもひどい。おまけに思わせぶりで説経臭いバカ台詞。長い長い地獄の2時間。
辛うじて音楽は聴いてられる。
ビデオだったら10分で観るのをやめただろう、駄作中の駄作。
(タカハタ秀太監督 2004年 日本)
2004.04.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『S.W.A.T.』
『S.W.A.T.』(DVD 04年3月29日鑑賞)
警官の中から選抜された特殊部隊「S.W.A.T.」。前半はこのチームの選抜と訓練、後半は得体の知れない国際手配の犯罪者の護送をめぐるアクション。
で、中身。凶悪な国際手配の悪人が偶然に軽犯罪で逮捕され、その護送中、奪回を狙った仲間が襲撃してくる。犠牲を払いつつ無事確保したものの、こいつがテレビカメラに向かって「オレを自由にしたら1億ドルやるぞ」とか言ったものだから、街中の犯罪者共は色めき立ち、ワラワラと護送車に寄ってきて大騒ぎ。ところが冷静に事態を眺めているヤツもいて、こいつが実は前半で馘になった元「S.W.A.T.」、しかもここに1億ドルに目がくらんだ裏切り者が合流してきて、以後は「S.W.A.T.」同士の訓練された心身が演じる泥仕合。
テレビシリーズの映画化。これも多分シリーズ化されるだろう佳作。
(クラーク・ジョンソン監督 2003年 アメリカ S.W.A.T.)
2004.04.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『おばあちゃんの家』
『おばあちゃんの家』(DVD 04年3月28日鑑賞)
夏休みの間だけ「おばあちゃんの家」にあずけられることになったソウルッ子・サンウ。口のきけないおばあちゃんに向かって、あれがない、これがない、とワガママ放題、言いたい放題、いたずら放題。なんだけど、ちょっとサンウに同情してしまうのは、ハンパじゃない「おばあちゃんの家」の辺鄙さと貧しさ。ゲームボーイ(かな?)のリチウム電池はもちろん村の雑貨屋にはなくて、おまけに「ケンタッキー・フライドチキン」を要求したはずが、おばあちゃんは干しワラビと交換してきた鶏を茹で鳥にしてしまう。もちろんサンウは食べない。泣く、叫く。おばあちゃんはただ謝るだけ。口もきけないのに。
けれど、一方通行だったおばあちゃんの愛情がビシッとサンウに通じる瞬間があって、ここではもう、2000ウォン(200円弱)の愛に涙をこらえるのに必死でした。素人の演技が素晴らしい傑作中の傑作。子供にはこういう映画を観せましょう。
(イ・ジョンヒャン監督 2002年 韓国)
2004.03.31 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック
DVD評『宮本武蔵』
『宮本武蔵』(DVD 04年3月25日鑑賞)
『宮本武蔵 般若坂の決斗』(DVD 03年3月25日鑑賞)
『宮本武蔵 二刀流開眼』(DVD 03年3月25日鑑賞)
『宮本武蔵 一乗寺の決斗』(DVD 03年3月26日鑑賞)
『宮本武蔵 巌流島の決斗』(DVD 03年3月27日鑑賞)
昔の日本人は(と言ってもたかだか40年まえだけど)気が長かったんだね。一年に一作、5年で完結なんて、今じゃとても考えられない。
関ヶ原で敗残の宮本村の武蔵(たけぞう)が郷里の村人との悶着の末、3年の幽閉・独学を経て宮本武蔵となって旅立つ、これが第一部。京都で吉岡一門と悶着を起こした武蔵が奈良の宝蔵院で仕合い、そのあと般若坂で悪辣な浪人たちを虐殺し後悔する、これが第二部。柳生の里で柳生の四高弟と悶着して二刀流を開眼、するも石舟斎と会うことは出来ず京に帰り、吉岡の当主と仕合い、勝つ、これが第三部。吉岡一門は武蔵を倒そうと画策するも一乗寺下り松で全滅、吉岡の暫定的な当主13歳を討った武蔵は子供を殺したと非難され、それでも「我、事において後悔せず」と開き直る、これが第四部。そして最終の第五部では因縁の佐々木小次郎を巌流島で打ち倒す。
剣豪ものの陰惨さは、この主筋に絡むお通との淡いロマンスと、無体な理由で武蔵をつけ回す婆さんとのユーモラスなエピソードでほどよく中和されている。また、光と闇を強調した画面も美しく、ロケーションもキャストも最高で、多分、こんなスケールの時代劇は今後二度と作れまい。
長いのは苦にならないが、セリフの古さは慣れるまでは耳にさわる。
(内田吐夢監督 1961年、1962年、1963年、1964年、1965年 日本)
2004.03.30 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『博士の異常な愛情』
『博士の異常な愛情』(DVD 04年3月13日鑑賞)
反共でコリ固まった変質的な将軍が妄想に取り憑かれてソ連への先制攻撃の命令を出せば、最初は半信半疑だった爆撃機の乗組員たちも基地への問い合わせで命令を確認、ソ連領内の目標へと核爆弾を落とすべくサクサクと手続きを進めてしまう。
ペンタゴンは大騒ぎ。ソ連大使を呼んで全面核戦争の回避へと動くのだけれど、ホットラインの相手は泥酔しているらしく、なんだかうまくいかない。一方、トチ狂った将軍の立てこもる基地は陸軍に包囲されて陥落、攻撃命令を唯一中止できる将軍は自殺、とまあ、事態は悪化の一途をたどり、そこに「Dr. Strangelove」(ドクター奇妙な愛情)なる男が登場して、災いを一気に福へと転じたのだった。
物語の構成はしっかりしていて、古い設定の割にしっかりと観せる。
(スタンリー・キューブリック監督 1964年 アメリカ・イギリス Dr. Strangelove: Or How I Learned To Stop Worrying And Love The Bomb)
2004.03.29 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ニキータ』
『ニキータ』(DVD 04年2月29日鑑賞)
警官殺しで無期懲役を受けた少女・ニキータ(オバサンにしか見えないが)の素質を見込んで工作員に仕立て上げ、暗殺とか、パシリとか、そういうヤバイ系の仕事をさせる。ところがニキータも女、買い物したり、教官だった男と新しい男との間で揺れ動いたり。そして新しい男はニキータの正体に気づき、静かな破局が訪れる。
前半、麻薬中毒のラリリ女ニキータは正直言って見苦しいほどだし、それが一皮も二皮もむけて(絶世という程じゃないが、それなりの)美女に変貌してからは殺人が似合わないほどに愛らしい。大げさな演出が多少臭く感じられる、美少女アクションの古典。どっかで観たシーン満載なのは、それだけ真似されてるってことでしょう。
(リュック・ベッソン監督 1990年 フランス NIKITA)
2004.03.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『EXエックス』
『EXエックス』(DVD 04年3月22日鑑賞)
危険なスタント撮影ばっかりやってるCM制作会社が日本のゲーム会社(だと思う)へのプレゼンで雪崩と競争する女性スキーヤーのシーンを提案、しかもCGじゃなく本物の雪崩を使う、と。それで撮影クルーはオーストリアへ。ところが現地には旧ユーゴの残虐な戦犯が隠れてて、この撮影クルーをCIAの偽装だと勘違いして襲ってくる(この辺、実にバカげてる)。
マトリックス的な映像の対極にある肉体派的なアクションが爽快、かつ、プライドを砕かれた滑降金メダリスト女性の心の回復が暖かく細やかに描かれてて、秀作。主人公のいない集団劇だということを理解しつつ、ストーリー的な多少のバカバカしさを覚悟出来れば充分楽しめるでしょう。90分という短さにも好感が持てる。
(クリスチャン・デュゲイ監督 2002年 アメリカ EXTREME OPS)
2004.03.25 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『シティ・オブ・ゴッド』
『シティ・オブ・ゴッド』(DVD 04年3月19日鑑賞)
リオデジャネイロの郊外にある公営住宅、と言っても、家を無くした貧民を寄せ集めたロクでもない場所、でも名前だけは素晴らしい「シティ・オブ・ゴッド」。この街で人を殺すことを屁とも思わないガキがドラッグビジネスでのし上がっていく。もちろん商売敵は皆殺し。そしてライバルもいる。ライバルとの仲を取り持って抗争を起こさないように気を使う良いヤツもいる。こいつらの間にいて、ちょっと優柔不断なカメラマン志望の少年の視線で物語は進むんだけど、つーか、これ、60年代から70年代にかけての実話なんだって。呆れてモノも言えぬ。
小学校に上がるか上がらぬかのガキが銃を持って徒党を組んで殺し合い、ドラッグを売り、金を巻き上げ、また殺し合い、シマの掟を守らなかったと言っては、また殺す。と言って話は陰惨じゃない。ラテン系の音楽に乗っての、ノリノリの成長物語で後味は奇妙に爽やか。子役たちの演技がものすごい。
(フェルナンド・メイレレス監督 2002年 ブラジル CIDADE DE DEUS)
2004.03.24 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『呪怨2』
『呪怨2』(DVD 04年3月18日鑑賞)
呪われた家の取材に関わったレポーターやエキストラやその他が次々と死んでいく。それはまあいいとして(よくもないか?)、前作に続く白い子供と白い女、怖い。流産したはずの胎児がなぜか順調に育っていて……というラストも悪趣味の極みで、怖い。
時間の流れが登場人物ごとにシャフルされていて、ラストに近づくほど事件の概要がわかってきて、怖さも一気に加速する。前作と同じく、言葉での説明もなく、つじつま合わせもなく、とにかく怖さだけを追求したらこうなった、って感じでしょう。観る人を選ぶ一本、選ばれて震え上がりたい方、前作同様、お薦めです。
(清水崇監督 2003年 日本)
2004.03.22 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『28日後...』
『28日後...』(DVD 04年3月17日鑑賞)
感染すると凶暴になるウイルス、というか、ゾンビ化するウイルスが猛烈に広がって滅亡したロンドンで、ひとり、交通事故で昏睡に陥っていた男が目を覚ます。街には誰もいない。で、生存者と出会う。状況を理解する。ゾンビ化した人間たちが襲ってくる。こうして、まあ、ゾンビ物の型どおりに話は進むのかと思って観ていると、これが大違い。物語は生存者たちが軍に保護されたあたりから人間(つーか、男)の暗部を暴き出しつつ、次第に深いテーマへとつき進む。怖い。
「女は未来だから」って、だから共有財産にするのかよっ!
このあたり、あまりにも心理的にリアルで、また狂気の中の真っ赤なドレスがまた悪趣味と言っても良いくらいなリアルさで、良いです。ラストが異様に爽やかな秀作。
(ダニー・ボイル監督 2002年 アメリカ・イギリス・オランダ 28 DAYS LATER...)
2004.03.19 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『座頭市』
『座頭市』(DVD 04年3月16日鑑賞)
10年前に畜生働きの盗賊だった連中と、そいつらを仇とつけねらう姉弟、なんだかワケありの浪人、そこに座頭市が絡んで殺し合い。とにかく話の流れに必然性が無く、エピソードの一つ一つが繋がらない。ギャグも寒くて笑えない。たけし軍団の演技もひどい。ただ、端役には名演が多く、また画面は綺麗だから、例えて言えばものすごく精密な絵の描かれたジグソーパズルのパーツを適当にはめ込んでつくった絵のようなもの。超一流のスタッフに三流の監督をつけたらこんな映画が出来上がるんじゃないか。時間の無駄とまでは言わないが、映画館で観なくて良かった、とは思う。
以下余談。
実は拙著の中で唯一のベストセラーが「たけし」を論じたもの。何人かで分担執筆した本なんだけど、その中での拙論のタイトルは、
「ビートたけしを安らかに成仏させるために」
で、この本を出した直後、例の事故が起きてたけしは危篤状態、まるで予言していたみたいだってことでマスコミからのコメント依頼がガンガン来て、でも全部断った。なんか、死にかけた人を利用して名を売るような感じが嫌だったんです。でも、いま思う。断らなきゃ良かった。いや、絶対に断っては駄目だったんだ。これでマスコミ嫌いって噂がたって仕事も何も来なくなったんだから。
典型的な「若さゆえの過ち(byシャア)」ですね。
(北野武監督 2003年 日本)
2004.03.18 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『デブラ・ウィンガーを探して』
『デブラ・ウィンガーを探して』(DVD 04年3月14日鑑賞)
子供を産んで40になり仕事も減り始めたというロザンナ・アークエットが自ら監督して(メガホンを持ったかどうかは知らない。今回はインタビュアーも兼ねている)、会いたいハリウッド女優34人に会い、聞きたいことを聞く。聞くのは表現と育児の両立とか、そういう、月並みなこと。だから返ってくるのも、まあ、どこかで聞いたような、教科書的な答えで、しかも繰り返しがやたら多い。
なのに、なんで、こんなに観せるんだろう。
どっかのフェミニストの安っぽい愚痴とそう変わらない言葉たちが、たとえばシャロン・ストーンの口からでるとキラキラと輝き出して、まさに女優の魔力を堪能出来る一本。
グループインタビューでは酒が入るにつれ、話題は段々きわどくなり、女優の条件としてついにfuckablityなる学術的造語まで飛び出してしまう。このように、かなりきわどい話題に近づきながら基本的にはとても真面目で上品な秀作に仕上げていて、学校での教材に使ってもいいんじゃないか。ちゃんと使用料払って。
(ロザンナ・アークエット監督 2002年 アメリカ Searching for DEBRA WINGER)
2004.03.16 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『アイデンティティ』
『アイデンティティ』(DVD 04年3月14日鑑賞)
洪水でモーテルに閉じこめられた11人。が、次々に死んでいく。殺されもする。でも、そういうことを超えてデキゴト自体がなんだか不自然。死体の側にはかならずモーテルの鍵があって、しかもその番号順に死んでいくとか。そして極めつけ、ある事件を境に死体自体が消えてしまう。こうして話は強制移住で死んだネイティブ・アメリカンの呪い、と次第にリアリズムからズレ始めるんだけど、ここで伏線として引いてあった死刑囚の話が絡み、とんでもないどんでん返しが人間の心の闇を描いて秀作。
もし多重人格のうちの一人だけが凶暴な犯罪者で、他の人格は温厚な正義漢というような死刑囚がいたとしたら。死刑囚個人を殺すんじゃなく、凶暴な犯罪者の人格だけを消去すればいいんじゃないか。と考える人権派弁護士がいても不思議じゃない。とまあ、これ以上はネタバレになるのでよしますが。お薦め。
(ジェームズ・マンゴールド監督 2003年 アメリカ Identity)
2004.03.15 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『鮫肌男と桃尻女』
『鮫肌男と桃尻女』(DVD 04年3月8日鑑賞)
組の金を奪ってヤクザから逃げてる鮫肌男に、あきらかにキショい叔父から逃げる桃尻女が偶然に合流、よくわからない逃避行が始まる。追いかけるヤクザも皆トチ狂っていて、ここに桃尻女の叔父が放った狂った刺客のような男が絡み、結局、問題は皆殺しでしか解決しない泥沼へ。つーか、金はどこに行ったんだよ、金は。
役者は良い。浅野忠信、寺島進、岸辺一徳の名演です。怪作の一種。
(石井克人監督 1999年 日本)
2004.03.12 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『砂の器』
『砂の器』(VHS 04年3月7日鑑賞)
殺人事件。被害者の身元不明。手がかりは東北弁と「カメダ」の一言だけ。ところが刑事二人の執念は断片断片の証拠をつなぎ合わせ、悲しい差別の歴史を暴き出す。ズーズー弁の分布、大阪大空襲、戸籍などの細かなアイテムを駆使した謎解きは今観てもスリリングで飽きさせないし、謎解きが終わってからの歴史の再構成シーンは、今ではとても撮れないような差別の悲しさと激しさに満ちていて、やはり名作。
今回、音楽が意外にチャチなのに気づいて、学生の頃にオールナイトで観て猛烈に感動したのに、いや、歳は取りたくはないもんだ。
(野村芳太郎監督 1974年 日本)
2004.03.11 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『龍城恋歌』
『龍城恋歌』(04年3月6日鑑賞)
婚礼の当日に一家を皆殺しにされた花嫁がその事件の首謀者を捜し当て、こんどは殺し屋に敵討ちを依頼する。対価は、
「私自身」
で、この二人は仇である「熊将軍」の根城「龍城」に夫婦を装い潜入して機会を待つのだが、敵もさるもの、刺客が放たれたらしいことに気づき先手を打ってくる。「熊将軍」はこの二人を夕食に招待したりとか、まあ色々あって、結局暗殺は失敗、復讐の空しさ、つーか、映画の内容の空しさ以外何も残らない。
ものすごく安直なメロドラマはわざとの演出かと思って最後の最後まで少しは期待しながら観たのに、安直で愚劣なラストにはマジで「怒」。
制作総指揮という立場に立ってもチャン・イーモウ監督、もはや終わってると言わざるを得ない。
(ヤン・フォンリャン監督 1996年 中国)
2004.03.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ドリームキャッチャー』
『ドリームキャッチャー』(04年3月4日鑑賞)
人の心が読めたりする超能力者みたいな男性四人組。この力は、小さい頃、知恵遅れながら不思議な力を持つ少年に授けられたものなのだった。で、四人がこの力を使って何かほのぼのとした善行でも積むのかと思いきや、話は一気に血まみれ寄生虫系スプラッタへと滑り落ち、しかもこれが実は数十年前から続くエイリアンの侵略の一環だってことになって、巨大な円盤を攻撃するヘリ部隊が出てくるわ、エイリアン虐殺があるわ、どんどんB級SF度は高まっていき、オイオイそりゃないだろうって、ウルトラマンかウルトラセブン並の「ヘンシン」ってご都合主義の権化のような結末。緻密に構成されている分、謎解きのちゃちさが失笑を買う。記憶の倉庫って、あんた、ホントに倉庫を作って記憶を台車に乗せてゴロゴロしてどうする。
決して名作とは呼べないし、かといって駄作でもない。おまけに中途半端なわけでもない。これもまた移民国家ならではの不法移民恐怖症が見事に現れた、奇妙な心理的リアリティを持った迷作でしょう。
(ローレンス・カスダン監督 2003年 アメリカ Dreamcatcher)
2004.03.09 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ジキル博士とハイド氏』
『ジキル博士とハイド氏』(04年3月3日鑑賞)
人間の二面性ってテーマの古典。なんだけど、現代人はもう物理的合理性の虜になってしまってるから、薬で肉体までもが変わるって設定にはついていけない。だからこの映画、薬による心の変化の問題として矛盾なく仕上げようとしたんだね。そこは上手く行ってるのに、というか、上手く行った分、逆に恐怖は薄れてしまった。これじゃただの、ジキル博士とヤク中ジキル氏。ちょっと怖いけど。
(モーリス・フィリップス監督 2002年 アメリカ Dr. Jekyll & Mr. Hyde)
2004.03.08 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『アバウト・シュミット』
『アバウト・シュミット』(04年3月3日鑑賞)
定年で会社を去ったとたん、妻は突然死、遠くにいる一人娘は自分の結婚を控えて父親の気持ちを思いやる余裕もない。で、妻にせがまれて買っていたキャンピングカーで旅に出る。
このシュミットさん、人との付き合いが苦手なんでしょう、旅先での良い出会いも悲惨な別れで終わったり。そんなこんなで、結婚式の二日前、娘の相手の実家にたどり着き、ところがその結婚相手たるや、なにやら怪しいネズミ講のようなものにハマっていて、その弟はオタクのようなボーッとしたヤツで、母親は如何にも子供を駄目にしそうなバカ母で、しかもシュミットさんに全裸で言い寄ってくる。この結婚は間違いだ、とシュミットさんが娘に言っても、娘は娘で一歩も引かない。結局、自分の人生とはなんだったんだ、byシュミットさん。
コメディタッチだけれど、人生への深い諦念に支えられた佳作。フォスターチャイルドへの手紙がナレーションとなって良い味を出している。
(アレクサンダー・ペイン監督 2002年 アメリカ ABOUT SCHMIDT)
2004.03.05 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『グランド・ゼロ 感染源』
『グランド・ゼロ 感染源』(DVD 04年2月29日鑑賞)
アメリカ大統領が狙撃された。首筋に刺さった針。もしや悪性の病気に感染していたら大変だ。病院に隔離。したところで犯人からの電話。大統領はエボラ出血熱に感染している、と。そして大金が要求され、さて、どうしましょ。
縦横に活躍する女性ウイルス学者も、なんだか変な悪役も、そして大統領も、役者がしょぼくてB級テイスト満点。設定は面白かったのに、やっぱ、あの悪役がいけないね。動機も演技もしょぼすぎて。きちんと作り直したら面白いものになると思うんだけど。
(ジョン・マーロウスキー監督 2001年 アメリカ CONTAGION)
2004.03.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『交渉人』
『交渉人』(DVD 04年2月27日鑑賞)
人質事件で犯人との交渉に当たる「交渉人」。人質と、そして犯人自身の生命を守るため、命をかけてコトバを駆使するプロフェッショナルである。そのプロたちの中にあってトップの成績を誇るシカゴ市警のダニーは今日もまた一つ、難しい事件を解決した。のに、その喜びに浸る間もなく、数日後には警察内部の公金横領疑惑に絡む同僚殺しの濡れ衣を着せられてしまう。同僚たちの白い目、おまけに弁護士までもが「有罪は免れない、罪を認めて司法取引に応じろ」という。こりゃたまらんと、陰謀の黒幕と思しき男やその他数人を人質に市庁舎に立てこもる。
で、ダニーは交渉人を指定する。指定されたのは他の管轄の交渉人、クリス。クリスにも事態はよくわからない。わからないし、ダニーに同情もしない。ただ、人質と犯人自身の生命は守ると約束する。のに、ダニーの同僚たちはいきなり突入、これは少しおかしいんじゃないかとクリスも気づき始め、その気づき始めたクリスを外そうという画策もうごめいて、銃弾とコトバの飛び交うドンパチは泥沼にはまっていくのだった。
最後まで黒幕のわからない手に汗握る展開は細部の甘さを補って余りある。と言いたいが、細部はやっぱり甘い。あんな証拠で冤罪が成功するならたまったもんじゃないぞ。もっとマスコミを上手く使う方法もあったんじゃないかとも思うし。
(F・ゲイリー・グレイ監督 1998年 アメリカ The Negotiator)
2004.03.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ドーベルマン』
『ドーベルマン』(DVD 04年2月27日鑑賞)
生まれた時から犯罪者って設定はいったいどうなんでしょう。って疑問も、ヴァンサン・カッセル演じる「ヤン」の気色の悪さの前では吹っ飛んでしまう。実際、こういうやつなんですコイツは、とこの映像で言われれば、ハイそうですか、と答える他はないもんな。さらにまた、一味のまるでゲームのような銀行強盗の後、担当になった刑事の残虐さも常軌を逸して気色が悪く、赤ん坊を人質にして「ヤン」の居所を聞くシーンなど、正直言って正視に耐えぬ。
ハリウッド的爽快さとは対極にある怪作。
(ヤン・クーネン監督 1997年 フランス Le Dobermann)
2004.03.01 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『柳生一族の陰謀』
『柳生一族の陰謀』(DVD 04年2月14日鑑賞)
史実にさえ「仁義なき戦い」を挑んだ問題作とでも言うんでしょうか。
まず、(史実では名君であるはずの)徳川三代将軍家光は顔にアザのある敵役で、(残された史料によればイカレポンチだったはずの)その弟・忠長は分別ありそうな名君の卵。二代将軍秀忠は本当は忠長に将軍職を嗣がせたかったのだが、その意志を快く思わない家光派はこれを毒殺、この陰謀に「柳生一族」も絡んでいく。
二代将軍の墓所に忍び込んでの「胃袋」の奪い合い、って、のっけから「オイオイ」だし、白塗りの公家でありながら剣の達人って男も登場して「柳生一族」と対決するは、はては流浪の忍者集団も出てきて大暴れ、なんて、まるでマンガのような荒唐無稽の伝奇絵巻。しかもこれが演技だけはリアリズムなものだから、本来ならば爆砕モノに堕すところ、が、それでも時代劇としての筋は崩れておらず、そこにはやはり萬屋錦之助の「時代」がかった演技的反リアリズムが効いてるからと言わざるをえない。
当時は新しかったんだろう、と思わせてしまう古さはしかたないか。
(深作欽二監督 1978年 日本)
2004.02.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ウェルカム トゥ コリンウッド』
『ウェルカム トゥ コリンウッド』(DVD 04年2月22日鑑賞)
刑務所とも留置場ともつかぬ場所で実にオイシイ(と言うか奇怪な)もうけ話を聞かされた自動車ドロがそのオハナシを決行するため合法的な出獄を試みて失敗、けれどオハナシだけはイカレポンチな男や女を巻き込んで、ハッキリ言って泥沼としか思えない計画に向けて一人歩きしてしまう。
小さな出来事が次の事件の伏線になり、その事件がまた次の大事件の伏線になり、っていう物語の練り上げが実に上手くいっていて、コミカルな雰囲気も知的で最後まで一気に観せる。
ただ、こんな苦労するくらいなら真面目に働けよ、と思ったのは私が日本人だからでしょうか。
(アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督 2002年 アメリカ WELCOME TO COLLINWOOD)
2004.02.24 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『スピーシーズ2』
『スピーシーズ2』(DVD 04年2月15日鑑賞)
火星の調査に行った宇宙飛行士が「DNA」とやらに感染してエイリアンになってしまい、子孫を残そうと売春婦を買いまくり、それで子供は母親の腹を破ってザクザク生まれ、あっと言う間にスクスク育ち、これを退治するため、前作で大暴れしたエイリアンの細胞から作ったクローンを利用しようとするんだけど、こいつがまた本物のエイリアンのオスに発情、とまあ、大人のムードにも程がある、血と内臓溢れるムチャクチャな一作。前作はそれなりに面白かったのに。
(ピーター・メダック監督 1998年 アメリカ Species II )
2004.02.23 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『黒い家』
『黒い家』(DVD 04年2月14日鑑賞)
生命保険は自殺でも下りるんでしょ。早く下ろして下さい。と、自殺した息子の保険金を求めて連日会社にやってくる男、明らかに変。なのに警察は息子の死因を自殺だと認定、これを本社も認めて保険金は下りることに。けれど担当者は納得がいかない。個人的に探りを入れる。するとおかしなことが次々に明らかになってくる。
幼少期の虐待によるトラウマだとか、人格障害だとか、いろいろと放りこんではいるものの、この監督らしい消化不足が目立ちすぎる。ゾンビと化した大竹しのぶはちょっと怖かったし、話も面白くないことはないんだけど。
(森田芳光監督 1999年 日本)
2004.02.18 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『自殺サークル』
『自殺サークル』(DVD 04年2月12日鑑賞)
54人の女子高生が駅のホームでお手てつないで「いっせぇのせぇ」で投身自殺。
血ッ! 血ッ! 列車の窓に浴びせられる肉片の混じった重たい血ッ!
ここの迫力はすごいとゆーか、ここさえ撮れればあとはどうでも良いとゆーか。このあとはどこまで行っても謎が解けない。ワケわからないままに終わる。
いや、ワケわからなくてもいいんだけどさ、もう少し怖がらせて欲しい。人間のナマ皮ロールとか、使いようによってはかなり恐ろしげなアイテムなのに、それが滑稽にしか感じられないんじゃどうしようもない。
(園子温監督 2002年 日本)
2004.02.17 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
映画評『犬夜叉 鏡の中の夢幻城』
『犬夜叉 鏡の中の夢幻城』(テレビ放映録画 04年2月8日鑑賞)
冒頭で宿敵・奈落がいきなり倒されてどうなることかと思いきや、そこはそこ、新しい敵・神久夜が現れて、犬夜叉一行は絶体絶命、でもみんなのがんばりで何とか切り抜けました。とまあ、お話はこんなもの。
『犬夜叉』そのものに含まれる『竹取物語』の小道具を使ってテレビ版とは違う世界を作り上げていて、最後までそれなりに観せる。
(篠原俊哉監督 2002年 日本)
2004.02.16 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ザ・コア』
『ザ・コア』(DVD 04年2月11日鑑賞)
方位磁針が役に立つのは地球が巨大な磁石だから。で、この磁石がおかしくなったらどうなるか。これまで磁石の電磁波で遮られていた宇宙からの放射線が地表に降り注ぎ、大変なことになってしまうでしょう。
まずペースメーカーを使ってる人が突然死します。次には鳩がヒッチコックばりに人を襲ったりします。でもこれだけで済むわけがありません。生命そのものが滅びるかも知れません。大変です。地球の核(コア)の運動を正常に戻して、電磁波を回復しなければなりません。こうなったら国防総省(ペンタゴン)の出番です。
でも活躍するのはハグレ者。イカレた学者、野心家の学者、スネた発明家、ラットってHNのハッカー、あるいはスペースシャトルを壊した女性乗組員とか。ハッカー以外のこいつらがレーザーのドリルをつけた掘削車に乗りこんで地球の核(コア)にまで向かい、核爆発を起こして核(コア)の活動を再開させるという恐ろしい計画。こんなこと、こっそりやられたら心底怖いです。
ストーリーはこの上ないほど荒唐無稽。でも、「この世の終わり」を食い止める「個人の犠牲」という、キリスト教的なバックボーンがきちんとしてて、それなりに見せる一本になってます。「核」(ニュークリア)に対する無造作な扱いはちょっと気にはなりましたが。
(ジョン・アミエル監督 2003年 アメリカ The Core)
2004.02.15 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『CUBE2 特別版』
『CUBE2 特別版』(DVD 04年2月11日鑑賞)
前作と同じく立方体(CUBE)の中での人間関係。
なぜそこに集められたのかわからない男女8人が狭いドアでつながる立方体の部屋を行ったり来たり、謎解きの糸があるのやらないのやら。軍需産業が絡んだりして何か謎解きがあるのかと思って観ても、結局最後までよくわからない。いや、わからないってのは前作も同じだから許容するけど、もう少し、何かこう、欲しいんですね。
前作が佳作だっただけに、ちょっとがっかり。
(アンドレイ・セクラ監督 2002年 アメリカCUBE2)
2004.02.14 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『レセ・パセ 自由への通行許可証』
『レセ・パセ 自由への通行許可証』(DVD 04年2月9日鑑賞)
長い……。
ドイツ占領下のフランスで、ドイツのために映画を作らざるを得なかった脚本家と助監督。助監督は共産党の非合法活動に役立つ通行許可証(レセ・パセ)のため、脚本家は困窮する仲間のため、それぞれドイツの会社で働くことになる。戦後、このことが対独協力として問題になることも知らぬまま。
街を空爆してくるのはイギリス人、高射砲で迎え撃つのはドイツ人、収容所に運ばれるのはユダヤ人、フランス人はぶつくさ言いながら映画を作りワインを飲んでチーズを食って女優や娼婦の間を渡り歩いてる。なんだかなぁ。
全体に漂うユーモアは楽しいし、音楽とかそういうところで凝りに凝ってるのは認めるけど、とにかく170分は長い。二時間過ぎた頃からだんだんと怒りがわいてきて、評価が10分ごとに10点ずつ下がってしまった。一時間半にまとめてたら非の打ち所のない傑作だと言ったかも知れないのに。
(ベルトラン・タヴェルニエ監督 2002年 フランス Laissez-passer)
2004.02.12 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『HERO 英雄』
『HERO 英雄』(DVD 04年2月8日鑑賞)
秦の始皇帝が暗殺されかかったのは事実らしく、その刺客、荊軻(けいか)の辞世「風瀟々として易水寒し 壮士ひとたび去ってまた還らず」は『史記』にも載って、長い間日本人にも馴染みだった。で、この荊軻をモデルにした映画『始皇帝暗殺』(陳凱歌監督)はそれなりに面白かったんで、この映画にもけっこう期待したんだけどな。
ハッキリ言って、張藝謀(チャン・イーモウ)監督も墜ちるところまで堕ちた。と思った前作よりも更に堕ちた。映像とかアクションとかだけで映画がデキあがるんならシナリオはいらん、役者もいらん。
暗殺を巡る『羅生門』仕立ての謎解きも、結局最後まで陳腐ン姦婦ン、金返せどころか時間を返せと叫びたくなるし、なにより、平和のための戦争という共産党の屁理屈を始皇帝に語らせているのが心底ムカつく。
(張藝謀監督 2002年 中国)
2004.02.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『リベリオン 反逆者』
『リベリオン 反逆者』(DVD 04年2月6日鑑賞)
第三次(大惨事)世界大戦後、あまりの惨事に懲りた人類は、戦争を引き起こすのは人間の「感情」だとして、「平和」のために「感情」を削除することを決めた。以後、人々は皆「プロジウム」という怪しげな薬を日々注射することで「感情」を亡くし、「平和」に平穏に生きているのだった。
だがこんな世界にも「反逆者」はいる。「プロジウム」を打たず「感情」を持ったまま、こっそりとモナリザを鑑賞したり、イエイツ詩集を読んだり。で、こんな「反逆者」を捕まえて火刑に処すのが「クラリック(聖職者って意味ね)」と呼ばれる薄気味悪い部隊、こいつらは皆、GUN=KATA(ガン型)とかいう素手でも銃に立ち向かえる特殊な武術を身につけていて、素人にはまるで太刀打ち出来ない。
あとはお決まり。反逆者に同調する凄腕の「クラリック」が管理社会に風穴を開けました、自由万歳ってね。
オーウェルの世界観にブラッドベリの雰囲気をまぶしたような不気味な画面と押さえに押さえた演技、これが要所要所に配された壮絶なアクションを見事に引き立てていて秀逸、また日本の時代劇に学んだとおぼしき「ガン型」も必見、管理社会SFアクションモノでは『マトリックス』(もちろん第一作のみ。もしかしたら二作、三作はこれのパクリか?)と並ぶ、通好みの傑作です。
(カート・ウィマー監督 2002年 アメリカ EQUILIBRIUM)
2004.02.09 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『サハラに舞う羽根』
『サハラに舞う羽根』(DVD 04年2月4日鑑賞)
イギリスが超大国だった19世紀、エリート士官ハリーは植民地スーダンに叛乱鎮圧へと送られる直前に除隊してしまう。軍を去ったハリーのもとには友人たちの送った羽根が届く。羽根は、軍隊では「臆病者」を意味していた。
ハリーも軍を追いかけるようにスーダンへ行く。なぜだかはよくわからない。男の意地とかそんなの。
ところがスーダンの状況はムチャクチャ悪い。イスラムの反乱軍は狡猾でメチャクチャ強く、戦友たちの部隊も殲滅寸前、で、色々あってそこにいたハリーは、羽根を送りつけた戦友たちを命からがら救い出していく。って、ありえないでしょ、フツー……。
戦争の空しさとかイギリス人の傲慢さとかはよく描けてると思うんだけど、結局最後までこのハリーという男の考えてることがわからない。感動したくて出来ない、宙ぶらりんの奇妙なもどかしさが残ってしまう。この監督の『エリザベス』にも同じように感じたのを思い出した。
(シェカール・カブール監督 2002年 アメリカ・イギリス The four Feathers)
2004.02.06 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
『バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』
『バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』(DVD 04年2月4日鑑賞)
中学生のひとクラスを殺し合わせるというお馬鹿ゲームの生き残りが、そんなゲームを考えついた大人たちに復讐するってテロリストになり、東京(らしき都市)に(まるで9/11のような)テロを仕掛けて宣戦布告。で、このテロリストのアジトに突入して首をとってくるか、死ぬか、これが今度のゲーム。
上陸シーンは『プライベート○イ○ン』、自衛隊の突入シーンは『新世紀エ○ァン○リオン』、その他、パクリらしきシーンを挙げていったらきりがない。いや、もちろんパクリ自体はオマージュだからいいとして、問題なのは、それなりに迫力のあるシーンなのになぜパクリに見えてしまうのかってこと。結局、シーンを繋ぐ糸が、極めて幼稚な(つっても、リーダー10代だもんな。それなりにリアルってことか?)反米テロリスト礼賛の極左思想一本しかないからでしょう。
第一次反抗期的左翼を風刺したお馬鹿映画としてみるならそれなりの完成度、でももしこれがマジなら、かなり寒い。
(深作欽二・健太監督 2003年 日本)
2004.02.05 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『スピーシーズ 種の起源』
『スピーシーズ 種の起源』(DVD 04年2月2日鑑賞)
宇宙に向けて手紙みたいなものを送りだしたら、返事にDNAの配列記号か何かが送られてきて、それを合成したら凶暴な生物に化けてしまって退治するのが大変でした、ってお話し。アメリカって、常に、無節操な移民によって社会が乱されるかも知れないって恐怖を抱いているんでしょうね、侵入者の恐怖って設定、結構あります。
で、この映画はっていうと、まず合成された生物が美女ってのが秀逸。ものすごい成長速度で成熟し、繁殖を求めて、つまり男を求めて夜の街をウロチョロする。男はすぐに引っかかる。でも拒絶。だってアナタ、ビョーキ持ちじゃない、キライ。もうおせーよ、ってすごむ男。じゃあイイわって、応じるふりして惨殺。いや~~女はこわいっす。
一夜限りと思ってる男にいきなり「子供が欲しいの」。退く男。で、惨……。
このメスを追い掛ける寄せ集め部隊もイカレポンチだらけで面白いんだけど、今ひとつ全部のキャラクターが生きてない。この手のホラーの中では良くできた方で、大人の映画に仕上がっているとは思うんだけど。
(ロジャー・ドナルドソン監督 1995年 アメリカ Species)
2004.02.04 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『もうひとりいる』
『もうひとりいる』(DVD 04年2月1日鑑賞)
アイドル候補の女の子3人のロケ。で、そのロケ会場の廃校に次々と現れる「もうひとり」の自分。都市伝説的な言い伝えによれば、「もうひとり」の自分を見た者は必ず死ぬんだと。で、そこにいた者は一人づつ惨殺されていく。なんで? そこに絡んでる幼児虐待とか呪いとか。
「ドッペルゲンガー」と「合わせ鏡の悪魔」の、二つの「怪談」を組み合わせた安直ホラー。仕掛けは面白いけど小さくまとまりすぎてあんまり怖くない。
(柴田一成監督 2002年 日本)
2004.02.03 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『夜と霧』
『夜と霧』(DVD 04年1月29日鑑賞)
「アウシュビッツ」を淡々と描く。支配する者、される者。死にかけた人、死んだ人。細切れにされ石鹸となり紙となり有効に利用される人(体)、ブルドーザーで無造作にかき集められただ埋葬される人(体)。その描き方はあまりにも淡々としていて、しかも30分程と短い。のに、一生忘れることのできない映像(事実)の羅列はあまりにも重い。
10数年前アウシュビッツ(オシュベンチム)を訪れた時のイヤァな気分を思い出してしばらくイヤァな気分になってしまった。
(アラン・レネ監督 1955年 フランス Nuit et Brouillard)
2004.02.02 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『12モンキーズ』
『12モンキーズ』(DVD 04年1月28日鑑賞)
未来から人間を救いにやってきた男。と言っても、現代の人間を救ってくれるわけじゃない。とあるウイルスの蔓延で人類は一度滅びかけるんだけど、そのウイルスについての情報を探しにやってきたってわけ。これはあくまでも未来の生き残った人類のための使命であって、現代の人類なんかどうでもいい。だって、どうせほとんどみんな死ぬんだし。とも言ってられなくて、男の行動は次第に使命から逸脱、ブチ込まれた精神病院の女医との逃避行の果てに、二人は未来を変えることが出来るのか、どうか。
精神病院で出会う学者のバカ息子をブラッド・ピットが超超超熱演で、私的には主演のブルース・ウィリスを食ってます。この監督の作品では『未来世紀ブラジル』が傑作ですが、本作も悪くない。傑作と言っても良い。ただ、好みは別れるでしょう。
参考(なんだか哀れですが……)
http://www.sankei.co.jp/mov/yodogawa/0604yodogawa.html
(テリー・ギリアム監督 1995年 アメリカ 12 MONKEYS)
2004.01.29 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『世界で一番醜い女』
『世界で一番醜い女』(DVD 04年1月27日鑑賞)
思い込みの激しい「醜い女」が過激な手段で世間に復讐するという、アリガチというか、単純というか。ただ、シリアスなのかおバカなのかを中ぶらりんにしたまま最後の最後まで引っ張っていく力は認める。この監督、ただ者じゃない。
設定は近未来。連続猟奇殺人。そこに盲目の尼僧や遺伝子操作で美人を作る科学者や、果てはカツラで義眼で入れ歯の警部とか、奇怪なキャラが次々と絡み、悪趣味一歩手前の追跡劇はミスコン会場での強烈な悪趣味の炸裂で終幕。エピローグもこれが一体ハッピーエンドなのかどうなのか。
お薦めはしないが見る価値はある。
(ミゲル・バルデム監督 1999年 スペイン La Mujer Mas Fea Del Mundo)
似たような小説を書いたことがあります。↓
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/1731/kingyo.html
2004.01.28 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『赤い橋の下のぬるい水』
『赤い橋の下のぬるい水』(VHS 04年1月25日鑑賞)
死んだ知人の想い出の地へやって来た失業中の男、探していた目印の「赤い橋」も、宝を隠したという家もすぐに見つかり、おまけにそこに住む不思議な女ともデキてしまう。その女は性欲が昂進すると何処か(それは最後まで不明、「オシッコ」ではないと女は弁解するのだが……)から水があふれ出、もし適切に(つーか、相手の男をも濡れ鼠にして)処理しなければ、悪心が高じて万引きを繰り返してしまう。で、女に同情した男は、そこに漁師として住み着く決心をする。
筋は単純、でもそれぞれのキャラがそれぞれにイカレていて、現実感とかそういうのをあえて無視する姿勢が清々しい。と思う人と、バカバカしくて観てられるかよ、と引く人と、観る人の人生観が問われてくる一本。音楽が幼稚でさえなければまだもう少しマシだったのではないか、惜しい、と感じたのは私だけでしょうか。
(今村昌平監督 2001年 日本)
2004.01.27 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『長崎ぶらぶら節』
『長崎ぶらぶら節』(DVD 04年1月25日鑑賞)
長崎の色町の女・愛八は身上潰したお大尽・古賀と長崎の地唄を集めてて、探していた一曲、『長崎ぶらぶら節』に行き当たり、その夜、二人は添い寝(つっても男と女の関係にはならない。純愛なんです)、翌朝、古賀は歌の歌詞を残して消えている。その後愛八の歌う『長崎ぶらぶら節』は西條八十の耳にとまってレコードデビュー、B面に入れた古賀作詞の曲も売れて古賀にも印税が入り、ヨリが戻るかと思いきや、ちょっとよくわからない結末。
吉永小百合演じる愛八があまりにも陰が無くて優しすぎるんです。だから、妹分の結核とかの悲惨さがワサビほどにも効いてこない。なんだかフワフワとした印象しか残らない。でも映像は息を呑むような見事なシーンの連続で、最後まで一気に観せてくれる。
(深町幸男監督 2000年 日本)
2004.01.26 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『東部戦線1944 The Star』
『東部戦線1944 The Star』(DVD 04年1月21日鑑賞)
ドイツ軍の集結情報を探るため敵地に潜入する7人の個性的な若者たち。兵を捕まえたり(こいつは殺す。一兵卒だから)、将校を捕まえたり(こいつは生かしておく。幹部だから人質になる)して情報を得るうち、ドイツ軍には恐るべき特殊スパイ精鋭集団としてマークされてしまう。で、こいつらも慢心。自分たちは何でも出来る、ナチスなんてチョロいモンだ、と言えてるうちが華ってもの。無線機を亡くして孤立する中、だんだんと包囲網は狭まり、一人、また一人と仲間は戦場に散っていく。
リアルなのは好きだけど、リアリズムはちょっとね。だって怖いんだもの。無線でつながった淡いロマンスだけがまだ救い。ハリウッド的な英雄モノとは全く違う、社会主義リアリズムから「社会主義」を抜いたらこんなんが出来ましたって感じかな。でも、最後のナレーションにある「ポーランド解放」なんて文句に、まだ「社会主義」の尻尾が残ってる、と言うべきでしょうか。
「必見」マーク寸前の佳作です。ただし邦題は最悪。何のコトやらわからん。私がつけるなら、
『戦場の星』
(ニコライ・リェビェデフ監督 2002年 ロシア)
2004.01.22 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ソラリス』
『ソラリス』(DVD 04年1月20日鑑賞)
傑作中の傑作SF映画(と言わなければ映画好きでは無いような雰囲気が作られてる)『惑星ソラリス』のハリウッド版リメイク。にしては割と原作の雰囲気を残してると言ったら良いのか、それとも中途半端な失敗作と言った方がいいのか。とにかくタルコフスキー版『惑星ソラリス』を離れては評価出来ません。
と言っても、私も、20年くらい前に観た『惑星ソラリス』はよくわからず、それでも何かものすごい映画を観たってコトだけはわかって、それ以後の数年間、タルコフスキーの作品を徹底的に観まくったものでした。
で、物語ですが、惑星ソラリスに探査に行った宇宙船が帰ってこなくて、それで迎えに行った精神科医の個室に死んだはずの妻が現れるわけです。これは一体なんだ、人間か? って話になって、実は乗組員それぞれの側にも同じように身近な人々が現れていて、その存在を巡って何だかんだと、ハリウッドにはあるまじきテツガク的な議論が交わされる。
結局、『惑星ソラリス』を知らない人間が観たら何のこっちゃと思うだろうし、『惑星ソラリス』を知ってる人間が観たらその薄っぺらに失望するでしょう。これ自体としての完成度はそう低くないだけに、惜しいというか何というか、評価の難しい一作になってます。もう一度『惑星ソラリス』を観直したくなりました。
(スティーブン・ソダーバーグ監督 2002年 アメリカ Solaris)
2004.01.21 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック
DVD評『ムーン・チャイルド MOON CHILD』
『ムーン・チャイルド MOON CHILD』(DVD 04年1月11日鑑賞)
経済破綻した日本から出てった難民の子供たち、なんでしょうね。中華文化圏(らしい)架空の街のスラムでシマを巡って暴力組織とやりあってる。そのうちの一人は不死の吸血鬼(らしく)、日光にあたると燃えてしまう(らしい)。そこに現地の男も加わり、その妹も巻き込んだ青春グラフティ。も長続きしなくて組織暴力の魔の手は仲間に伸びて、そっからはひたすら寂しい悲しい懐かしいムードになって白けてくる。
GacktとHYDEの怪しげな兼ね合いが見物らしいんだが、この二人に全く思い入れのない自分としては山本太郎演じるピザ屋が死んでしまってからはひたすら退屈。
(瀬々敬久監督 2002年 日本・台湾)
2004.01.20 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ピーピー兄弟』
『ピーピー兄弟』(DVD 04年1月14日鑑賞)
師匠とトラブったらしく干されてストリップ劇場で働く漫才コンビの兄弟。でも裸を見に来た客に漫才がウケるはずもない。で、ヤケでやってみた「オ(ピー)コ」ネタが大受け、これが偵察に来てたテレビディレクターの目にとまり、出来レースのオーディションを経てテレビ出演。ところがオンエアではほとんど「ピー」。ディレクターは漫才そのものより、「ピー」で隠すことによるインパクトを狙っていたのだった。この目論見は大当たり、二人はいきなり時の人になってしまう。
ここからはお決まりの、有名になったが故に起こる兄弟間の軋轢とかそういうの。脚の悪い幼なじみの恋人も絡んできて、コンビは解散、兄は実家の葬儀屋を継ぐ。のだけれど、漫才への想いは断ちがたく、ここからのオチが実に爽やかで好きです。
男兄弟の難しさや、職業への誇り、そしてセックスと愛の深淵を奇妙に陰のある明るいタッチで描いていて、ぜんじろう(じつはこれまであまり好きではなかった)の名演も楽しい実に秀逸な一作。二回観ました。本作の前では『ごめん』や『大阪物語』がカスに見えます。メイキングも必見。
(藤田芳康監督 2002年 日本)
2004.01.19 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『ターミネーター3』
『ターミネーター3』(DVD 04年1月13日鑑賞)
これを劇場で観た知人が、
「なんでジョンがあんなキタナくなるのぉ~」
と嘆いてた。その時は観てないから何とも返事のしようがなかったが、今はハッキリ言おう。
「それが時代ってモンなんです」
だってさ、核戦争が起きてればジョンって戦後の反乱軍の大将になれたわけでしょう? ところが未来から変な連中がやってきて核戦争を阻止してしまうモンだから、ジョンってば、可哀想に、成り上がる機会を奪われたまま、あとはしがないチンピラとして余生を生きる他はない。戦国の武将も太平の世じゃケチな官僚にしかなれないってわけ。
で、このヤサぐれたジョンの前にまたシュワちゃんが現れる。前回と同じく、突然。しかも前回と同じく父親替わりの役回りで。敵は女型の無敵のサイボーグ。しかも未来の妻もいて、シュワちゃんの本当の目的は最後の最後まで伏せられてる。
全2作で張り巡らしていた伏線を上手く利用したシナリオは評価出来るし、アクションも迫力があって、3作目にしては良くできていると言えるでしょう。ただ、時代が変わった。全2作の時代を覆っていた冷戦による核戦争の恐怖は現実味を失ってしまい、映画の世界観の根幹にあった未来への不安も現実世界からは消えている。だから辻褄を綺麗に合わせたラストが空しく感じられ、ストーリーが面白かった分だけ、時代を感じさせられたってコトかもね。
(ジョナサン・モストウ監督 2003年 アメリカ TERMINATOR 3: RISE OF THE MACHINES)
2004.01.16 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『あずみ』
『あずみ』(04年1月12日鑑賞)
斬って切って伐りまくる。とにかく血しぶきと血まみれと血の池と。徳川の世に再び戦乱をもたらしそうなヤツを追いつめて、あずみらガキの刺客たちが、斬る、切る、伐る。ところが敵もさるもので、替え玉をつかませ奇怪な剣客を使って今度は逆襲、あずみの仲間は殺され、親分も罠にはまって捕まってしまう。で、あずみは単身、敵の手中に飛び込んでいくわけですが、ここからはひたすら斬る、斬る、斬る、斬る(以下百回ほど繰り返し)。
この監督らしいと言えばそうなんだが、原作ファンとしては、もうすこし内面的な恐怖の描写が欲しかった。続編では、あの時代の女に生まれなくて良かったぁ~と心底思わせて欲しいものです。キャストは豪華です。
(北村龍平監督 2003年 日本)
2004.01.15 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『めぐりあう時間たち』
『めぐりあう時間たち』(04年1月12日鑑賞)
時代を超えた女性三人の一日がヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』を巡って交錯する。冒頭のウルフの入水シーンからしてただならぬ雰囲気が漂い、1951年のロサンゼルスの母子関係は極めて息苦しく、極めつけは現代のニューヨークでの女性編集者とエイズ患者らしい詩人のやりとり。
一瞬の種明かしがあるだけで、あとは何のカタルシスもない。何の救いもない。『リトル・ダンサー』の監督らしい、諦めの美学、なんだろうか。
(スティーブン・ダルドリー監督 2002年 アメリカ The Hours)
2004.01.14 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック
DVD評『エニグマ』
『エニグマ』(DVD 04年1月11日鑑賞)
ロンドン郊外にある連合軍の暗号解読センターで働く女性・クレアが消え、そしてほぼ同時期にドイツ軍の暗号が変えられた。クレアと短期間だが関係のあった暗号解読者で数学者のジェリコはクレアの身辺を探り、ドイツ軍のスパイではないかとの疑いを持つ。だがクレアを信じるジェリコは危険を冒して暗号の森に分け入り、そして連合軍の団結を脅かしかねない、ある重大な秘密を知るに到る。
前半は男のクラ~イ思い込みがダラダラと続いて食傷しかねないんだけど、後半に入るとソ連のポーランド将校虐殺事件(いわゆる「カチンの森」事件)なども絡んできて物語はグッと奥行きを増す。その分、ストーリーが掴みにくくなるのはしかたないか。
「エニグマ」とはドイツ軍が誇る暗号制作・解読器。映画の本筋にはあんまり関係ない。男にとって女こそ最大の「エニグマ(謎)」だと言いたいのかもしれない。
(マイケル・アプテッド監督 2002年 イギリス・アメリカ・ドイツ・オランダ Enigma)
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DVD評『ハンテッド』
『ハンテッド』(DVD 04年1月7日鑑賞)
コソボでの英雄が戦場でのストレスから森に籠もって殺人鬼になってしまう。それを追うのがこいつの元教官。追って追われて、殴って殴られて。筋はいたってシンプル。なのにこの重厚な空気はなんなんだ。やっぱり、鋼材で作った手製のナイフや打製石器で殺し合う、肉弾の重さってやつでしょうか。このハイテク時代に何をやってるんだって感じ、でも、接近戦になったら結局はこういう勝負になるんだろうな。
ベニシオ・デル・トロが『トラフィック』以来の存在感です。
(ウィリアム・フリードキン監督 2003年 アメリカ The Hunted)
2004.01.12 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
ビデオ評『呪怨』
『呪怨』(VHS 03年11月21日鑑賞)
ボランティアのヘルパーさんが老人宅を訪ねていく。荒れた家内。ネコと子供が押入に閉じこめられている。で、時間はさかのぼり、辻褄とか統一性とか、そういう合理性を無視したような薄気味悪い物語りが続く。物語の導きの糸は奇妙に白い子供の、吸い込むような黒い目。
それにしても、蛇女がカタカタ言いながらはいずってきたり、鏡に映った自分の顔が……て、あのなぁ~怖けりゃなんでもいいってもんか?
ホラー映画ってあんまり好きじゃないんだよね。だってちっとも怖くないんだもん。
でも本作は評価する。けっこう怖いから。
(清水崇監督 2002年 日本)
2004.01.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『KISSingジェシカ』
『KISSingジェシカ』(DVD 03年11月24日鑑賞)
恋人募集で出会う男たちはみんなつまらない。だからつい、女同士の恋人募集の公告に応じてしまう。で、ハマる。私ってレズだったんだ。でも何か違う。いやレズに違いない。だって女同士で感じたもの。でも本当にそう? と、頭で理解しないと動けないタイプなんですね、このジェシカさん。キスからセックス(?)までの、セクシャリティを巡る堂々巡りが結構ドキドキする。
原題の「Stein」が邦題では落ちるてるんでこれだけじゃ何の映画かわからない。「Stein」があってこそ、お堅いのユダヤ教徒の恋愛葛藤ドラマだってわかろうもの。出来はまあまあ。
(チャールズ・ハーマン=ワームフェルド監督 2002年 アメリカ Kissing Jessica Stein)
2004.01.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
ビデオ評『テハンノで買春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる』
『テハンノで買春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる』(VHS 03年11月24日鑑賞)
しっかし下らん映画を作るよな。題名そのままじゃん。低予算まる出しの安直な造りだし。こんなもん2時間も見てられっか。時間の無駄。
と30分見てやめたりせず、1時間だけ観て欲しい。1時間モノだから。
なぜ女子高生は「まだテハンノ(大学路)」にいるのか。
オチが下らなすぎて、でも結構よくできていて、これを書きながらも思い出し笑い。
この種のジャンルでの傑作には違いない。
眠れない婆さんと先生の家の表札にも注目。
(ナム・ギウン監督 2000年 韓国)
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DVD評『少女の髪どめ』
『少女の髪どめ』(DVD 03年11月25日鑑賞)
テヘランの工事現場にやってきたアフガン難民の女の子。力仕事は出来ないから、お茶くみに回される。ところがそれまでお茶くみをしていた男の子は、この子が自分の仕事を盗ったと逆恨みしてイジワルを繰り返す。堪える女の子。そしてある日、女の子の髪を盗み見た男の子は(イスラム社会ですから、髪を男に見せてはいけない)いきなり恋心に目覚めてしまい、でもアフガン難民にとってイラン社会は厳しくて、民族衣装に身を包んだ女の子の清楚さが忘れがたい印象を残していく。
イランって、情緒が日本人と似てるんでしょうか。工事現場の監督が妙に人間味があったり、のぞき見でストーリーが展開したり。
難民の靴磨きのセリフも良い。一人で孤独じゃないか、と聞かれて、
「孤独な男の隣にはいつも神がいる」
いいねぇ。そのうち使ってみたいセリフです。
( マジッド・マジディ監督 2001年 イラン)
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映画評『ラスト サムライ』
『ラスト サムライ』(劇場 03年12月24日鑑賞)
劇場に足を運んだのは久しぶり。つーか、ビデオも含めて映画らしい映画を観たのも一月ぶりかな。
で、なんというのか、誤解も美しければ許すのかって話になってしまうわけですよ。言ってみれば『ダンス・ウィズ・ウルブス』のサムライヴァージョンなんですから。西洋人が無くしてしまった色んな美点が野蛮人の中にはまだ生きてますって感じで、癒しのユートピアとしての綺麗な綺麗なサムライ郷ってのも、なんだかなぁ。
まず明治日本に近代的な軍隊を作るため一人のアメリカ人が雇われるわけなんだけど、この男・アールグレンがひどいアル中で、もうここから癒し系の香りが香ばしい。しかもこいつがアル中になった原因が、以前、カスター将軍の第七騎兵隊に属していたころのネイティブ・アメリカン(いわゆるインディアン)の虐殺の記憶だというんだから、あとの筋はもう見んでもわかろうってもの。
それで、このアル中が日本にやってきて官軍に軍事教練するんだけど、この官軍は促成の素人集団なものだから、霧の中からホラ貝の音と共に現れた反逆のサムライ集団に手もなく蹴散らされてしまう。こうしてアールグレンは捕虜となりサムライの村で過ごすことになって、あとはお決まりの心の交流だとかなんだとかでアル中も治り、最後の政府軍との野戦はもう、なんだかものすごい戦闘シーンに迫力のインフレを感じてしまうのは私だけでしょうか。
日本を美しく描いてくれるのはいいんだけど、説明不足の箇所がかなりあって物語の理解を妨げてるんで、アメリカでこれが受けるかどうかは微妙でしょうね。ただ、日本側の役者の存在感はものすごく、特に渡辺謙はトム・クルーズを食ってるし、アメリカ人の想像する日本美人の典型であろう小雪も良い味を出してるし、真田広之はセリフは少ないながら要所要所でギラリと刃物のように光ってます。日本の役者がハリウッドの演出でどのように動くのかを観るだけでも、劇場に行く価値はあるでしょう。サムライが戦国武者みたいだったり、突然ニンジャが出てきたり、と、考証はかなり変ですが、ハリウッド的演出での許容範囲ということにしておきましょう。(エドワード・ズウィック監督 2003年 アメリカ The Last Samurai)
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DVD評『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』
『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』(DVD 04年1月6日鑑賞)
ジョニー・デップ最高ッ! 『ショコラ』でみせたイカガワシくかつ知的な演技を、こんどは海賊で、下品寸前にまでトチ狂いつつ演じてる。まったく、この人以外にスパロウ船長はありえない。ストーリーも、この人のおかげで穴が目立たなくなったんじゃないか。
お話しはまあ、つまるところ宝探しの裏返し。呪われて身体の感覚を無くした悪玉海賊バルボッサたちが、呪いの元凶たる金貨を探して彷徨、もちろん海賊だから暴虐の限りをつくしつつね。しかも不死。だから無敵。で、最後の一枚を見つけたんだけど、呪いを解くためには、金貨だけじゃなく、ある「血」が必要なんだ。そしてその「血」の意味を理解しているのは善玉のスパロウ船長だけ。
最後はこの「血」を巡り、大英帝国に善玉海賊スパロウ船長、それに悪玉海賊バルボッサが加わって、月の光で骸骨になったり、灯火で人間に戻ったり、けたたましい変化を繰り返しつつ人間対妖怪の組んずほぐれつの大乱戦、これはものすごい迫力です。で、ちょっとほろ苦い悪役の最期、青いリンゴがコロコロと転げ、ラストにはとってつけたようなロマンスの成就が待っている。ディズニーらしい痛快作です。
(ゴア・ヴァービンスキー監督 2003年 アメリカ The Pirates of The Caribbean)
2004.01.10 in 映画・テレビ | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック
DVD評『黒水仙』
『黒水仙』(DVD 04年1月8日鑑賞)
朝鮮戦争以来50年間獄中非転向を貫いた男の一言はやっぱり重いんでしょう。ラストでのアン・ソンギ、決定的な名演。もちろんアンだけじゃなく、イ・ジョンジェもいい。『情事』とか『イルマーレ』だとか、静かな男がハマリかと思ってたら、今回はハミダシ刑事役でのアクションが決まってます。
でもいちばんグッと来るのは設定ですね。朝鮮戦争時代、労働党の手引きで捕虜収容所から脱出した捕虜たちの生き残り、男二人と女一人、その後の人生、そして殺人事件。殺人は、マァ、歴史とそれに翻弄される男女を描くための小道具なんで、種明かしは大したことないんだけど、とにかく、内乱の中で引き裂かれた男女の50年にわたる純愛がたまらなく切ない。しかも男の一人は智里山のパルチザンだった過去を隠して日本人になりすましていて、こいつを追って宮崎にやってきた刑事とのやりとりの、そのシーンがまたエキゾチックで美しいんだ。『鯨とり・コレサニャン』のラストを思わす、この監督らしい光景です。
夜半のソウル駅、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」をBGMに50年を挟んだ指輪の交換。泣け! とにかく泣くんだ!
(ペ・チャンホ監督 2001年 韓国)